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J.J.エイブラムス『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』監督就任で『スター・トレック』の今後に暗雲?パラマウント社が苦しい立場に

J.J.エイブラムス
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/19679067265/

J.J.エイブラムスというクリエイターは、今やハリウッドになくてはならない監督でありプロデューサーである。『エイリアス』(2001-2006)や『LOST』(2004-2010)など数々のテレビドラマで名を馳せた彼は、映画界において『スター・ウォーズ』『スター・トレック』『ミッション:インポッシブル』という超有名シリーズを手がける人物となったのだ。テレビでも人気シリーズ『ウエストワールド』の製作総指揮を務めるなど、“引く手あまた”とはまさにこのことである。

そんなエイブラムスの才能にいち早く目をつけていたのが、『ミッション:インポッシブル』シリーズの第3作『M:i-III』(2006)で彼を大作映画の監督に抜擢したパラマウント・ピクチャーズだった。しかし、いわゆる“青田買い”に成功したはずのパラマウント社が現在苦しい状況に置かれている。その原因は、エイブラムスが『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の監督に就任したことだというのだ……。米ハリウッド・レポーター誌が伝えている。

エイブラムスとパラマウント社の「年間契約」

2006年『M:i-III』を皮切りに、これまでパラマウント社はエイブラムスの力を借りてヒット作を多数生み出してきた。監督作品として『スター・トレック』(2009)や『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013)、オリジナル作品『SUPER8/スーパーエイト』(2011)。エイブラムスは『クローバーフィールド』シリーズや『ミッション:インポッシブル』の第4作目以降、『スター・トレック ビヨンド』(2016)でプロデューサーを務め、今後のシリーズ作品の新作にも名前を連ねているのだ。
こうした貢献に対して、現在パラマウント社はエイブラムスと年間1,000万ドルという高額の契約を結んでいるという。

そんなエイブラムスは『スター・トレック イントゥ・ダークネス』以降、パラマウント社のもとでメガホンを一度も取っていない。同作の公開を控えた2013年1月、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015)の監督を務めることが決まったのだ。
当時パラマウント社のCEO(最高経営責任者)を務めていたブラッド・グレイ氏はエイブラムスの次回作を希望していたため、彼の『スター・ウォーズ』を選ぶという決断に激怒したといわれる。しかし同社の契約は監督個人の仕事を制限しないものだったため、同氏はエイブラムスが『フォースの覚醒』を終えるのを待つほかなかった。2015年12月、パラマウント社とエイブラムスは次回作に向けての再交渉に入ったという。

ところが2017年9月12日(現地時間)、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の監督にエイブラムスが就任することが決定した。これは前任者のコリン・トレボロウが降板したためだったが、パラマウント社の現CEOであるジム・ジアノプロス氏にとっては面白くない出来事だった。
なにしろパラマウント社が“青田買い”し、次なる監督作品を希望していたJ.J.エイブラムスが、二度にわたって『スター・ウォーズ』に横取りされたのである。『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の脚本が仕上がっていない以上、同作が公開される2019年12月まで、エイブラムスのスケジュールは2年以上も押さえられてしまったというわけだ。
しかしその一方で、エイブラムスが今後のパラマウント作品にもクレジットされていることから想像しうるように、高額の契約は2018年の夏まで続く。これから『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の製作に注力するエイブラムスがパラマウント作品にどこまで関与できるのか、そして契約が切れる2018年夏以降はどうなってしまうのか。未だ公開日の決まっていない『スター・トレック』の続編はいかに……。

J. J. Abrams speaking at the 2015 San Diego Comic Con International, for "Star Wars: The Force Awakens", at the San Diego Convention Center in San Diego, California. / Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/19679067265/ )
J. J. Abrams speaking at the 2015 San Diego Comic Con International, for “Star Wars: The Force Awakens”, at the San Diego Convention Center in San Diego, California. / Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/19679067265/ )

それでも再契約へ

エイブラムス側は『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のオファーについて、「一生に一度あるかどうか、という機会が二度になった」として引き受けることを厭わなかったという。しかし状況を整理してみれば、エイブラムスが結果としてパラマウント社を軽んじたことは明らかだろう。

米ハリウッド・レポーター誌は、パラマウント社の今後の対応について“それでもエイブラムスと新たな契約を結ぶ”と記している。なぜならエイブラムスとの闘争に入ってしまえば、おそらく二度とその力を借りることはできなくなるうえ、ことによってはルーカスフィルムやディズニー、さらにはスティーブン・スピルバーグをはじめとしたエイブラムスと親交の深い大物業界人を敵に回すことにもなりかねないのだ。パラマウント社が今年(2017年)興行的に当初見込んだほどの成果を上げられていないことを鑑みても、エイブラムスとの対決は避けたい状況である。それにその才能が再び巡ってくるのを待つのに、約2年という時間は決して長すぎるわけではない……。

ちなみに同誌の取材によれば、すでに現CEOのジアノプロス氏は、エイブラムスとの契約やその業務に照らして、ディズニー側から“補償金”を受け取っているという。ただしその金額は100万ドル未満という、エイブラムス不在の穴を埋めるにはとても十分とはいえないものだったようだ。

今後、エイブラムスがパラマウント社とどのような契約を結ぶことになるのかはわからない。2018年の夏から2019年の12月まで『スター・トレック』や『ミッション:インポッシブル』はどうなるのか、今後の作品にエイブラムスがどのように関与するのか。そして『SUPER8/スーパーエイト』以来お目にかかれていない、エイブラムスのオリジナル作品はいつになるのか?

Source: http://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/star-wars-director-drama-how-jj-abrams-jilted-paramount-episode-ix-1041357
Eyecatch Image: J. J. Abrams speaking at the 2015 San Diego Comic Con International, for “Star Wars: The Force Awakens”, at the San Diego Convention Center in San Diego, California. / Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/19679067265/ )

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。