Menu
(0)

Search

ドラマ「ロキ」シーズン1読むだけ復習記事 ─ シーズン2に向けた簡単ポイント解説

ロキ
(C)2021 Marvel

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のドラマ「ロキ」は、スピンオフ作品であるという性質や、“マルチバースの導入”、“フェーズ5以降の新悪役カーン(の変異体)初登場”といった見どころから、もしかすると「ちょっと難しそう……?」と思われている方もいらっしゃるかもしれない。

しかし注目したいのは、現時点で発表されているMCU作品ラインナップの中で「ロキ」は、フェーズ1出身の古参キャラクターメインの希少な作品であるということ。つまり、「最近のMCUはあまり追いかけていなかった」という方でも、誰もが無理なく楽しめるドラマなのだ。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)でインフィニティ・ストーンを過去作の各場面から盗み出すという大胆な“時間泥棒”作戦に挑んだアベンジャーズは、映画『アベンジャーズ』(2012)で描かれたニューヨーク決戦の最中にタイムスリップする。2023年から来たアベンジャーズが四次元キューブを持ち去る作戦だ。ところが、想定外のアクシデントによって2012年のロキがキューブを拾い上げる。次の瞬間、ロキはどこかに消えてしまい……。

「ロキ」シーズン1は、四次元キューブを奪ってどこかへ逃走したロキが、「正統なタイムラインを逸脱した」という罪によって機関から追われる物語だった。この人気作のシーズン2が2023年10月6日よりディズニープラスで配信開始となることに備えて、本記事では「ロキ」シーズン1のポイントを整理しつつ、シーズン2での注目点を紹介する。まだシーズン1を観ていない方に向けては最適な入門記事になるよう、そして視聴済みだという方にとっても、シーズン2復帰前に役立つ復習記事となるようにまとめた。この記事を読んでおけば、準備はバッチリだ。

ドラマ「ロキ」を楽しむためのキーワード

「ロキ」には、「神聖時間軸」や、その秩序を取り締まる機関「TVA」など、新たに登場する(そしてMCU映画にも重大な影響を及ぼす)要素がいくつかある。まずは必須用語だけをサクっと押さえておこう。

神聖時間軸

これまでのMCU作品で描かれた物語が「神聖時間軸」、つまり正式なタイムラインのことだと理解しておけばOK。かつては多元宇宙という形でいくつもの時間軸が存在し、それぞれの間で大戦争が起こった。その影響であらゆる存在が消滅しかけていたとき、タイムキーパーと呼ばれる強力な存在が介入し、すべての時間軸を神聖時間軸に統一したらしい。もしもまた別の時間軸が生じてしまっては、再び多元宇宙(マルチバース)間戦争が起こりかねない。だから、何人たりとも神聖時間軸から逸脱することは許されないのだ。

TVA

ロキ
(C)2021 Marvel

神聖時間軸に異変が起こり、別時間軸(分岐イベント)が発生してしまったときに、これを取り締まるのがTVA(時間変異取締局)だ。TVAには何人もの職員がいて、みな役人のようにお堅い。TVAの兵士(ミニットマン)は「タイムスティック」と呼ばれる棒で分岐した者を神聖時間軸に戻したり、「リセットチャージ」というカプセルで発生した時間軸を消滅させたりする。枝分かれした時間軸を刈り取ることから、この措置は「剪定(せんてい)」と呼ばれている。「ロキ」シーズン1では、剪定されて消えた者、生物や物体がどこに行くのかも明かされた。

変異体

ロキ
(C)2021 Marvel

変異体とは、神聖時間軸とは異なる時間軸を生きる者たちのこと。マルチバースにおける別の自分ということだ。例えば『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に登場した「ピーター2」「ピーター3」は、ピーター・パーカーの変異体ということ。「ロキ」シーズン1では、女性版ロキのシルヴィや、子どものロキ、ワニのロキなど様々な変異体が登場する。

ミス・ミニッツ

マーベル ドラマ「ロキ」
(C)2021 Marvel

TVAのマスコット・キャラクターで、レトロなアニメーションで描かれたオレンジ色の時計のような姿をしている。はじめのうちはディスプレイの中に登場するが、そのうちティンカーベルのように生で姿を見せるようになる。TVAのあらましを説明してくれるガイド役でありつつ、実はもっと大きなことを知っているような謎の存在だ。

「ロキ」シーズン1 3つの振り返りポイント

「ロキ」シーズン1は全6話。大まかに2話ずつに分けて、それぞれの見所を振り返ろう。

「ロキ」シーズン1の内容に触れています。

SFミステリーとしての評価高い第1話「大いなる目的」&第2話「変異体」

ロキ
(C)2021 Marvel

第1話「大いなる目的」と第2話「変異体」はマーベル流SFミステリーとして楽しむことができる。突き詰めれば、危険人物を捜索するために同じく危険人物(ロキ)が警察組織(TVA)から嘱託捜査官的な役割を与えられる探偵物語だ。

