『ハリー・ポッター』第1&2作監督のクリス・コロンバス、「毎日クビを覚悟していた」理由とは

21世紀最大のファンタジー作品として愛され続ける『ハリー・ポッター』シリーズ。映画シリーズにおいてその盤石の基礎を築いたのが、第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)と第2作『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002)の監督を務めたクリス・コロンバスだ。第1作への大抜擢を受けたコロンバス監督は、当時の世間の熱狂とは裏腹に多大なプレッシャーを抱えていたようで、なんと「毎日クビを覚悟していた」程なのだそう…。
第1作『賢者の石』は2001年に公開されるや、その客足は大盛況で、同年の世界興行収入第1位を獲得。その成功の裏でコロンバス監督は、米Colliderに「世界中からのプレッシャーが私たち、特に私にかけられていました」と、身に余るほどの当時の重荷を明かしている。「これを失敗させたら、全てを台無しにしてしまうということを分かっていましたから」。
それもそのはず、J・K・ローリングが1997年に発表した『ハリー・ポッターと賢者の石』は、子供向けのファンタジー小説として世界中で大ヒットを記録。発売の同年には、さっそく映像化の検討が進められていたほか、1999年には米ワーナー・ブラザースが100万ドル(約1億円)もの巨額を投じて映像化権を獲得したのだ。そんな記録的ベストセラーの小説を映画化するにあたって、コロンバス監督は「台無しには出来ない」と感じていたらしく、その重圧は撮影中の現場にも及んでいたようだ。
「第1作は不安で怯えていました。(撮影での)最初の2週間は、毎日クビにされるだろうなと覚悟していましたよ。全てが順調に進んでいるように見えましたけど、一つでもしくじったら、クビだと思ったんです。キツかったですね。」
こう語るコロンバス監督だが、ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフら、子役を含めたキャストたちがいざ現場に集まると、「全員に家族のように感じてもらいたかった」という理由で、「そういう(ネガティブ)側の感情は押し隠さなければいけなかった」のだとか。さらに、連日行われた撮影には「トンネル・ビジョン※みたいに、外界からの声を考えないようにして向かわなければならなかった」という。撮影を指揮する自身の立場と周りからの重圧の間で頭を抱えていたコロンバス監督の姿が目に浮かぶようだ。
※自分の考え方とは異なる他の可能性を考慮しようとしない姿勢を意味する比喩表現
第1作、そして続く第2作『秘密の部屋』以降に『ハリー・ポッター』シリーズが歩んだ軌跡は現在までに知られている通り。コロンバス監督は第3作『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(2004)でも製作として参加。計8作のシリーズ累計世界興収は77億4,000万ドルを記録している。2020年8月には、コロナ禍で再上映された『賢者の石』の興行成績が週末3日間で1,360万ドルを収めるなど、コロンバス監督は今でも本シリーズに大きな貢献をしている。これにより、同作の世界興収は10億120万ドルを突破した。それにしても、もしもコロンバス監督が“クビ”にされていたら、『賢者の石』はもちろんのこと、その後のシリーズはどのような道を辿っていたのだろうか…。
Source: Collider