イアン・マルコム博士は「良心の声」 ─ 『ジュラシック・ワールド/炎の王国』J.A.バヨナ監督インタビュー

恐竜再現の苦労 ─ アニマトロニクスとCGの融合

──『ジュラシック・パーク』第一作からは特撮も進化したと思います。今作ではアニマトロニクスとCGを用いていますが、恐竜をリアルに見せることに、どうこだわったのでしょうか。恐竜の再現に際し、苦労した点はありましたか。
アニマトロニクスを使ったのは、実際に(恐竜を)動かすことによって、撮影セットの中に本物の魂が宿ると考えたからです。感情や動作に関して、恐竜と人間の相互作用的な効果がありました。役者が実際に本物を見て触ることができる、というのはアニマトロニクスの良いところですね。役者からリアルな演技が引き出せます。
苦労したのは、アニマトロニクスだとどうしても動きに限界があるということです。その時にはCGを使いました。でも全面的に使うのではなく、あからさまにCGだと分からないよう気を配っています。例えば瞳の中だけ、あるいは恐竜のしっぽだけにCGを使ったり。2つの技術を融合させ、観客にはどれがアニマトロニクスでどれがCGかが分からないようにしました。どちらか片方だけを使うより、非常に良い効果が出ましたね。
キャスティングの裏側に迫る
──イアン・マルコム博士を演じるジェフ・ゴールドブラムの復帰は、どのタイミングで決定したのでしょうか。また、マルコム博士をどのようなキャラクターとして描いたのか教えてください。
ジェフ・ゴールドブラムに関しては、脚本初稿の段階で既にキャスティングされていました。
今作は『ジュラシック・ワールド』三部作の二作目ということで、ある種「結び目」になるような作品だと考えています。一番複雑なのが二作目で、そこにジェフ・ゴールドブラムが参加するのです。僕はマルコム博士が「良心の声」であると考えているんですね。というのは、彼はどこが超えてはならない一線なのかということを、常に意識している人物だからです。この第二作では、非常に不安定な現実世界というものがある。そこにイアン・マルコム博士が登場することで、このストーリーがとても面白くなると考えています。

──主演のクリス・プラットは、コメディからシリアスな演技まで幅広くこなす芸達者な俳優ですね。バヨナ監督がクリス・プラットから引き出したこと、新たに発見したことはありますか。
クリス・プラットとの仕事はすごく楽しかったです。皆さんは彼を面白い人だと思っていますが、彼は面白いだけでなく非常に頭の切れる人物でもあります。意見交換もしましたし、映画には彼のアイディアも入っています。特に即興演技がうまいですし、時には現場でそのアイディアが役立ったこともありました。
──バヨナ監督の作品には、よくジェラルディン・チャップリンが出演していますよね。今作では家政婦アイリス役で登場していますが、今回はどのような経緯で起用に至ったのでしょうか。
今作にはジェラルディンにぴったりの完璧な役があったので、才能を発揮してもらえると思いました。ジェラルディンは偉大な女優です。いつも自分の作品に彼女を起用していますが、僕は彼女に最高の役をやってほしいと思っているんです。

──バヨナ監督の作品では「子どもの視点」を大事にしているように思います。今作でもイザベラ・サーモン演じるメイジーの視点が丁寧に描かれていると感じました。
そうですね。僕は「子どもの視点」というものをとても心地よく感じています。子どもたちと一緒に仕事をするのは楽しいですね。時には忍耐力も必要ですけれど。人物だけではなく映画作りのプロセスみたいなものも理解してもらう必要があるので、そのあたりは少し大変なところもありますが、自分の中ではいつも満足する形で終わります。