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【インタビュー】2時間だけ全てを忘れて欲しいから、私は映画を作る ─ 大御所ジェリー・ブラッカイマーと『ジェミニマン』の仕事

『ジェミニマン』ジェリー・ブラッカイマー

ハリウッドで最も成功した映画プロデューサーのひとりであるジェリー・ブラッカイマーが、最新作『ジェミニマン』のため来日。『バッドボーイズ』(1995)からの付き合いであるウィル・スミスを、最新技術で23歳にまで若返らせ、クローンとしてもう1人の自分と対決させるという意欲的な作品を仕上げてきた。

さらに本作は、1秒あたりのフレーム数が通常の2.5倍になった進化的デジタルフォーマット「ハイ・フレーム・レート」を採用。「次世代への挑戦」づくしの『ジェミニマン』をひっさげ、THE RIVERに向けて貴重な言葉を語った。


『ジェミニマン』ジェリー・ブラッカイマー

ハイ・フレーム・レートは慣れるもの

── 『ジェミニマン』の構想は、実は20年近く前からあったと聞きます。

その間、良い脚本もあったのですが、何度テストしても良い映像が作れなかったんです。だから一旦棚上げして、技術の進歩を待ったんです。

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012)でアン・リーがトラをCGで作っているのを見て、これを人間で出来ないかと思ったんです。アン・リーも本作に乗ってくれて、幸運でしたよ。本人ですら、出来るか分からないと言っていましたからね。製作のスカイダンスもパラマウントも、信じて託すしかありませんでした。でも、見事にやってくれた。

── 近頃、さまざまな巨匠たちの発言から「映画とは何か」を考える機会が多いように思います。映画を劇場で観るべき理由が必要だと。『ジェミニマン』はハイ・フレーム・レートで撮影していて、これは劇場で味わうべき理由であると思います。

私もそう願っていますし、お客さんも納得してもらえると思います。ハイ・フレーム・レートの映像は、目が慣れるまでちょっとかかるかもしれません。すごくクリアで鮮明な映像ですからね。我々はモーション・ブラーやフィルムグレイン(粒子)に慣れていますが、これはデジタル撮影なのでそういったものがない。24フレームよりも数倍クリアな映像が楽しめるんです。

だから慣れるのには時間がかかるかもしれませんが、きっと若い世代の皆さんはビデオゲームの影響で慣れていると思います。ビデオゲームも、1秒あたり60フレーム、120フレームですからね。

スターの才能を見極める

── “スター発掘のプロ”と言われることが多いですが。

私は、脚本家が書いた本のキャラクターを実現化できる役者を探すだけです。新人俳優の才能を見極めるのには、経験が必要です。私は何人もの俳優や女優を見てきているから、何か光るものがあるかどうかは見れば分かる。

昔、トム・クルーズと『デイズ・オブ・サンダー』(1990)という映画を作った時のことです。ロバート・デュヴァルをキャスティングした時、彼は本読みに参加できなかった。だから他の何人もの役者に代役を務めてもらって、トムと本読みさせたんです。その時は、ロバートの台詞がうまくいっていない気がするから、脚本家とセリフを書き換えるべきか、なんて話をしていました。

やがてロバート・デュヴァルも本読みに参加できるようになって、代役が読んだものと全く同じセリフを口にしたところ……、素晴らしかった!セリフの書き換えなんて必要なかったんです。そういうことなんですよ。限られた役者だけが、セリフに命を吹き込むことができる。才能ですよ。たとえそれが、独学だろうと、教わったものだろうと、生まれ持った才能だろうと。そういう才能を見極めるには、経験が必要なのです。

新たなテクノロジーの未来

── 『ジェミニマン』では、23歳のウィル・スミスをCGで蘇らせました。このテクノロジーは、倫理的な議論を孕んでいます。例えばモーション・キャプチャーの第一人者アンディ・サーキスなども、倫理問題を予期しています。

