【全力擁護】ヒーロー映画史上最も自由な男、フーテンのトムさん世直し日記!『ジャック・リーチャー Never go back』弁護レビュー
「ジャック・リーチャー/Never go back」は、主人公の人となりの事前説明が省かれている
まず最初にご説明しなくてはならないのは、今作「ジャック・リーチャー/Never go back」の原作は、アメリカではとても有名な、リー・チャイルドの冒険小説シリーズ18作目であるということ。
劇場化一作目である前作「アウトロー」(2012)の原作がシリーズ9作目「One Shot」ですので、その際にも言えたことですが、この映画はお話の作りとして、主人公ジャック・リーチャーの人となりや、放浪の理由などの事前説明が前作以上に省かれております。
日本人である我々に飲み込みやすく例えるならば、「フーテンの寅さん」がそのシリーズ中盤の作品で、「そもそもこの男は何故ほっつき歩いてるんだ?」ということを殊更に説明しないように、主人公ジャック・リーチャーがさすらいの放浪男であるということは、シリーズものの作品である以上語らずもがなのことなので、もしこういったバックストーリーがあまり語られないことに物足りなさを覚えたならば、それは多めに見てあげてください。
また、先ほど恣意的にフーテンの寅さんの名前を出したのは、あちらは犯罪こそ扱いませんが、「旅先で変わり者の主人公が、周囲と軋轢を生みながら、やがてそれをうまいことなんとかして、その地域の問題を解決する」という王道のプロットを採用している点で似ていると感じるからであります。そして、このような作りの劇は、風変わりな主人公キャラと、それに振り回される周囲の人々とのケミストリーこそ主題であり、謎解きや、劇中で起こってる問題そのものは副次的なものである場合が多く、今作もまあ、そういう意味ではストーリーの目新しさは少ない類型的なキャラクタードラマのバランスで作られてはいます。
低評価は間違っているぞ!
何故こんなことをグダグタ述べているかと申しますと、まずこの「ジャック・リーチャー Never go back」、日本に先駆けて全米公開されたのですが、評判も上々、興行的にもスマッシュヒットとなった前作から一転してアメリカでの評判は散々でございました。悪評高き(筆者の中でだけ)あのレビューサイト、Rotten Tomatoesなんかの得点をご覧になれば、もうケチョンケチョンであることは一目瞭然。それを受けてのことなのか、名指しはしませんが日本の大きなポータルサイトの映画コーナーでは、劇場公開が始まる前から低いレビューが大量に投稿されるという憂き目に遭っております。
これは断言できますが、今作はアクションジャンルのキャラクタードラマ映画としては、優に平均以上の出来に到達しており、国内外レビューサイトで叩かれているような不当に低い評価に値するような作品では決してありません。だいたい貶す側の論拠として多いのが、トム・クルーズという俳優本人への攻撃で、これはプライベートの行状で突っ込みどころが多いトム・クルーズというスーパースター特有のものですが、少数派の褒める側も言うに事欠いて「トム・クルーズのファンなら楽しめる」なんて論調が大半を占めております。
考えてみてください。渥美清のことが嫌いな人が、寅さん観に行きますか?万人受けする映画など、この世には存在しません、この映画は、「トム・クルーズの、トム・クルーズによるトム・クルーズファンのための映画」です。それ以外の人が観に行って「なんか違うな」と思うのは仕方の無いことで、そのうえトム・クルーズへの個人攻撃など、まったくのお門違いと、幼少時トップガンで洗脳が完了してる身として、顔を真っ赤にして言わせて頂きます。
「ジャック・リーチャー/Never go back」の魅力
前作「アウトロー」で監督と脚本を務めたクリストファー・マッカリーは製作に回り、代わりに本作のメガホンをとったのがエドワード・ズウィック。あの「ラストサムライ」以来のトム・クルーズとのタッグになります。
監督は交代しましたが、前作からの継続しているこのシリーズの魅力、別記事「映画に登場するマニアックな格闘技1」でご紹介した通り、主人公ジャック・リーチャーは腕っぷしが強く、当然それを披露するアクションが見どころなのですが、そこに至るまでの如何にもハリウッドアクション映画的な演出、前作「アウトロー」でいうと飲み屋でチンピラ集団に絡まれてからの一連の流れ、カーチェイスの後のバス停で帽子を貸してくれるおじさんや、クライマックスバトル前の射撃場の親父との軽妙なやりとり、洋画ファンであればあるほど既視感のある、それでいて何度見ても大好物な古式ゆかしきシークェンスは今作でも健在です。
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