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なぜ日本はハリウッド映画のロケ撮影が少ない? ─ マーベル作品、韓国での成功事例と日本の現状

ブラックパンサー
©Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ
『沈黙-サイレンス-』は、日本が舞台にも関わらず台湾で撮影された。

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菊地凛子が出演、ブラッド・ピット主演の『バベル』(2006)も、東京が舞台のひとつとして登場。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督は東京での撮影に苦労し、日本はもっと海外の映画制作に協力的であるべきだと提言している。映画やドラマ撮影のロケ撮影を支援する東京都の窓口「東京ロケーションボックス」によれば、新宿歌舞伎町、渋谷スクランブル交差点、銀座通り、浅草の浅草寺にはロケ撮影の問い合わせが多数寄せられるが、人通りが多すぎるために日常的に断っているという(2009年時点の記事)。『ワイルド・スピード X3 TOKYO DRIFT』(2006)はその名の通り東京が舞台だが、ジャスティン・リン監督はゲリラ撮影を行わねばならず、そのおかげで何度も警察に捕まりかけたという。

東京の繁華街が舞台ならばいざ知らず、なぜ日本では海外映画のロケ撮影が行われにくいのか。特定非営利活動法人ジャパン・フィルムコミッションは、資料「日本国内におけるロケ撮影の現状と課題」の中で、「許認可手続きの煩雑さ」「国としての窓口の一元化ができていない」などの課題を掲げている。また、「海外作品の問い合わせがあっても、語学の問題で対応が遅れたり、対応が出来ないことが多い」といった業務的な事情から、「海外の会社と契約書を結んでパートナーになれる会社が少ない」「海外の大作に対応できる業者の不足、立て替えが発生するため、資金面でも体力のある会社が少ない。また、それらの経理処理ができる人材も少ない」といった人材面での課題も深刻だ。

「無い無い尽くし」で落ち込んでしまうが、最近でも海外作品の国内撮影に成功した事例はある。ジャレッド・レト主演のNetflixオリジナル作品『アウトサイダー』(2018)だ。戦後の大阪を舞台に、白人男性が日本のヤクザ社会に揉まれるドラマを描いた同作は、北九州を中心にオール国内ロケを敢行。製作はリンソン・カンパニーとウェイポイント・エンターテインメントで、共にアメリカの会社。浅野忠信、椎名桔平、忽那汐里、大森南朋、田中泯ら日本人キャストも多数出演した。

2020年目処に改善求む

内閣は、2017年5月に「知的財産推進計画2017」として、海外作品のロケ誘致の強化を挙げている。ただしここで語られている取り組みは極めて初歩的なもので、「海外作品誘致に関する制度・経済波及効果などの調査を実施」「海外製作者のロケ受け入れに係る諸課題の整理」とある。まだ完全に手探り状態にあると言えるだろう。調査・整理を経て体制が整うまでには、今後数年を要すると見られる。同計画資料には、以下のようにある。

「我が国は、2020年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控える。文化の祭典でもある同競技大会に向けて、日本・東京の持つ魅力を、実写映像を通じて如何に発信していくか、との視点も加味する必要がある。」

件のマーベル映画は、全世界16億ドル(およそ1,753億円)超えの特大ヒットを記録中の『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の続編が2019年の公開を控えている。大人気シリーズにおける最大頂点となる映画であるため、『インフィニティ・ウォー』以上のヒットと経済効果が予想される重要作だ。この続編には舞台のひとつとして日本が登場するのだが、やはり撮影はアメリカにて、日本の街並みをセット再現して行われている。諸事情はあれど、素早い体制強化が望まれている。2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、程よいリミットかもしれない。

Source:THR,JFC,Japan Today,内閣府

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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