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【インタビュー】『ジュディ 虹の彼方に』オスカー受賞レネー・ゼルウィガーが語るジュディの愛 ─ 「悲劇ではなくヒーローとして観てほしい」

ジュディ 虹の彼方に
Photo:Kaori Suzuki

『ブリジッド・ジョーンズの日記』シリーズのレネー・ゼルウィガーが主演を務める伝記映画ジュディ 虹の彼方にが、2020年3月6日(金)より公開中だ。レネーは本作で、第92回アカデミー賞や第77回ゴールデングローブ賞で主演女優賞を獲得した。

本作では、不朽の名作『オズの魔法使』(1939)や、レディー・ガガ主演で『アリー/スター誕生』(2018)としてもリメイクされた『スタア誕生』(1954)で主演を務め、ハリウッド黄金期を象徴する存在となったエンターテイナー、ジュディ・ガーランドの波乱万丈な人生が描かれる。5度の結婚、映画スタジオからのハラスメント、当時のMGMの薬物コントロールによる薬物依存、自殺未遂など、想像を絶するエピソードの裏側で、ジュディが見せた愛、ファンとの絆など、いまだ語られぬ大女優の物語が明らかになる。

本作に向けて歌やダンスの過酷なトレーニングに挑んだというレネーは、生前のジュディを鮮明に、そしてリアルに蘇らせた。THE RIVERは、レネー・ゼルウィガーにTV電話での単独インタビューを実行。てらいのない佇まいと優しさ溢れる姿で、開口一番「ハロー!」と筆者の名前を呼ぶレネーの朗らかな声に、その場は温かい雰囲気となった。

ジュディ 虹の彼方に
Photo:Kaori Suzuki

ワンカットで魅せる渾身の生パフォーマンス

── まずは、本作での役作りについてお聞きします。「ジュディ・ガーランド」を演じるにあたり、キャラクターをどのように理解し、準備を進めましたか?大変なことはありましたか?

もちろん、大変でした。ただ、難しいという風には考えなかったですね。人一倍、準備の時間を費やしました。また、ロンドンにあるハックニー・エンパイアシアターで、かなりの時間をかけてパフォーマンスの準備を行いました。その時は挫けそうになりましたね。けれど、それが新しいことを学ぶ喜びだと思うのです。

役作りにおいては、当たり前の事から始めました。ジュディが出演していたアメリカのテレビ番組、トークショー、ゲーム番組、それからジュディや彼女の子どもたちのインタビューなど、見つけることが出来た映像は全て観ました。伝記の本も読みましたね。あとは…YouTubeかな(笑)。

── 劇中での歌やダンスのパフォーマンスには特に感動しました。何か特別な準備はしましたか?

パフォーマンスに関して言えば、ダンスの振付けの練習には多くの時間を費やしました。ルパート・グールド監督の意向で、劇中のパフォーマンスは生歌で、一部はワンカット撮影だったので、ステージ上の段取りに関して、曲中でどの位置にいるのかを意識する必要がありましたね。だから、振り付けにもしっかり振付師がついていました。撮影の最終週に、生パフォーマンスのシーンを撮っていたのですが、観客役を演じた方たちと、お互いの表現を何度も確認しましたね。撮影の合間には彼らと会話をして、ジュディへの愛を確かめ合いました。

ジュディ 虹の彼方に
© Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

── 『シカゴ』(2002)では、歌やダンスに挑戦していたと思いますが、当時と本作で何か違いを感じましたか?

感じましたよ。この作品への準備は少し時間をかけました。なぜなら、時間を経て変化を加えなければいけないと思ったからです。『シカゴ』で演じたロキシー・ハートには小さな声が合いましたけど、ジュディで小さな声だと上手くいかないですし。『シカゴ』のときは、披露するナンバーや、多くのパフォーマー、カメラのアングル、動きなどがとても複雑だったので、歌声を予め録音しました。そのため、即興の余地はありませんでしたし、セリフ、動き、曲中のわずかなパートなど、全てが一致して計画どおりでなければいけなかったので、かなり違いはありましたね。ただ、本作ではパフォーマンスをするという風には感じませんでした。全く違う経験のように感じたのです。

──本作への出演を決めたきっかけはありますか。

「出演しよう」という瞬間はなかったと思います。どこの段階で「さあ、やろう!」という風になったのか覚えていないんですよ。

──ジュディを演じるのは、自然ではありませんでしたか?

まったく。私がジュディを演じるなんてひどいアイディアだと思いましたね(笑)。プロデューサーのデヴィッド・リヴィングストーンがなぜ私に脚本を送ってきたのか最初はさっぱり分かりませんでした。彼に「素敵なお話ですね。興味あります」って電話で言ったんです。そしたらデヴィッドに「とりあえずイングランドに来て何かやってみないか?」と言われたので、ロンドンのアビー・ロードスタジオに行きました。

──ビートルズの大ファンなんですよね?

もちろん!みんなそうですよ!スタジオで、(イギリスのロックバンドの)レディオヘッドも録音した部屋で歌って、「カモーン!」って盛り上がって。それでいろいろ始めたんです。黒髪のウィッグを被って写真撮影をしました。その後も、とりあえずジュディと同じメイクを実際に試してみて、衣装合わせをして、振付師に会って、脚本担当と議論を重ねて…という風にやっていたら、いつの間にかクルーみたいにプリプロダクション(製作前の準備段階)を始めていたんです。

ジュディ 虹の彼方に
© Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

壮絶な人生の中でジュディが大切にしたもの

──作品の内容に関してお聞きします。本作からは、ジュディが我が子を可愛がり、愛していたことがよく伝わりました。だからこそ、ジュディは歌手としての自分と母親としての自分の中で、ある種の葛藤を抱えていたように感じます。ジュディにとって、人生で最も大切なものは何だったのでしょうか。子どもたちか、それともファンですか?