アウトローな人物が公的な捜査に協力するバディものという構図は、ドラマ「ホワイトカラー」などにも通じる。また、製作陣や出演者は本作を“ミステリーもの”と捉えたことを公言しており、デヴィッド・フィンチャーの『セブン』(1995)『ゾディアック』(2007)から多大な影響を受けたという(ところで「ロキ」のエンドクレジットは、『セブン』の有名なオープニングタイトルを彷彿とさせる)。

第1〜2話の概要はこうだ。不正な時間軸や変異体を取り締まる機関TVA内で、兵士が姿を消す事件が連発している。犯人はロキの変異体だ。”目には目を”ということで、ロキを捕まえるためにロキが捜査に駆り出されるわけである。

毒をもって毒を制す。とりわけ本作のロキは『アベンジャーズ』で敗戦した直後のロキである。『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)で民のために兄上と共闘する以前であるし、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)でついに大義に目覚めてサノスの前で自己犠牲を捧げる前の、尊大で、傲慢で、嫉妬に燃えた、油断ならない頃のロキだ。TVAでは、この厄介者を信頼すべきではない、捜査に協力させるなんて正気ではないと警戒されている。

マーベル ドラマ「ロキ」
(C)2021 Marvel

事件の犯人は自分の変異体なのだから、ロキは犯人の手の内がわかるという。「いかにも私らしい策略だ」。さて、TVAはこのいたずらと裏切りの神の言うことを信用すべきか?それとも彼は、逃げ出すためにハッタリを言っているだけなのか?一匹狼のトリックスターであるロキと、規律正しい組織TVAの、真逆の二者による駆け引きが見どころとなった。

ちなみにシーズン1の配信開始直前、第1話&第2話を先行鑑賞した海外批評家からは「タイムトラベル探偵ドラマ」「『マインドハンター』『ゾディアック』『セブン』のようなフィンチャーっぽさがある」「マーベルの真のSF、タイムトラベル大冒険」といった好評価が寄せられていた。

ロキが心を開く?恋愛逃亡劇描いた第3話「ラメンティス」&第4話「分岐イベント」

マーベル ドラマ「ロキ」
(C)2021 Marvel

第3話「ラメンティス」と第4話「分岐イベント」では、奇妙な出会いを通じて、ロキの複雑な内面がたっぷりと掘り下げられる。描かれるのは、言わばロキ版“愛の逃避行”、そして“ブロマンス”だ。

これまで誰とも反りが合わず、大事なのはもっぱら自分のことだけ。人を騙し、死をも欺く、承認欲求と支配欲と自己愛の塊。「ロキをロキたらしめるものは何か?独立心と権威、そしてスタイルだ」。そんなロキが初めて心を開く相手。それが事件の真犯人、シルヴィだ。つまり別世界の自分自身。なんともロキらしい!

シルヴィは基本的にはロキの女性版で、ふたりは育った環境こそ違えど、生き写しのような存在だ。変異体であるシルヴィは子どもの頃からTVAに追われ、ずっと一人で厳しい逃亡生活を送っている。初めは反発しあい、疑いあうロキとシルヴィだが、崩壊する惑星からの脱出劇をやむなく共にするうち、互いの境遇が理解でき、同情でき、個人的な事情を語ることのできるパートナーになっていく。そしてついに、ロキとシルヴィの間に禁断の感情が芽生え始める……。

マーベル ドラマ「ロキ」
(C)2021 Marvel

「元々同じ存在のふたつの変異体である君たちが、そんな歪んだ恋愛関係になるなんて。まさに混沌以外の何者でもない。現実が壊れるわけだ。僕までどうかなりそうだよ。君らはなんて思い上がったうぬぼれ屋の、ナルシシストなんだ!自分に恋するとはね!」

そう叫ぶのはTVAの分析官、メビウスだ。冷静で、控え目で、常に一歩先を見据える仕事人。ロキとは、信用できない狼少年とその監督役のような関係だ。ロキはメビウスを出し抜き、隙あらば裏切ろうとする。しかしTVAの恐るべき真実を知った時、ロキはいつになく必死な様子で、真っ先にメビウスに知らせようとする。この正反対ふたりの間に、思いがけない絆が生じていくのだ。ついにロキはメビウスの前でナルシシズムを自認し、過去の悪事を反省し、ひとりぼっちでいることが怖いと打ち明ける……。

ロキ
(C)2021 Marvel

孤独なヴィランだったロキは、このドラマで初めて恋人や友という存在を見つけていく。もしかしたら自分は、生まれながらに敗北する運命の悪党ではないのかもしれないと気付いていく。キザだったロキが、初めて我々に心を開き、自分の弱みを見せるのだ。

そして明かされる衝撃の真実、第5話「未知への旅」&第6話「とわに時を いつでも」

ロキ
(C)2021 Marvel

ドラマの第5話「未知への旅」とシーズンフィナーレ「とわに時を いつでも」で、ロキと視聴者はいよいよ神聖時間軸とTVAの真実を知ることとなる。全ての黒幕としてついに姿を見せる“在り続ける者”は、MCU新章のラスボスとして君臨することになる“征服者カーン”を変異体とする存在だ。

