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【インタビュー】『イン・ザ・ハイツ』アンソニー・ラモス、舞台・映画を超える作品の力 ─ 「この作品は特別、どんなショーや映画とも違う」

イン・ザ・ハイツ
© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

『ハミルトン』リン=マニュエル・ミランダによる傑作ブロードウェイ・ミュージカルの映画版イン・ザ・ハイツが、2021年7月30日(金)より全国公開となる。THE RIVERでは、主要キャストであるアンソニー・ラモス、コーリー・ホーキンズ、メリッサ・バレラのほか、ジョン・M・チュウ監督への取材を実施し、貴重なコメントの数々を入手した。

アリアナ・グランデやドウェイン・ジョンソン、ヒュー・ジャックマンらが絶賛し、映画賞での高評価も期待される一作はどのように作られたのか。今回は、舞台版『イン・ザ・ハイツ』に続いての登板となった主演俳優、アンソニー・ラモスのインタビューをお届けする。『トランスフォーマー』次回作への主演も決まっている、ハリウッドの最注目株のひとりだ。

舞台から映画へ、『イン・ザ・ハイツ』のパワー

──『イン・ザ・ハイツ』映画版への出演が決まった時、どう思いましたか?

とても感動しました。どうすればうまくいくのかが分からない時、あるものを見つけたような気分になることがあるんです。「あのドアを通れるかもしれない」みたいな感じ。そのドアはあまりにも遠いと感じられるけれど、進み続ければ、やがて道が見つかり、自分のためにドアが開く。ある意味、壊れないものを打ち破ったような気持ちになる。この役をもらった時、そんなふうに感じました。

この役(ウスナビ役)は、僕自身に希望を持たせ続けてくれた役でした。僕がミュージカルを続けた最大の理由のひとつだったんです。僕に合わないショーがたくさんあるのはわかるし、僕をキャスティングしてくれないショーがあることもわかる。「この役柄はこうあるべきだ」というものに、必ずしも僕が合わないこともあるから。だけど、僕にはいつか演じてみたい役があって、いつかウスナビを演じる機会もやってくるんじゃないかと思っていました。そして、この機会に恵まれた。これは自分にとって、本当に大きな意味のあることです。僕はリン(=マニュエル・ミランダ)を尊敬しているし、彼に信頼してもらえたのは本当に大きなこと。ジョン・M・チュウ(監督)も素晴らしくて、僕は世界の果てまで彼について行きたいと思います。

イン・ザ・ハイツ
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──ウスナビという主人公の魅力をお聞かせください。

ウスナビはみんなのことが大好きだし、自分のコミュニティを愛しているし、大切にしている。自分の人生に関わる人々に、とても尽くす人です。彼は自分が大事だと思うことに力を尽くすし、とても親身になる。いとこのソニーとの関係には、そういうところが出ていますよね。ウスナビは、いつかドミニカ共和国で再び暮らしたいという夢を持っているし、ソニーを連れて帰りたいとも思っているんです。

映画に出てくるアブエラという役は、(ウスナビにとっての)おばあちゃんだけれど、本当のおばあちゃんじゃない。だけど、本物のおばあちゃんのようにウスナビを育てた。そういう存在は、たとえば僕たちのように、ワシントンハイツのようなコミュニティで育った人間にはとてもよくわかります。僕らは「ドニヤ」と呼んでいたけど、アルカプリアという、伝統的なプエルトリコのスナックをくれた人がいました。(アルカプリアは)ビーフを使ったポテト・ボールみたいな食べ物なんですけどね。それからピラグア・ガイみたいな人もいて、窓からピラグアを売っていた女性のことも覚えていますよ。そういう景色はすごく特別なものでした。

ウスナビは、そういう自分のコミュニティを本当に大切にしているし、人生で愛する人々のこともすごく気にかけている。最高の自分になれるように、ウスナビは自分にできることは全部やろうと思っているんです。

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──舞台版に続いての『イン・ザ・ハイツ』ですが、原作と映画版の共通点・相違点をどのように考えていらっしゃいますか。

共通するのはストーリーのハートだと思います。『イン・ザ・ハイツ』は特別な作品で、参加したことがある人、または観たことがある人なら、誰でも「このショーは何かが特別だ」と言うはず。心の琴線に触れるショーなんです。他のどんなショーとも、どの映画とも違った形で心に響く。それは、とても大きなハートをもって作られたからだと思いますよ。この作品を作るために、たくさんのハートと時間、愛、思いやりが注がれているから。

映画版と舞台は、同じストーリーだけれど、違った形で語られていて、それが素晴らしいと思います。ストーリーは調整され、変更も加わっていますが、その核にあるのは、毎日とても速いペースで動いているコミュニティで暮らす人々。自分たちの夢は何なのか、どうすれば叶うのかを考えている人たちでいっぱいなんです。舞台と映画版で、一番よく似ているのはそういうところでしょうね。もちろん違うところはたくさんあって、映画なら1日のうちにたくさんテイクを撮ることもできるけれど、その場面を撮るのは1日だけのこと。一方、舞台では1度きりしかチャンスはありません。

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リン=マニュエル・ミランダという才能

──最初に『イン・ザ・ハイツ』が映画になると知った時のご感想はいかがでしたか?

