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【レビュー】『スパイダーマン:ホームカミング』が瑞々しく描き出す「かわいそうなヒーロー」からの脱却

スパイダーマン:ホームカミング
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2017年8月11日、いよいよ封切りとなった実写版スパイダーマン最新作スパイダーマン:ホームカミング
ライセンスホルダーであるソニー・ピクチャーズと、原作を生み出し今やハリウッドを牽引するマーベルがガッチリ手を組む形で実現した人気者スパイダーマンの“二度目のリブート”作は、ここ日本においても、大ヒットを連発しているMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)に連なる一作ということもあってか注目度が非常に高かったようで、公開日初日の劇場はどこも大入り満員、オープニング週末興行収益的にもまず順調な滑り出しを見せています。

もうご覧になった読者も大勢いらっしゃるでしょうし、筆者も既に複数回鑑賞しましたが、そこで感じたことは本作『スパイダーマン:ホームカミング』は作劇上色んな意味で「新しい」映画であるということです。本稿ではその「新しい」点を掘り下げていきたいと思います。

【注意】

この記事には、映画『スパイダーマン:ホームカミング』のネタバレが含まれています。

スパイダーマン:ホームカミング
©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.

映画版『スパイダーマン』第1作としての「新しさ」

2017年現在、MCUはハリウッド・エンターテインメント界の中心にいると言って過言ではありません。2008年より彼らがこれまで(2017年8月時点)に世に送り出してきた映画は実に16本。その中でも、単独ヒーローのシリーズ第一作に数えられるのが、『アイアンマン』(2008)『インクレディブル・ハルク』(2008)『マイティ・ソー』(2011)『キャプテン・アメリカ/ザ・ファーストアベンジャー』(2011)『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)『アントマン』(2015)『ドクター・ストレンジ』(2016)の7本です。
これらの作品のいずれもが、主人公となるヒーローが、超常の力を得て(あるいは取り戻して)ヒーローとして立つまでの所謂“オリジンストーリー”を描いた作品であるのに対して、『スパイダーマン・ホームカミング』は主人公ピーター・パーカー(トム・ホランド)がスパイダーマンになってから時がしばらく経過した状態から物語がスタートします。

2016年の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』に登場した際の描き方を見れば、MCU上の時系列で後になる本作においてそのオリジンストーリーがある程度割愛されることは予想できましたが、ジョン・ワッツ監督は大胆にも、この「ピーターが力を得るに至るくだり」と「大事な人(ベン伯父さん)を亡くしてヒーローとして覚醒するくだり」を回想シーンとしても扱わないという決断をしました。
確かにスパイダーマンの前述したようなオリジンストーリーは、DCコミックスにおけるバットマンの「犯罪通りでの両親の死」「屋敷の地下空間での蝙蝠との邂逅」並に有名であり、サム・ライミ版トリロジー、『アメイジング・スパイダーマン』2作と2000年代に立て続けに製作された映画の影響で記憶にかなり新しく、そこから語り起こすと既視感のかなり強い作品になってしまうことは予見できます。しかし、スパイダーマンにとってオリジンストーリー、特に「ベン伯父さんの死」をまったく描かないということは、目新しい話になるというだけではなく、これまでスパイダーマンというコンテンツの共通テーマでもあった「大いなる力には、大いなる責任が伴う」というテーマも前面には出さないということになります。

スパイダーマン:ホームカミング
©Marvel Studios 2017. ©2017 CTMG. All Rights Reserved.
原作や、今までの映画のピーター・パーカーは、裏の顔を知らない周囲の人間との関係に悩み苦しみ、普通の人間としての幸せに心を揺らすたびにベンが遺した「大いなる力には~」という言葉を思い出し、その道を諦め続けるという、戦っているときの明るいキャラとは裏腹の悲壮感溢れるヒーローであったわけですが、MCU版スパイダーマンは、「ベン伯父さんのくだり」を描かないことに象徴されるように、これまでスパイダーマンにつきまとっていた「かわいそうなイメージ」を取り払い、新しいスパイダーマン像を我々に提示しています。

Writer

アクトンボーイ
アクトンボーイ

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたいと願う今日この頃。

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