早川雪洲、三船敏郎から忽那汐里まで ― 1950年代~現在、ハリウッドで活躍してきた日本人俳優たち

その後の渡辺は『バットマン ビギンズ』(2005)や『インセプション』(2010)などハリウッドの大作に出演。アメリカの舞台にも立ち、ミュージカル『王様と私』では舞台版のアカデミー賞ともいえる権威あるトニー賞の候補にもなっています。
また、同じく『ラストサムライ』に出演していた真田広之も同作をきっかけにアメリカへと活動の場を移しました。彼はとりわけテレビでの活躍が目立ち、大ヒット作となった「LOST」ファイナルシーズン(2010)や「ウエストワールド」(2016-)にも第2シーズンから登場。映画も含めて数多くの作品に出演しています。
また2000年代に多くの日本人俳優が出演した、非常に高い評価を受けた映画が二本あります。『硫黄島からの手紙』(2006)と『バベル』(2006)です。クリント・イーストウッドとアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥというアカデミー賞監督がそれぞれ手がけた作品で、同年のアカデミー賞では作品賞を争いました。この二本も日本人が見て違和感のない描かれ方をしています。
前者には渡辺謙をはじめ、二宮和也や伊原剛志、加瀬亮、中村獅童、裕木奈江といった日本でも知名度の高い俳優が出演。後者には日本映画界を代表する名優である役所広司などが出演し、当時は一般に知名度の高くなかった菊地凛子がアカデミー賞の助演女優部門の候補になりました。
ちなみに、同時期に公開された『SAYURI』(2005)には渡辺謙や役所広司、桃井かおり、工藤夕貴らが出演しています。
2010年代
2010年代に入ると、日本で地位を確立した浅野忠信がハリウッドデビューを飾ります。すでにロシア映画の『モンゴル』(2007)に主演するなど海外進出を果たしていた浅野ですが、マーベル・シネマティック・ユニバースの一本『マイティ・ソー』(2011)に出演し、その後も同シリーズに継続的に登場。『バトルシップ』(2012)や『47 RONIN』(2013)、巨匠マーティン・スコセッシ監督作品『沈黙 -サイレンス-』(2016)、記事冒頭に触れた『アウトサイダー』(2017)にも出演しています。

2010年代には、日本を題材にした映画や、日本にルーツを持つ映画も制作されました。
『GODZILLA ゴジラ』(2014)は日本の怪獣映画の金字塔のリメイク、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)は桜坂洋による小説の映画化です。前出の『沈黙 -サイレンス-』は遠藤周作の古典的名作の映画化で、浅野忠信のほか窪塚洋介やイッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、中村嘉葎雄らが出演しました。
さらに『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)は数々のメディア展開が行われてきた『攻殻機動隊』をハリウッドが実写化した作品で、ビートたけしや桃井かおりが出演。ウェス・アンダーソン監督による『犬ヶ島』(2018)も日本をモチーフにした作品で、多くの日本人が声優として参加しました。ちなみに日本発のアニメ『カウボーイビバップ』(1998)の実写化も発表されており、アニメの監督を務めた渡辺信一郎は、『ブレードランナー 2049』(2017)の前日譚となる短編作品『ブレードランナー ブラックアウト2022』(2017)を手がけています。
日本を題材にした作品の場合、さらに日本人俳優のチャンスは増えてくることでしょう。2018年現在、アカデミー賞の候補になった日本人俳優は全部で5人。2010年代のハリウッドにおいて日本人俳優には追い風が吹いているといえます。今後、この5人という数字はどのように変化していくのでしょうか。
Eyecatch Image: 『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017) ブルーレイ&DVD発売中 (C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.