『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』ホンモノの古生物学者に直撃インタビュー ─ 恐竜へのロマン、「きっかけは『ジュラシック・パーク』だった」

映画とは一人ひとりの人生に影響を及ぼし、こと将来の夢を与えるという役割においては時に親よりも強力な説得力を持つ。アメリカをはじめ世界各国で封切られている『ジュラシック』シリーズ最新作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』でアドバイザーを務めたスティーブ・ブルサット氏も、映画に魅入られて古生物学者の道を志した一人。THE RIVERでは、ブルサット氏と単独インタビューを行う機会に恵まれた。
古生物学者として活動する傍ら、英エディンバラ大学で教鞭をとるブルサット氏は、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のコリン・トレボロウ監督からの直オファーにより、企画に携わることになった。これまでも「やってみた! 恐竜大実験」(2018)や『ウォーキング with ダイナソー』(2013)といった恐竜作品でアドバイザー歴のあるブルサット氏だが、ハリウッドの大作映画は本作が初。Zoomを通してのインタビュー時、カメラはオフで顔を見ることができなかったにもかかわらず、生き生きとした表情が伝わってくるほど熱心に快活にお話を聞かせてくれたブルサット氏の恐竜愛をご紹介しよう。
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『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』古生物学者スティーブ・ブルサット氏 インタビュー

── はじめまして、スティーブさん。
どうもどうも!
── 実は、本物の古生物学者の方とお話するの、スティーブさんが初めてなんですよね。すごくワクワクしてます。
おお、いいですね!
── 今はどちらに?
スコットランドにいるんです。さっきは別の日本の方と話していたんですけど、彼には僕がどれだけ日本を愛しているか伝えたんです。ずっと前ですけど、妻と一緒に日本に長く滞在したことがあるんです。福井県には素晴らしい恐竜※がいるのでね。日本では新種の恐竜(の化石)がたくさん見つかっていますし、若い恐竜博士が多いです。だからこうして恐竜について話せて嬉しいです(笑)。
※日本で発見されている恐竜の化石のうち、約8割が福井県で発掘されたものと言われている。
── こちらこそです。さて、まずは『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』に参加されることになった経緯についてお聞きしたいです。
数年前にですね、2019年のことだったかな。『The Rise and Fall of the Dinosaurs: A New History of a Lost World』という一般的な大人向けの恐竜の本を書いたんです。確か邦訳版(『恐竜の世界史 負け犬が覇者となり、絶滅するまで』みすず書房)も出ていると思うんですけど。それで、たまたま本が『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレボロウ監督の元に渡ったんです。本を読んだ彼が、僕にメールを送ってくださって。最初は誰かがジョークで送ってきたフェイクメールだと思ったんです。生徒の一人が僕を騙そうとしているんだろうと。メールには“どうも、コリンです。僕は科学的に不正確な恐竜映画を作ってます。あなたの本を読んだのですが、どうか恐竜についてお話させてもらえませんか”と書いてありました。それで僕も“ふむふむ”ってなって、知り合いに色々聞いて確かめてみたんです。そしたら彼からのメールだってことになったので、返信しました。
彼も“じゃあ、スコットランドのエディンバラにうかがいますよ。家族とお祭りに行く予定なので”と返事をくださりました。エディンバラでは8月には毎年お祭りがあるんです。コリンはご家族を連れて本当にやってきましたよ。ご家族が祭りを見に行っている間、僕とコリンは座って、恐竜について数時間話し合いました。話し始めたら止まらなくて、一日中話せてしまうほどでした。彼にはすぐに感銘を受けましたね。恐竜についてすごく詳しくて、いろんな恐竜の本を読んで学んでいるんだなっていうのは明らかで、最近の新発見についても知っていましたから。それで新作の話になると、彼は翼のある恐竜を登場させたいんだとおっしゃりました。羽毛恐竜はたくさんいるので、こりゃ大事だと思いましたよ。
いろいろと話していくうちに、彼は“映画で手伝ってくれたりしますか?コンサルタントはどうでしょう?”と声をかけてくださって、僕も“ぜひやりたいです”って即答して。すっごく光栄なことでしたね。だって、『ジュラシック・パーク』を観て育ちましたし、僕を科学の道に導いてくれた大切な映画だったので。それが全ての始まりでした。その後数年間は、現場に赴いてコリンや彼のチーム、キャラクターデザイナーからの恐竜に関するどんな質問にも受け答えするのが僕の仕事になりました。僕は彼らに科学的知識を提供して、本物の化石から分かっていることを知ってもらって、彼らもその情報を基にキャラクターデザインに応用していました。