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『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』ホンモノの古生物学者に直撃インタビュー ─ 恐竜へのロマン、「きっかけは『ジュラシック・パーク』だった」

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
(c) 2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.

映画とは一人ひとりの人生に影響を及ぼし、こと将来の夢を与えるという役割においては時に親よりも強力な説得力を持つ。アメリカをはじめ世界各国で封切られている『ジュラシック』シリーズ最新作『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』でアドバイザーを務めたスティーブ・ブルサット氏も、映画に魅入られて古生物学者の道を志した一人。THE RIVERでは、ブルサット氏と単独インタビューを行う機会に恵まれた。

古生物学者として活動する傍ら、英エディンバラ大学で教鞭をとるブルサット氏は、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』のコリン・トレボロウ監督からの直オファーにより、企画に携わることになった。これまでも「やってみた! 恐竜大実験」(2018)や『ウォーキング with ダイナソー』(2013)といった恐竜作品でアドバイザー歴のあるブルサット氏だが、ハリウッドの大作映画は本作が初。Zoomを通してのインタビュー時、カメラはオフで顔を見ることができなかったにもかかわらず、生き生きとした表情が伝わってくるほど熱心に快活にお話を聞かせてくれたブルサット氏の恐竜愛をご紹介しよう。

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』古生物学者スティーブ・ブルサット氏 インタビュー

ジュラシック・ワールド/ドミニオン
(c) 2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

── はじめまして、スティーブさん。

どうもどうも!

── 実は、本物の古生物学者の方とお話するの、スティーブさんが初めてなんですよね。すごくワクワクしてます。

おお、いいですね!

── 今はどちらに?

スコットランドにいるんです。さっきは別の日本の方と話していたんですけど、彼には僕がどれだけ日本を愛しているか伝えたんです。ずっと前ですけど、妻と一緒に日本に長く滞在したことがあるんです。福井県には素晴らしい恐竜がいるのでね。日本では新種の恐竜(の化石)がたくさん見つかっていますし、若い恐竜博士が多いです。だからこうして恐竜について話せて嬉しいです(笑)。

※日本で発見されている恐竜の化石のうち、約8割が福井県で発掘されたものと言われている。

── こちらこそです。さて、まずは『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』に参加されることになった経緯についてお聞きしたいです。

数年前にですね、2019年のことだったかな。『The Rise and Fall of the Dinosaurs: A New History of a Lost World』という一般的な大人向けの恐竜の本を書いたんです。確か邦訳版(『恐竜の世界史 負け犬が覇者となり、絶滅するまで』みすず書房)も出ていると思うんですけど。それで、たまたま本が『ジュラシック・ワールド』のコリン・トレボロウ監督の元に渡ったんです。本を読んだ彼が、僕にメールを送ってくださって。最初は誰かがジョークで送ってきたフェイクメールだと思ったんです。生徒の一人が僕を騙そうとしているんだろうと。メールには“どうも、コリンです。僕は科学的に不正確な恐竜映画を作ってます。あなたの本を読んだのですが、どうか恐竜についてお話させてもらえませんか”と書いてありました。それで僕も“ふむふむ”ってなって、知り合いに色々聞いて確かめてみたんです。そしたら彼からのメールだってことになったので、返信しました。

彼も“じゃあ、スコットランドのエディンバラにうかがいますよ。家族とお祭りに行く予定なので”と返事をくださりました。エディンバラでは8月には毎年お祭りがあるんです。コリンはご家族を連れて本当にやってきましたよ。ご家族が祭りを見に行っている間、僕とコリンは座って、恐竜について数時間話し合いました。話し始めたら止まらなくて、一日中話せてしまうほどでした。彼にはすぐに感銘を受けましたね。恐竜についてすごく詳しくて、いろんな恐竜の本を読んで学んでいるんだなっていうのは明らかで、最近の新発見についても知っていましたから。それで新作の話になると、彼は翼のある恐竜を登場させたいんだとおっしゃりました。羽毛恐竜はたくさんいるので、こりゃ大事だと思いましたよ。

いろいろと話していくうちに、彼は“映画で手伝ってくれたりしますか?コンサルタントはどうでしょう?”と声をかけてくださって、僕も“ぜひやりたいです”って即答して。すっごく光栄なことでしたね。だって、『ジュラシック・パーク』を観て育ちましたし、僕を科学の道に導いてくれた大切な映画だったので。それが全ての始まりでした。その後数年間は、現場に赴いてコリンや彼のチーム、キャラクターデザイナーからの恐竜に関するどんな質問にも受け答えするのが僕の仕事になりました。僕は彼らに科学的知識を提供して、本物の化石から分かっていることを知ってもらって、彼らもその情報を基にキャラクターデザインに応用していました。

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
© 2021 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

── すごくワクワクするようなお話ですね。ところで、シリーズのオリジンを描く前日譚として、プロローグ映像が公開されていました。古生物学者であるあなたの意見として、6,500万年前の起源を理解することは、オーディエンスにとってどれだけ重要なのでしょうか?

