【インタビュー】『バンブルビー』トラヴィス・ナイト監督がマイケル・ベイから受け継いだ「映画を守れ」のアドバイス ─ 80年代の『トランスフォーマー』ファンに贈る

『トランスフォーマー』シリーズ最新作『バンブルビー』が、2019年3月22日よりいよいよ日本公開となった。
マイケル・ベイ監督によるダイナミックなアクションが見ものだった『トランスフォーマー』シリーズは、通算6作目にしてトラヴィス・ナイト監督へバトンタッチ。世界的スポーツ・ブランドのナイキ創立者フィル・ナイトを父に持つトラヴィスは、自身が立ち上げたアニメ映画スタジオ、ライカ社を通じて『コララインとボタンの魔女 3D』(2009)など革新的なストップモーション・アニメを世に送り出した。2017年公開の『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は日本を舞台とした叙情的な作品として大きな話題を呼んだことも記憶に新しい。
ストップモーション・アニメ出身、ノスタルジックな質感を得意とする若き英才は、ハリウッドの巨大シリーズ『バンブルビー』に何をもたらしたのか。小さい頃から『トランスフォーマー』の大ファンだったというトラヴィス・ナイト監督に、THE RIVERが話を聞いた。

80年代の『トランスフォーマー』ファンに贈る『バンブルビー』
──『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は、「日本へのラブレター」とおっしゃっていましたね。『バンブルビー』は、1980年代の初期アニメ作品、通称『ジェネレーション1』時代からの『トランスフォーマー』ファンへのラブレターでしょうか?
そうですね。この映画は様々な影響のレイヤーが重なり合っています。80年代育ちの僕は、80年代中頃の『トランスフォーマー』初期作品に触れてきました。コミックやオモチャ、アニメですね。だから、もしも自分が『トランスフォーマー』の映画を作ることがあったら、当時の僕が感じていた好奇心や発見、ハートや感情、興奮と同じものをもたらしたいと考えていました。
──オートボットたちのデザインは、80年代のものに寄せているように思います。
今作ではトランスフォーマーのオリジンを語ることになるので、トランスフォーマーが誕生した当時の80年代のデザインを起用できると思いました。僕が夢中になったジェネレーション1の感覚を呼び起こしたかったんです。過去10年間の5作品はマイケル・ベイ監督ならではの観点で作られたものでしたから、ジェネレーション1らしい質感はまだ大画面で見たことがなかったですよね。自分だったらオリジナル版を呼び覚ましたい、そう決めていました。『バンブルビー』は、僕が観たかった『トランスフォーマー』映画ですね。10歳のトラヴィス・ナイトが観たいものを映画化したって感じです(笑)。

──スピルバーグは「80年代はイノセントで楽観的な時代だった」と語っています。監督にとって80年代とは?
80年代に育った僕にとって、スティーブン・スピルバーグからは映画的に絶大な影響を受けました。初めて泣いた映画は『E.T.』(1982)でした。少年とエイリアンの絆が本当に美しく描かれていたと思います。『バンブルビー』も『E.T.』に通じるものがあります。
僕は、80年代のアンブリン映画のあの美しい感覚を呼び起こしたかったんです。不思議で、笑えて、泣けて、ワクワクする冒険があって、ちゃんと心に響くもの。スティーブン・スピルバーグがあの頃描いていた、少年少女が成長するような映画です。
『トランスフォーマー』映画シリーズの父はマイケル・ベイでしょう。であれば、スティーブン・スピルバーグはその心。この2つを、僕の感性をもって組み合わせました。
当時が思い出される懐かしの挿入歌
──『バンブルビー』では、劇中で流れる音楽も非常に重要です。
言葉では伝えられないけれど、音楽だからこそ伝えることができるものってあるじゃないですか。そのメロディを聴いただけで、当時の記憶や感覚が蘇るんですよね。今作の音楽面では、作曲家のダリオ・マリアネッリによるスコアと、80年代の流行曲を使って、観客が(劇中で描かれる)感情とつながりを感じられるストーリーテリングになるよう努めました。キャラクターが感じていることや、映画のテーマ性が良く伝わっていると思います。子供の頃に大好きだった楽曲を扱うことができて、とても嬉しいですね。しかも物語的にも、音楽が意味を持っている。とても美しいと思います。