とてもうれしかったのは、より多くの方々に観てもらえること。誰もがブロードウェイに行けるわけじゃないけど、(映画なら)いつでも好きな時にアクセス出来る。それが映画やテレビの素晴らしいところです。たとえば、夜中の3時に観たいと思えば、自分の携帯で観ることができるようにもなるだろうし、もちろん映画館で観ることもできます。

映画化をありがたく思うのは、この作品のストーリーや、登場人物それぞれの物語を──ラティンクス(ラテン系)の物語、プエルトリコやドミニカ共和国、メキシコなどで生まれた人々の物語を──もっと遠くまで届けることができるから。ブロードウェイよりも遠くへ届けられる。たとえば、ドミニカ共和国の人々がどんなディナーを食べているのか、ということもね。ドミニカ共和国はアメリカの南にある最高の島で、プエルトリコやキューバ、ハイチと並ぶ場所。この映画がなければ見られなかったかもしれないものを、世界中の人々が見られるのは素晴らしいことだと思います。

──あなたにとって、リン=マニュエル・ミランダの楽曲の魅力とは?

リンは、歌っていて本当に気持ちよく、また心を揺さぶる歌を書くことを極めた人。心に響く曲を作るにはどうすればいいかが分かっているし、実現したいことを形にするために、シンプルな歌詞も書けば、素晴らしいメロディも書く。軽妙なやりとりは素晴らしくて、まるで僕たちにとってのシェイクスピアみたいだって思います。誰もがそう思うかどうかは別にして、僕はシェイクスピアはラップを書いていたんだなと思うし、リンもそういう仕事をしてくれています。

リンは信じられないほどの才能で、ストーリーテリングの達人であり、きちんと現代を捉えているし、その上、あくまでもパーソナルなんだとも感じられる。すべてを持っている人(笑)。本当にすごいって思いますよ。リンの曲を歌う時、僕は「ただ立って、この言葉を言えばいいだけだ」という気持ちにさえなります。余計なことをしたら、その素晴らしさを邪魔することになってしまうから。

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──舞台での経験はいかがでしたか?

すごく良かったし、僕は、役者ならば誰もが一度は舞台をやるべきだと思いますよ。(舞台は)どんな役者にでも出来る最高のトレーニングだと思うし、特別なものがある。やっぱり、それはライブだから、一回きりしかチャンスがないからだと思います。もちろん、その日に出来なかったことは次の日にもやれるけれど、ほとんどの人は一度しか観に来ないでしょう。舞台は(チケット代が)かなり高いから。だから(多くの人にとっては)このセリフを聞き、このダンスを見る、たった一度のチャンスになるわけです。本当にすごいことだと思いますよ。毎日そういう興奮状態で舞台に出て行って、「やろう、何が起きるかわからないけど、やってやる」と思うんです。

撮影で味わった苦労、歌い踊ることの感動

──映画版『イン・ザ・ハイツ』の撮影では、どんなことに苦労されましたか?

おそらく最大のチャレンジは、「邪魔をしないように」と常に意識しておくことでした。うまくストーリーを語れるように、自分が頑張りすぎたり、やりすぎたりしない。同時に、自分自身にプレッシャーをかけたり、自分をいじめたりもしない。うまく踊れないことがあったとしても、「自分にはちゃんとやれる」と信じなければいけません。

どんなパフォーマーであれ、出来る限り最高の存在になりたいと思うもの。だから時々、自分自身にすごく厳しくなったり、意地悪になったりするものです。すると、自分はぜんぜんダメだと思えてきてしまう。だから完璧を求めるのではなく、ただ正直でいるべきだ、と毎日自分に言い聞かせていました。僕らは決して完璧じゃない、だけど正直でいなきゃいけない、と。

イン・ザ・ハイツ
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──あなたがお薦めする『イン・ザ・ハイツ』の見どころ、聴きどころは?

撮影中、僕がもっとも影響を受け、もっとも素晴らしいと思えたのは、『Carnaval Del Barrio(カーニバル・デル・バリオ)』という歌のシーンでした。(タイトルは)「近所のパーティー」という意味で、ビルの間の路地で、60人くらいがラテン・プライドについて歌い、それぞれの旗を振る。ダンスしながら大声で歌うんです。そこでは、自分たちがどんな場所で生まれたかということを語るんですよね。

ベンチとクーラーがあり、シーツを干すための線が引かれただけの路地に、人々が集まり、誇らしげに歌い踊る。(自分を)さらけ出していると感じたし、同時にとても満たされた気持ちになりましたね。リンは非常階段で歌い、僕はベンチの上に立って、互いに歌い合うこともありました。本当に「Carnaval Del Barrio」、近所のパーティのようだと思ったんです。どこにいても、僕たちはパーティーができる。どこにいようと、僕たちは喜びを見つけることができるし、喜びは僕たちを見つけてくれる。本当に素晴らしいことだと思いました。

映画『イン・ザ・ハイツ』は2021年7月30日(金) 全国ロードショー

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Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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