これまでの『ジュラシック・パーク』『ジュラシック・ワールド』の映画では、全て舞台が現代に限られていました。“恐竜はこのようにクローニングされていただろう”とか、“人間とはどのように交流するのか”などが描かれていました。そうしたものが豊富に描かれていましたけど、今の世界では恐竜は密接な存在になっていて、この映画が問いかけていることでもあります。恐竜と共存する世界とはどのようなものなのか、と。

その一方で、この映画の前には短編やティザーといった色んな映像が公開されていて、その中には過去の世界にいる恐竜の姿もありました。彼らだけの世界で、人間もいない。建物も道もない、古代の地球の姿です。僕もこれは必要だと思いましたし、コリンも賢いなと。巧みな芸術の力と莫大な予算を使って、恐竜だけの世界を見せる。映画では皆さんも、生きて、交流して、動いて、食べる恐竜たちのリアルな姿をご覧になると思います。そこにはアレゴリーも含まれていて。T-レックスについても現代で人間を追い回しているだけではない、そして追いかけられてばかりではない、彼らだけの世界を見ることができると思います。

新恐竜・ギガノトサウルスは「ジョーカー」のような存在

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
© 2021 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

── T-レックスについて言及されていましたが、あなたはT-レックスの専門家でもあります。本作で、T-レックスについては何か貢献されたところはありましたか。

正直に言うと、T-レックスに関してはほとんど貢献はできていないんです。T-レックスといえば、『ジュラシック・パーク』のクラシックな恐竜ですから、最初からいた存在ですし、どの映画にも出てきました。1993年の『ジュラシック・パーク』では素晴らしいデザインがこの恐竜に生み出されて、それがフランチャイズを通して継承されていきました。この映画でもT-レックスについて新しいことが少しはありますけど、基本的には『ジュラシック・パーク』ユニバースに生き続けてきたキャラクターですからね。

この映画でコリンが興奮しながらずっと話していたT-レックスとほぼ同じサイズのライバル的な恐竜もいて、ギガノトサウルスというんです。コリンはギガノトサウルスを『バットマン』に出てくるジョーカーのようなキャラクターとしてどう捉えるかを考えていました。彼(ギガノトサウルス)はすっごく意地悪で、卑劣でソシオパスっぽい恐竜なんです。この映画ではT-レックスとギガノトサウルスのアクションがほんとにスリル満点で。シリーズ初登場の恐竜については、僕も詳しい情報をたくさん教えることができたんですけど、それがギガノトサウルスでした。すごくリアルで大きくてT-レックスに匹敵する、食物連鎖の頂点にいるようなやつなんです。T-レックスではないですからね!T-レックスは数あるうちの1種でしかなくて。この映画では、ギガノトサウルスが観客に、T-レックスよりも脅威的な捕食者がいるんだということを教えてくれたらいいなと願ってますよ。

── ちょうど今朝、ギガノトサウルスがジョーカーのような存在だという情報をタイムリーで見つけたところなんです。T-レックスとギガノトサウルスは激突することになるのでしょうか?

彼らは間違いなく交流することにはなるでしょう。公開までは2ヶ月(※)あるので、内容は最後の最後まで変わりうるとは思いますから、僕も最終版はまだわかりません。まあ知っていたとしても話すことはできないんですけど(笑)。でもこの2体の恐竜は交わることになりますし、ギガノトサウルスはすっごくイカしてますよ。それだけは約束できます。

※取材は4月中旬に実施。米公開は6月10日。

『ジュラシック』シリーズが与えた夢、次世代への責任

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
© 2021 Universal Studios and Amblin Entertainment. All Rights Reserved.

── 『ジュラシック・ワールド』フランチャイズでは、“人間と恐竜が共存できるのかどうか”というテーマを問いかけています。恐竜の専門家、そして恐竜の生粋のファンであるあなたにとって、どちらにより感情移入するものなのでしょうか。人間よりも恐竜に共感してしまうなんてことも?

