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『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』カイロ・レン当初の物語ついに判明 ─ ダース・ベイダーと真逆の流れになるはずだった?

Kylo Ren photo by Quarax https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Jedi_Training_Trials_of_the_Temple_Kylo_Ren_2.jpg | Remixed by THE RIVER

『スター・ウォーズ』続3部作、つまり、『フォースの覚醒』(2015)『最後のジェダイ』(2017)そして『スカイウォーカーの夜明け』(2019)を追ってきたファンにとって、一つの重大な回答ともなる情報が届いた。カイロ・レンの物語は、なぜあのような形で終わったのか?本来はどのようなところに辿り着くはずだったのか?というものだ。

カイロ・レンは『フォースの覚醒』より新登場した悪役で、その正体はハン・ソロとレイア・オーガナの一人息子ベン・ソロ。彼の両親はそれぞれ自分の世界で過ごすことや仕事に忙しく、それゆえにベンは不安定な幼少期を過ごした。ルーク・スカイウォーカーに預けられてジェダイとしての修行を受けるが、スノークに唆されてダークサイドに傾向。悪のカイロ・レンと化すと、崇拝するダース・ベイダーのマスクに向かって「あなたが始めたことを終わらせる」と呟いた。

しかし、結局映画3部作の中で、「あなたが始めたこと……」の伏線は回収されず。カイロ・レンは主人公のレイと心惹かれ合うと、最終決戦後には自らの生命力を彼女に分け与え、最後は幸せなキスをして死んだ。

「J・J・エイブラムスがカイロ・レンをどう描きたかったのか、僕は聞かせてもらっていました」と、演じたアダム・ドライバーは米番組で明らかにしている。『スカイウォーカーの夜明け』では、前任監督の降板に伴って、時間がない中で脚本の書き直しが行われた舞台裏が知られている。ドライバーは、J・Jが全く別のビジョンを描いていたものの、「“こうします”という決まりに従わなくてはいけない。僕はそう決めたら、ロンドンに行って撮影準備に取り掛かりました」との事情があったことを話している。

ドライバー曰く、現地に着くと小さな部屋に案内され、そこで初めて脚本を読んだのだという。『スター・ウォーズ』のような注目の大作映画では、情報漏洩を防ぐために脚本を読む環境が厳しく制限されていることがある。

先にJ・J版の構想を聞いていたドライバーだが、手にした脚本や、完成した映画はそれと大きく異なるものだった。ドライバーは次のように説明している。

「僕の心中には、J・J・エイブラムスが本来やりたかったストーリーラインの全体像がありました。彼の考えでは、カイロ・レンはベイダーと真逆の旅路になるというものでした。

ベイダーは最初、自信に満ち溢れ、そして最も強くダークサイドに傾向したところから始まりました。やがて最後の映画になると、彼は最も脆く、そして弱くなっていましたね。

彼(エイブラムス)は、その真逆から始めようとしていたのです。つまり、カイロ・レンは最も混乱していて、脆かった。それが3部作の最後になると、今度は最も強くダークサイドに傾向するのです。

カイロ・レンとレイは『最後のジェダイ』から心を通わせるような姿をみせ、『スカイウォーカーの夜明け』のラストでカイロ・レンはレイに手を貸して戦うようになる。言わばライトサイドに戻ったわけだが、エイブラムスの案は真逆で、むしろダークサイドを極める展開になっていたようだ。

ダース・ベイダーは『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)で、パルパティーンよりシスの名を与えられた直後が、戦力的には全盛期だったと考えられている。その後、オビ=ワンとの戦いで四肢を失い、機械の身体になってからは、依然強大ではあるものの少し力が劣る。『エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)で、修行期間のずっと短い息子ルークに敗れると、ダークサイドの呪縛から目覚め、真人間に戻るという展開だった。

一方のカイロ・レンの物語は、脆く不安なところから始まった。『フォースの覚醒』スターキラー戦では、フィンを相手にも時間を要しており、レイにも一騎打ちで敗北を喫している。精神的にも不安定で、しばしば怒りや嫉妬に駆られて暴走した。ダース・ベイダーとは真逆に、3部作を通じて暗黒面の力を極めていく展開にしようと考えられていたのは興味深い。

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(エピソード9)
© 2020 Lucasfilm Ltd. 2020年10月9日(金)よりディズニープラスで独占配信開始

ドライバーは、エイブラムスから聞かされた当初の流れを「心に留めていました」という。「たとえ、実際にはそういう物語にならなかったとしてもです。なぜなら、撮影中に(物語が)変わっていきましたからね。でも、僕はずっとそのことにフォーカスしていました。」

「変わったのはいつ?」と尋ねられたドライバーは、「ライアン(・ジョンソン)が別の方向性に進んだ時です」と回答。このことから、エイブラムスには『フォースの覚醒』時から3部作の流れを構想しており、少なくともドライバーにもおおよそ共有していたところ、中間作『最後のジェダイ』によってプラン変更を余儀なくされていた、ということが言える。

なおエイブラムスが『スカイウォーカーの夜明け』に再就任する以前、前任のコリン・トレボロウとデレク・コノリーが書き上げていた幻のバージョン『Duel of the Fates』でも、カイロ・レンはダークサイドの追求を極めていく展開になっていた。

Source:The Rich Eisen Show

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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