マーベル新ドラマ『インヒューマンズ』IMAX上映に米メディアの評価辛辣 ─ 不評相次ぐ理由とは

マーベル・スタジオの放つ新ドラマ『インヒューマンズ』に、本国アメリカから大ブーイングが噴出している。本作は、ドラマの第一話と第二話をIMAX劇場でプレミア上映するなど、毎話映画並のクオリティを誇る作品として制作されていた。映画シリーズの進撃止まらぬマーベル派生ドラマとして鳴り物入りで登場を果たしたが、その仕上がりはファンを満足させられず厳しい意見にさらされている。
『インヒューマンズ』は、マーベル・シネマティック・ユニバースからの派生ドラマ『エージェント・オブ・シールド』と世界観を共有。超人種族であるインヒューマンズの王室一族を描くストーリーで、声に破壊の力を持つブラックボルトや、赤い長髪を自在に操るメデューサ、番犬となる巨大なブルドッグのロックジョーなど個性的なキャラクターらがドラマを繰り広げる。
本国でのプロモーションは2017年初夏ごろより始まっており、6月と7月には予告編映像が公開されていたものの、予告編の時点から今ひとつ盛り上がりに欠けるような内容で、ファンからはむしろ不安の声が挙がっていた。
映画並のスケール、王室をめぐる人間ドラマ…楽観的な意見の中には、「これはマーベル版ゲーム・オブ・スローンズなのだろう」と捉えるものもあったが、IMAX劇場のプレミア上映をついぞ迎えると、その期待にも届かなかったとの意見が溢れ出た。レビューサイトRotten Tomatoesの批評家スコアはわずか4%、各メディアも軒並み辛辣な評価を下している。
『インヒューマンズ』=超人的の意味にかけ、「超人的にひどい」と切り捨てるのはUSA TODAY。「キャラクターが何をやっているのか、どういう心情を表しているのかを説明できていない。結果、バラバラの人たちが叫んだり火を投げ合っているだけの中身のないストーリーになっている」と指摘する。
TVドラマながらもIMAXカメラで撮影されたという点も異例として盛り上げられていたが、Den of Geekはその利点を全く活かせていなかったと指摘している。「IMAXカメラで撮影されようが、ロエル・レイネ監督は”凄い画”とか映画的な映像に全く出来ていない。実際、インヒューマンズはすごく安っぽく見えて、低予算だったマーベルNetflixドラマ並だった」といい、「(マーベル・スタジオ社長の)ケヴィン・ファイギとMCUのフィルムメーカーたちはこれを観てどうするんだろう?」と締めている。
IGNのレビューによれば「いつものマーベルらしくない」そうだ。ストーリーには何の狙いもなく、規模に見合う鑑賞に値するまで磨かれていないという。インヒューマンズは、居場所を追われたキャラクターらが地球のハワイにやってくるという物語だが、ハワイの大自然を捉えた映像が悪作用し「マーベル最新の伝説を観ているというより、家でディスカバリー・チャンネルを観ているような気分になった」とバッサリ。IMAXでの上映はむしろ害でしかなかったとまで語っている。
各メディアのレビューを読み解くと、不評の原因はキャラクターの心情描写不足に尽きる、という印象を受ける。特に顕著なのがイワン・リオン演じるマキシマスだ。インヒューマンズの王ブラックボルトの弟であり、”怒れる男”であるマキシマスは王座を狙って王家殺害を試みるのだが、観客がとにかく嫌っているのがこのマキシマスである、とComicbook.comは分析している。詳細は我々も本編を観るまでわからないが、同記事はマキシマスを「気持ち悪い」と吐き捨てている。
また、「マーベルはインヒューマンズをどうするべきか」とのタイトルで掘り下げるScreen Rantの記事も、やはりマキシマスのキャラクター性をしっかり描くべきと意見している。 同記事では他に「『エージェント・オブ・シールド』ともっと絡めるべき」「今後のMCUに関与させるべき」「アティラン(インヒューマンズが暮らす街)がどうなっているのか説明すべき」「もっとそそられるインヒューマンズを用意すべき」「ロケ地をもっと活かすべき」「小道具にちゃんとお金をかけるべき(マジで)」「ロックジョーをもっと出すべき」など、1つや2つでは収まりきらないリクエストを挙げている。
低予算、短納期
この度上映された第1〜2話のロエル・レイネ監督のインタビューも参照してみると、これまで見てきた不評の理由が分かる。マーベルは、低予算かつ短納期で仕事をこなしてくれるロエル監督に、「不慣れなIMAXカメラを用いて20日間で2話撮影する」という難題を投げていたようだ。
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