ワォ。それは鋭い質問ですね。僕にとっては、(『ジュラシック』シリーズは)モンスター映画です。たくさんの科学が織り交ぜられているモンスター映画なんです。『ジュラシック・パーク』は恐竜時代を実世界に蘇らせる上でものすごく大きな助けになりました。こうした初期の(恐竜)映画は革命的でしたね。それまで、誰もがあのような恐竜を見たことがなかったですから。僕たちが共感できるような本物の動物のようで。図書館の本の1ページや博物館のゴミ箱のような場所から生まれたのではなく、生きている本物の動物なんです。

僕は『ジュラシック・パーク』の恐竜がずっと大好きでした。恐竜を恐竜たらしめるものは何だったのか。それをあの映画はしっかりと捉えていた。僕たちは人間なので、もちろん人間にも共感します。特にこの映画で描かれようとしているのは、皆さんへのこのような問いかけだと思うんです。「恐竜と人間が一緒に住むとしたら、それはどのようなものなのか」と。これまでに作られてきた多くの(恐竜)映画では、テーマパークにいる恐竜が描かれてきました。でも、逃げる恐竜もいるかもしれない。それを人間が追いかけて、連れ戻そうとする。この映画ではもっとたくさんの新しい恐竜を目撃することになります。人間との交流も目撃することになりますし、彼らは僕たちの世界の一部となる。少し前に公開された短編では白亜紀の恐竜たちが映し出されていて、大暴れする巨大な恐竜がドライブインシアターにやってくるという結末につながる。そこで、(人間は)恐竜が自分たちの世界にやってきたということを悟る。皆さんにも、「あなたはどこに感情移入するのか?」ということをぜひ考えて観てもらいたいですね(笑)

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
(c) 2021 Universal Studios and Storyteller Distribution LCC. All Rights Reserved.

── 『ジュラシック・ワールド』では恐竜と人間のコミュニケーションも描いていて、例えばオーウェンは(ラプトルの)ブルーと意思疎通ができますよね。学術的な見地から実際に恐竜とコミュニケーションを取ることは可能なのでしょうか?

可能だと思います!恐竜はまだ人間界に存在しているということは忘れてはいけないですよ。というのも、鳥類は恐竜から進化したわけですし、そういった意味では鳥も恐竜のようなもの。同じように、コウモリも(人間同様に)哺乳類ですからね。鳥というのは、飛ぶことを覚えた恐竜で、こうしてこれまで生き延びてきました。たしかにT-レックスやブロントサウルス、トリケラトプスといった恐竜たちはいませんが、僕たちの世界にいることにはいます。鳥たちは僕たちの世界では重要ですよね。ペットとしても扱っていますし、食料として食べもします。農場といった所で育てて食べる。恐竜を家畜化しているようなものですよ。

もし僕たちがブロントサウルスや他の恐竜と同じ時代にいたら、間違いなく彼らと関わりを持つことになるでしょう。交流もして。もちろん彼らから身を守ろうとはするかもしれないだろうけど、彼らを自分たちの生活の一部にしようともするはずです。もしかしたら、映画のブルーのように、ラプトルを飼いならすことができるかもしれませんよ。

── ところで、2015年にエディンバラ大学で行われたあなたのT-レックスに関する特別講義をYouTubeで拝見しました。あなたはそこで「今こそ、恐竜研究に素晴らしい時代だ」とおっしゃっていました。『ジュラシック』シリーズは実際に一つのブームを実世界に生み出しましたが、フィクションがノンフィクションに影響をもたらすという意味で、どのような利益があるとお考えでしょうか?

『ジュラシック・パーク』はここ50年の考古学界で起きたことで最も重要だと思います。あの映画が世界に恐竜をもたらし、恐竜へのイメージを生み出しました。それも世界中に向けて。今じゃ、日本や南アフリカ、モンゴル、どの国の子どもたちも恐竜をそれまでにはなかった見方で認識しています。『ジュラシック・パーク』は間違いなく恐竜への世間の関心を復活させることに貢献しましたし、考古学により多くの資金をもたらしてくれもしました。大学は恐竜に関する専攻コースを創設することができるようになって、より多くの学生が恐竜のことを学べるようになりました。恐竜博物館も建てられるようにもなって、とにかく世間の理解を得ることにも役に立ってくださった。

そして僕と同じ、30〜40代の古生物学者の大半が間違いなくこう言うでしょうね。科学者を目指したきっかけは『ジュラシック・パーク』だったと。それは僕のようなアメリカで育った子どもだけではありません。僕には『ジュラシック・パーク』を観て考古学者になったアジアや南アメリカ出身の同僚がいます。本当に重要な映画で、僕たちもフランチャイズのことはとても尊敬しています。今では、フランチャイズを持続させる責任を自分で感じるようにもなりました。世界中の新しい世代に恐竜を届けてあげるという。

── 素敵なお話をありがとうございます。もっとお話したかったですが、お時間になりました。

こちらこそありがとう!またいつか、日本に行きたいですよ(笑)。日本は僕のお気に入りの国なのでね。これからも日本の恐竜情報にはアンテナを張っておきます。特に福井県からの情報には(笑)。

映画『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』は2022年7月29日(金)全国ロードショー。

※記事内の表記に一部誤りがございました。お詫びして訂正いたします。

Writer

SAWADA
SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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