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【レビュー】『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』4時間の大作、劇場版からのアップデートは

ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット
(c)2021 Warner Media Direct, LLC All rights reserved. HBO MAX(R) is used under license.

全4時間。ザック・スナイダー監督の当初の構想と共に、一度劇場公開された映画を再び描き直す異例の大作『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』が2021年3月18日より世界配信となった。日本では2021年初夏にリリースになるこの大注目作を、THE RIVERでは一足先にレビューでお届けする。

バットマンやワンダーウーマン、スーパーマンらDCのスーパーヒーローたちが集結する映画『ジャスティス・リーグ』は2017年に劇場公開されたが、それまでのシリーズ作を手掛けていたザック・スナイダー監督が愛娘の自殺を心労に、製作中に降板。後任に『アベンジャーズ』(2012)のジョス・ウェドン監督が大幅な再撮影・再編集を施して公開された。ところがこれはザックによる構想とは大きく異なる仕上がりとなったことが明らかとなり、ファンの間では“スナイダー・カット”を求める声が強まっていった。

米ワーナー・ブラザース/DCコミックスはファンの声に答える形で、スナイダー監督によるいわばディレクターズ・カット版である本作『スナイダーカット』の正式リリースを決断。全6部構成、およそ4時間にもおよぶ長尺と共に、劇場版には収まらなかった未公開映像と新規映像を使用して描き直された『ジャスティス・リーグ』。どのような仕上がりになっていたのか、ネタバレなしでじっくりご紹介しよう。

この記事では2017年の劇場公開版『ジャスティス・リーグ』のネタバレを含んでいます。また、2021年初夏リリース予定の『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』についてご紹介しています。ネタバレ内容はございませんが、レビューという性質上、気になる方はご留意ください。

『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』で変更されたところ

ザック・スナイダーカットの大まかなプロットは、劇場版と同じだ。舞台はスーパーマンが死んだ後の世界。3つを揃えると強力な力を発揮するマザーボックスを求めるダークサイドの使者ステッペンウルフが地球に襲来し、アトランティスとセミッシラから2つのボックスを奪う。バットマン/ブルース・ウェインは、ワンダーウーマン/ダイアナ、サイボーグ/ビクター・ストーン、フラッシュ/バリー・アレン、アクアマン/アーサー・カリーを集めてチームを結成。のこり1つのマザーボックスの力を使ってスーパーマンを復活させるが、混乱したスーパーマンはジャスティス・リーグにも攻撃を仕掛ける。やがてロイス・レインの登場によって、スーパーマンは正気を取り戻す。そしてジャスティス・リーグは、マザーボックスを奪ったステッペンウルフを阻止するため、決戦に挑んでゆく……。

ザックスナイダー・カットはおよそ4時間の潤沢な時間の中で、ヒーローとヴィランの双方の背景を丹念に明かしていく。特にサイボーグは物語を主導する立ち位置に昇格されていて、機械人間になってしまった悲劇や、父親サイラスへの確執とその克服が詳細に描かれる。「クリス・テリオ(脚本)と話し合いを始めたその最初から、サイボーグは超重要なキャラクターだよねと話していた」と、ザック・スナイダーは米Deadlineに語っている。「この映画の、ある意味中心になる重要な役割がある」と説明するスナイダーは、「サイボーグのオリジン映画はこの『ジャスティス・リーグ』だ」と表現しているほどだ。

唯一単独映画が2作製作されているワンダーウーマンは、『ワンダーウーマン 1984』(2020)との連続性もスムーズだ。故郷セミッシラや、スティーブへの想いがエモーショナルに描かれ、アクションもよりアグレッシブになっている。

ステッペンウルフは劇場版では動機が曖昧で、ただマザーボックスを回収にやってくるだけの、腕っぷしの強い巨体クリーチャーでしかなかった。一方のスナイダーカットでは、刺々しいアーマーに身を包んで迫力を増しており、主人であるダークサイドへの忠誠心がより強調されていて、マザーボックスを揃えようと焦燥していることが描かれる。ステッペンウルフはジャスティス・リーグが束になってかかってもほとんど敵わないほど強力であるにも関わらず、さらにその上位の存在があることを示し、ユニバースの壮大さを暗示している。

また、ダークサイドは3つのマザーボックスのユニティを成し遂げ、全マルチバースの生命を意のままにする「反生命方程式(Anti-Life Equation)」を手に入れようとしているという動機も明かされる。これは劇場版では省かれていたものだ。なお、『アベンジャーズ』マーベル・コミックのサノスはダークサイドから影響を受けたといわれている。ダークサイドの本格的な実写登場はこれが初めてとなるが、印象がサノスと重なってしまうのは致し方ないだろう。

劇場版に比べると、総じてスケールは増し、キャラクターの物語は深みを増している。劇場版に使用されたものと全く同じショットも散見されるわけだが、色調はよりダークでタフな印象に描き替えられている。文脈が豊かになったため、一度観た映像にも関わらず再び夢中にさせるだけの力を新たに帯びている(一部追加シーンのCGの仕上がりが粗い印象はある)。

また、スナイダー印のDC作品としては不相応に感じたコメディ調のやりとりは鳴りを潜めていて、たとえば悪名高い「ドストエフスキー!」のシークエンスは、スナイダー監督が認知していなかったことから予想できるように、今回のバージョンからは容赦なく省かれている。もっとも、フラッシュは独特のコミュニケーション方式を取る最年少のキャラクターとして、部分的にコメディ・リリーフの役割を担っている。

ブルース・ウェインのコメディセンスは劇場版では上滑りしていたが、スナイダーカットではチームを率いる頼もしいリーダーとして描き直されている。ダイアナの女性性を強調するような演出、例を挙げるとビクターにそっと近寄って腕に触れながら優しく諭すシーンや、ブルースの不調に気付いてあげて肩をほぐしに来るシーンもカットされた。また、アクアマンのことをビクターが「ヒゲの人魚姫」と、ブルースが「触手があるのか」と揶揄する下りも除去されている。つまり、これらはジョス・ウェドンによる追加撮影だったということだ。

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THE RIVER編集部THE RIVER

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