カイロ・レンの心理考察 『過保護』レイアと『無関心』ハン・ソロの間に生まれたアダルト・チルドレン説

『スターウォーズ / フォースの覚醒』で登場したヴィラン、カイロ・レン。
祖父ダース・ベイダーに心酔しているという彼は、ベイダーのようなマスクを被り、十字型のライトセーバーを振り回す。情緒不安定でキレやすく、気に食わぬことがあると暴走してしまう『厨二病』な性格…。
しかし意外にもあっさりとマスクを外すし、その半人前で放っておけないような性格から、悪役ながらも「今後の成長が楽しみ」と言われる人気のキャラクターだ。
このカイロ・レンという人物を、家庭環境の観点から考えてみたい。何故彼は家族を裏切り、暗黒の道を選んだのか。何故マスクを被り、キレやすい性格になってしまったのか。何故、父ハン・ソロを…。それらは全て、彼がアダルト・チルドレンであるからだと考えれば納得がいく。
アダルトチルドレンとは、機能不全家庭で育ったことにより、成人してからもこころに傷を抱えている人のことを指します。
カイロ・レンはアダルト・チルドレンであるという仮定のもと、考察してみよう。
※この記事には映画『スターウォーズ / フォースの覚醒』に関するネタバレ内容を含んでいます。
また、記事はあくまでも筆者の考察・見解です。
カイロ・レンというアダルト・チルドレン
「お前がカイロ・レンと名乗る前から知っている…。」
彼がカイロ・レンという不気味な名前を名乗る前、まだベン・ソロという少年だった頃。
ベン・ソロの両親は銀河全体にとってあまりに偉大な存在だった。
賞金をかけられ、借金に追われるならず者でありながらも反乱同盟軍の第一デス・スターの破壊に貢献し、その後は軍の将軍に任命されエンドアの森のシールド発生装置破壊作戦を主導、一躍英雄として世間から賞賛された男、ハン・ソロ。反乱同盟軍と帝国軍の戦争後に生まれ、ファーストオーダーの洗脳教育を受けていたフィンでさえ、ハン・ソロに出会うと「英雄だ!」と驚いていた。
母には、惑星オルデランの王女。後に反乱同盟軍を指揮し、レジスタンスでは将軍としての職務をこなし、兄には伝説のジェダイ、ルークを持つレイア。
世間における役割があまりにも大きいこの両親は、果たして息子ベンを正常な環境下で教育できていたのだろうか。ソロ一家は、『機能不全家族』だったのではないか。
機能不全家族とは
機能不全家族とは親と子供の境界が曖昧、もしくは子供が親に呑み込まれている状態の家族を指します。 本来であれば子供にも人権があり、子供の心、意志、行動の自由(躾を除く)等は尊重されるものですが、機能不全家族では子供にとってこれらの大切なものが、親もしくは家族によって侵入侵害されています。
偉大すぎる両親の元、ベンは二人の『見えない虐待』に晒されていたと思う。父は英雄、母は将軍、おまけに叔父は伝説。この極端すぎる家庭環境下内において、ベンは自分の生きたい道を選択する事が許されただろうか。
スパルタ教育ママのレイア
おそらくレイアは、息子ベンに、ハン・ソロやルークらのような立派な英雄・戦士になることを望んだのではないか。
彼女はオルデランの王室育ち。幼少の頃から礼儀作法や学問などを徹底的に叩き込まれると、18歳という若さで王女に即位し、同時に史上最年少の帝国元老院にも選ばれている。自らも厳しい規律の元で育ったレイアは、我が子の教育にも同じ方針を選んだはずだ。
ベン・ソロはレイアの母としての愛情に飢えていたはずだ。しかし、ベンが適切な形で愛される事は無かったのではないだろうか。レイアのベンへの厳しい教育は、息子への愛情からなるものではなく、自らの価値観を子に押し付け、『我が息子かくあるべき』という、彼女の『毒親』的な独りよがりによるものだ。
厳しい教育ママとなったレイアの中には、ベンの『あるべき姿』が形成されていたのではないか。それは、自分や夫、兄のような『立派な存在』となる事だ。レジスタンスの志願兵となるように諭したかもしれないし、ジェダイの道を歩ませようとしたかもしれない。ベン・ソロは後に「ルークに託した」とされているから、彼はジェダイの修行を半ば強制的に受けさせられていただろう。現世最高の英雄、ルーク・スカイウォーカーのもとで。
母の厳しい教育から次に託されたのは、またも厳しい規律で知られるジェダイの道だ。ベン・ソロの心が休まるはなかった。
無関心で頼ることのできない父ハン・ソロ
ハン・ソロは父親としてどうだったのだろうか。彼は『フォースの覚醒』で息子の教育について以下のように後悔している。