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オーシャンズ11のような邦画オールキャスト!映画『怒り』レビュー 心の闇を鋭く突く究極の人間ドラマ

映画『怒り』評価・感想

2010年の「悪人」でタッグを組んだ吉田修一原作、李相日監督のコンビが6年ぶりに復活し、音楽に坂本龍一が加わった最強のトリオが誕生。「物語の登場人物には、映画『オーシャンズ11』のようなオールスターキャストを配してほしい」という吉田の要望に応え、主演の渡辺謙を筆頭に、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮﨑あおい、妻夫木聡という人気・実力共にトップクラスの俳優陣が集結し、上映時間2時間22分の、まさに究極の人間ドラマを描き出すのが最新作「怒り」だ。

ある夏の暑い日に八王子で夫婦殺人事件が起き、窓が閉め切られ、蒸し風呂状態の現場に“怒”の血文字が残される。その犯人が顔を整形し、全国に逃亡を続けるというのがまずはストーリーライン。物語は千葉、東京、沖縄の3つの県で展開する。千葉編では渡辺演じる父と宮﨑演じる娘、松山演じる漁港で働き始めた青年のエピソード、東京編では妻夫木演じるサラリーマンと、綾野演じる彼と恋人関係になる青年のエピソード、沖縄編では広瀬演じる高校生と同級生、森山演じる無人島にやってきたバックパッカーの男のエピソードが交錯しながら同時進行していく。

https://www.youtube.com/watch?v=iMG1qVZ2dcs

この映画、殺人事件の犯人が誰かというのがメインではない。千葉、東京、沖縄で暮らす人々が出会った人物がもしかしたら殺人事件の犯人かもしれないという不安から生まれる疑心暗鬼や葛藤などがじっくりと丹念に描かれていく。
3つのエピソードをそれぞれ独立させて描くのも可能だが、あえて交錯させることによって生まれる緊張感はハンパない。観客は次が一体どうなるのかという興味をかき立てられ、一気に最後まで見せてしまう李監督の手腕が素晴らしい。若き日の大竹しのぶを彷彿とさせるような渾身の演技を見せる千葉編の宮﨑、女優として著しい成長を見せる沖縄編の広瀬の終盤での咆哮など、それぞれの俳優たちの演技対決も見逃せない魅力のひとつ。

今年度の映画賞を賑わせること間違いないであろうこの力作をぜひ劇場でご堪能いただきたい。

Writer

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masashiobara小原 雅志

小学館のテレビ雑誌『テレパル』の映画担当を経て映画・海外ドラマライターに。小さなころから映画好き。素晴らしい映画との出会いを求めて、マスコミ試写に足しげく通い、海外ドラマ(アメリカ、韓国ほか)も主にCSやBS放送で数多くチェックしています。

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