この技術が切り開いた先に何があるのか、とても興味深く思います。今や、亡くなった役者の演技も再現することができる。それを禁じるべきかどうか。ケーリー・グラントを許可なく蘇らせる訴訟問題が挙がってくるかもしれない。永遠に生き続けられるようになったとも言えますね。子や孫も、ずっと会えるようになる(笑)。

デジタル蘇生は、今の時点ではまだ難しいテクノロジーです。それに、全て生身の人間の演技がベースになっています。たとえ亡くなった役者の演技を再現したって、それはもうその人の演技ではない。別の誰かの演技がベースになっているからです。

ジェミニマン
© 2019 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

── 『ジェミニマン』は、1秒あたり120フレーム(通常は24フレーム)のハイ・フレーム・レートで撮影された、革新的な映像です。ハイ・フレーム・レートは、今後の映画業界でスタンダードになっていきますか?

まず、現時点ではお金がかかりすぎてしまいます。カメラもすごく大きいし。でも、今後変わっていくと思います。テクノロジーは進歩しますからね。

面白いことに、『ジェミニマン』の撮影の最初の頃には、カメラに20本くらいのケーブルが繋がれていて、ぐちゃぐちゃの状態だったんですよ。でも、撮影終了の頃には6本になっていました。つまり、今作の撮影期間中でさえ、テクノロジーが進歩したわけです。ちなみに、カメラもこの映画のために開発されているんですよ。

ハイフレームレートの将来については、CGと一緒だと思います。CGは、ほんの数年前でも高すぎてあまり使えなかった。今となっては、マーベル映画も大量にCGを使っているでしょう。テクノロジーは日進月歩。今作では、2台のカメラを固定するドイツ製の特注リグも、撮影開始の3〜4日前になってやっと届いたくらいです。

ジェミニマン
© 2019 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

── あなたとウィル・スミスは、彼がまだ20代だった『バッドボーイズ』からの付き合いですが、若いウィル・スミスを見て懐かしさはありましたか?

ありました。ジュニアは、『バットボーイズ』でマーティン(・ローレンス)と一緒に車に乗っているシーンから20ショットくらい抽出しています。そのウィルを、デジタルのウィルに置換するんです。すると、もうどれがデジタルのウィルなのか見分けがつかなくなります。完璧なんですよ。本物のウィルもデジタルのウィルも、完全に見分けがつかない。これは凄い映画が出来るぞと思いました。

私が映画を作る理由

── 以前『バンブルビー』トラヴィス・ナイト監督にインタビューした際、あなたの「映画を守れ」というアドバイスを受け継いだ話をしていました。映画監督だけがその映画を守れる立場だから、という意味ですね。今作ではアン・リー監督が映画を守る必要があった。

はい、そう言いました。

アン・リーにはしっかりとした信念があって、自分の仕事に細心の注意を払っていました。あんなにハードに働く人は他にいませんよ。どんな細かいところも抜かり無い。ちょっと信じられないくらいに、時間とエネルギーを仕事に注ぎ込む人です。だからこそ、彼の作品はどれも素晴らしいのですね。私は、常にクリエイティブを、監督や役者を守る立場です。それが特別な映画を作る道。

── あなたにとって、面白い映画の定義とは?

感情移入できることです。私の映画作りのキーは、満足ができるかということ。映画館で映画を観ている時に、何も考えなくて良くなること。頭の中には、スクリーンで描かれる出来事だけ。昨日の出来事とか、今朝つま先をぶつけたこととか、そういうことが頭から消えてなくなる。スクリーンの中の人々に感情移入して、上映が終わって出てくるときには感情が満たされること。

シリアスな映画でも笑える映画でも良いんです。お客さんの心を掴むことができるか、それがやりたくて、私は映画を作っているんです。全てを忘れられるエンターテインメントを作るんです。メッセージを届けたいとか、そういうことじゃない。ただ2時間の間だけ、全てを忘れて、素晴らしい経験をして欲しいだけなんです。

映画『ジェミニマン』は2019年10月25日(金)全国ロードショー

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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