Menu
(0)

Search

早川雪洲、三船敏郎から忽那汐里まで ― 1950年代~現在、ハリウッドで活躍してきた日本人俳優たち

ゴースト・イン・ザ・シェル
(C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

ハリウッド映画『デッドプール2』(2018)に出演を果たした忽那汐里が、ジェニファー・アニストンとアダム・サンドラーが主演するNetflixの新作コメディ映画『Murder Mystery(原題)』のキャストに加わったとの情報が入ってきました

忽那は『アウトサイダー』(2018)や『オー・ルーシー!』(2018)と海外作品が続いており、今後の躍進が期待されます。彼女はオーストラリアで生まれ育った帰国子女で、言葉のハンデが無いことは大いに助けになることでしょう。

本稿ではこのことに関連して、ハリウッドで活躍してきた日本人俳優の系譜を振り返っていきます。

おことわり

本稿は「日本で有名だった俳優が海外進出した例」を中心にしているため、アメリカ育ちのヒロユキ・タガワやマシ・オカ、日本で一般に高い知名度を得ていなかった尾崎英二郎のほか数例を省略していることをご了承ください。なお、人名はすべて敬称略で記載しております。

アウトサイダー
『アウトサイダー』より忽那汐里 Netflixにて配信中

創成期 ― 1950年代まで

「創成期」という表現が適切かどうかは難しいところでしょうが、映画はリュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895)がはじまりだと言われています。同作は駅に列車が入ってくるところを捉えた映画…というよりも記録映像と呼ぶべきもので、映画がストーリーを語る娯楽へと進化するにはもう少し時間がかかります。

最初の劇映画はジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』(1902)で、その後アメリカに渡ると『國民の創生』(1915)などエポックメイキングな作品を通して大きく進化します。1920年代に入ると映画は新しいメディアとして成熟し、1927年には第一回目のアカデミー賞が開催されました。

当時のハリウッドに日本人俳優がいたのかというと、実はすでに存在しています。

海外旅行すら困難な時代ですので驚きですが、日本人スターの第一号、早川雪洲が『おミミさん』(1915)でデビューを飾っていました。雪洲は1886年生まれ。21歳で渡米し、舞台でキャリアを積み映画デビューを果たしたあと、ハリウッド創成期の名匠セシル・B・デミル監督の『チート』(1915)に主演。同作は全米で300万ドルの興行収入を挙げる大ヒット作となり、雪洲はイタリア出身のルドルフ・ヴァレンティノと並ぶ「異国のスター」としての地位を確立します。同作には同じく日本人俳優のジャック・アベこと阿部豊も出演しています。

その後、雪洲は太平洋戦争によるアジア人迫害を避けてフランスに渡りますが、戦後アメリカに呼び戻され『戦場にかける橋』(1957)で日本人初のアカデミー賞候補(助演男優賞)となりました。同年のアカデミー賞ではナンシー梅木こと梅木美代志が助演女優賞を受賞しており、日本人俳優のハリウッドにおける活躍において重要な一年となりました。その前年である1956年には、マコ岩松こと岩松信がジョン・スタージェス監督の『戦雲』で映画デビューを飾っています。

このように、このころ活躍した日本人俳優は日本ではなくアメリカで俳優になっています。ナンシー梅木だけはハリウッド進出以前に日本映画に出演していますが、彼女も26歳にして若くして渡米しており、キャリアが大きくステップアップしたのはアメリカの地でした。雪洲は21歳、マコ岩松は15歳、ジャック・アベは17歳での渡米です。情報伝達の遅い時代ですし、日本映画が成熟するにはもう少し時間が必要だった時期です。当時、日本の芸能界で活躍してからハリウッドへ行くという地図は描きづらかったのでしょう。

日本人スターの進出 ― 1960年代

1950年代、第二次世界大戦から奇跡の復興を遂げた日本では映画が急速に進歩します。

その最たる例が初めての国際的な名匠、黒澤明でしょう。『羅生門』(1950)は日本映画として初めてヴェネツィア国際映画祭金獅子賞とアカデミー賞名誉賞(現在の外国語映画賞に相当する)を受賞し、黒澤明や日本映画が世界で認知・評価されるきっかけとなりました。

その黒澤作品で、スターとしての地位を確立したのが三船敏郎です。

黒澤映画の国際的評価にも後押しを受けた三船は海外からもオファーを受けるようになり、メキシコ人監督イスマエル・ロドリゲスによる『価値ある男』(1961)のメキシコ人役で海外デビューを飾ります。同作は日本ではソフト化すらされていませんが、1962年のアカデミー賞では外国語映画部門で候補になっています。

Writer

ニコ・トスカーニ
ニコ・トスカーニMasamichi Kamiya

フリーエンジニア兼任のウェイブライター。日曜映画脚本家・製作者。 脚本・制作参加作品『11月19日』が2019年5月11日から一週間限定のレイトショーで公開されます(於・池袋シネマロサ) 予告編 → https://www.youtube.com/watch?v=12zc4pRpkaM 映画ホームページ → https://sorekara.wixsite.com/nov19?fbclid=IwAR3Rphij0tKB1-Mzqyeq8ibNcBm-PBN-lP5Pg9LV2wllIFksVo8Qycasyas  何かあれば(何がかわかりませんが)こちらへどうぞ → scriptum8412■gmail.com  (■を@に変えてください)

Ranking

Daily

Weekly

Monthly