それに関して答えを出すことは不可能に近いですね(笑)。なぜなら、直接会話したことがないから。私がジュディに関して調べたことは、他人の経験や偏見、客観的な考えを介しているので、ジュディにとって何が大切だったのかについて答えることは難しいです。ただ、1960年代に放映されたバーバラ・ウォルターズのトークショーで、ジュディが子どものローナとジョーイと一緒にソファに座って答えているインタビューを見つけたんです。見るからに我が子が愛おしい様子のジュディに、バーバラが「もし女優でなかったら、何をしますか?」と質問すると、彼女は肩をすくめて「良い女性になりたいです」と答えていて。家族、子どもたちと一緒にいることが、彼女にとって第一にあったのかなと思います。と同時に、彼女の状況ではそのような選択をすることはかなり難しかったのでしょう。

ジュディ 虹の彼方に
Photo:Kaori Suzuki

──ところで、アカデミー賞での主演女優賞の受賞おめでとうございます!アワードシーズン中は大変忙しかったと思います。受賞スピーチで、ジュディの遺産について発言していたと思いますが、現在のハリウッドは、ジュディの遺産から具体的に何を学び、どのように行動していくべきだと思いますか?

それは大きな問題ですね。うーん、難しいな。私が脇から入ってあれこれ言うことではない気がして。歴史が正しい道を見つけるのではないでしょうか。彼女の例、人生から学ぶべきことがたくさんあるんです。彼女の物語に関する誤解を始め、優しさ、そして私達が下す選択の重要性。なぜなら、それらは共鳴すると思うんです。それらが、私達の時代が過ぎ去ったずっと後に影響を与えるかもしれません。

※レネーは、第92回アカデミー賞授賞式の受賞スピーチにて、「ジュディ・ガーランドの、ユニークで、卓越した、寛大な遺産は、誰にもまさり、芸術的な偉業をも超越するでしょう」と述べ、ジュディの功績を称えている。

──昨今のハリウッド映画界では、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)や『ロケットマン』(2019)のようなミュージシャンの伝記映画が立て続けに作られています。本作もジュディ・ガーランドについての伝記映画ですが、数ある作品の中で、本作のユニークな点、違いなどはありますか?

(伝記映画では)並外れた人たちの人生を描いているので、エルトンについての作品(『ロケットマン』)も然り、明らかに一貫した線はあると思います。本作はミュージカル映画ではないですし、彼女の人生全てを映し出すものでもありません。ジュディの人生における特定の時期に焦点を当てて、彼女への親しみを持たせるような作品なんです。彼女のペルソナ(外的人格)を描くものでもなくて。どちらかというとペルソナの中にある何かを見つけ出す作品になっています。

ジュディ 虹の彼方に
© Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

愛を与えること、表現すること、広めることを全うしたジュディの人生

──作中で、ジュディはマイノリティな立場にいる人々を支えていたことが分かりました。『虹の彼方に(原題:Over the Rainbow)』はLGBTQコミュニティを象徴する曲だと言われていますが、LGBTQ以外にファンへのメッセージのような、同曲が持つ特別な意味はありますか?

それは偉大なアート作品と同じように、個人の体験によって変わるものなのではないでしょうか。そして、各人による作品体験は、共鳴するものだと思います。それこそが傑作の印だと思いませんか。時代を超えて遭遇することもありえますよね。

この曲は、希望、旅、そして何事も可能であり、どんな人だって理解される場所を想像することについての曲なんです。そして、『オズの魔法使』で若きドロシーが旅する魔法に包まれた場所で、夢を叶えるために必要なものは全て備えていることに気づくという映画のテーマに沿うものだと思います。たくさんの人のイマジネーションの中にいつまでも残り続けるものなのでしょう。

ジュディ 虹の彼方に
© Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019

──最後に、本作では家族関係、希望、成功、恋愛など多くのテーマが描かれていますが、作品を通してファンや観客に最も伝えたいメッセージは何でしょうか?

単に彼女の人生を見るだけで、多くのテーマがありますよね。もし当時の状況を私達の時代と比べるならば、#MeToo運動、薬物乱用や体型維持の強要がまかり通っていた当時のハリウッドへのパロディ、売上重視の時代など、この作品からは多くの学ぶべきことがあります。有名であることと、1人の人間であることの大きな隔たりがある中で、人生における障害や偽りの真実というのは、とても複雑で難しいものだと思います。

この映画の好きなところは、ジュディというアイコンを人間らしく描いているところ。ジュディが下した決断が自分自身のためではなかったことを理解すれば、彼女の行動も理解できるようになり、彼女が抗ったことに対して正しい判断を下すことが出来るでしょう。

生涯を通してジュディを誘惑したものは、彼女にとってとてもネガティブなものであり、また有益なものでもあるのです。それが彼女への共感を引き出すんですね。彼女の人生を、違った視点から、悲劇としてではなく、サバイバーとして、ヒーローとして観ていただければ。ジュディは、困難を乗り越えて愛を与えること、表現すること、そして広めることを続けたんです。それって、並外れた素晴らしいことですよね。

映画『ジュディ 虹の彼方に』は、2020年3月6日(金)全国ロードショー

Writer

SAWADA
SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。

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