第6話の最後にシルヴィがとった“とある行動”により、神聖時間軸が無数に分裂してしまう。これによっていくつもの並行世界「マルチバース」が生じると、いよいよMCUの「マルチバース・サーガ」が本格化。その影響で、早速『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023)では征服者カーンが登場し、映画のポストクレジットシーン(エンディング後のオマケ映像)には「ロキ」シーズン2に直結する映像が挿入された。

ロキ
(C)2021 Marvel

なんと奇想天外で、深みがあり、そして重要なドラマか。「ロキ」シーズン1はたった6話の中で、「SFミステリー」「ロキの掘り下げ」さらに「MCU新章への橋渡し」という3つのテーマを描き上げているのだ。批評家からもファンからも特に評価が高く、現時点までに登場しているMCU実写ドラマシリーズ全8作の中でも、Rotten Tomatoes批評家スコアは最高クラス(92%)、観客スコアはトップ(90%)だ(本記事時点)。MCUドラマ群の中で唯一、シーズン2へ更新されたという事実からも、マーベル・スタジオがいかに自信を持っているかがわかるだろう。

いたずらと裏切りの神だったロキは今、己の孤独を知り、慈しみの心を知り、人を信じることを知り、自分よりもはるかに巨大な脅威を知った。“虚偽”の化身だったロキが、今や誰よりも必死になって“真実”を追うようになっているという捻りが面白い。最後に、待望の「ロキ」シーズン2の注目ポイントを、4つに絞ってご紹介しよう。

「ロキ」シーズン2 見どころ解説

TVAはどうなっている?

ロキ シーズン2
(c) 2023 Marvel

「ロキ」シーズン1では、神聖時間軸から逸脱した不正な時間軸が“レッドライン”に達してしまうと修正不可能になってしまうと説明された。しかし第6話の最後には、無数の分岐イベントがレッドラインを超えた。つまり、すでに世界はTVAの手に負えない事態になっているはず。

さらに、ラヴォーナ・レンスレイヤーやハンターB-15といった一部のTVA職員は、TVAの起源にまつわる不都合な真実を知った。シーズン2ではロキが再びTVAに戻ることになるが、彼らの職務や信条はどう変化しているのか。(それに、ロキが戻ったTVAってそもそも……?)

シルヴィやメビウスとロキの関係

ロキ シーズン2
(c) 2023 Marvel

孤独だったロキは初めて自分の心を開くことのできる相手、シルヴィやメビウスと出会ったが、シーズン1の最後には離れ離れになってしまう。シーズン2でどのように再会し、どのような人間ドラマが展開されるのかが楽しみだ。

製作総指揮のケヴィン・R・ライトによれば、シーズン2ではずっとヴィランだったロキが「今度はヒーローであることの本質を知ることになる」そう。さらにトム・ヒドルストンは、新しい家族や絆を見つけたロキが、「最後にはその絆こそがすべてだと実感する」物語になると予告している。まさか、ロキのドラマで家族や絆の大切さが描かれることになるなんて。

カーンの登場、マルチバースが広がる?

現在MCUは、「マルチバース・サーガ」と呼ばれる新章に突入した。異世界のヒーローやヴィランが出現できるようになり、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)では別世界のスパイダーマンたちが、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)では我々の知らないヒーロー組織“イルミナティ”が登場。それもこれも、事の発端は「ロキ」シーズン1第6話の事件にある。

特に警戒したいのが、“在り続ける者”の変異体として『アントマン&ワスプ:クアントマニア』に君臨した征服者カーンだ。この人物こそ、かつて無数に存在する邪悪な変異体同士で多元宇宙間戦争を引き起こした張本人(たち)。コミックでは、何度もアベンジャーズと対決しては敗北し、別の時代に逃げては侵略を繰り返すヴィランだ。

『クアントマニア』ポストクレジットシーンでは、1900年前後のような世界で、ヴィクター・タイムリーという名のカーンの変異体が、集まった聴衆の前で“時間”にまつわる何らかの機械装置を実演しようとする様子が描かれていた。これは「ロキ」シーズン2からの先行映像。聴衆の中にはロキとメビウスの姿があり、彼を探していたことが示唆される。

ロキ シーズン2
(c) 2023 Marvel

マルチバースについても、カーンについても、まだまだ未知の事柄が多く、そこには無限の可能性がある。MCUドラマでは、今後の展開を示唆するような伏線が張られるのが慣例。「ロキ」シーズン2でも、後のビッグイベントにつながる重大な布石が打たれてもおかしくない。

キー・ホイ・クァンが演じる新キャラクター“O.B.”

ロキ シーズン2
(c) 2023 Marvel

このほかシーズン2のお楽しみは、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)でアカデミー助演男優賞に輝いたキー・ホイ・クァンの参加だ。演じるのは、TVAの風変わりな修理担当の“O.B.”という男。TVAのあらゆるテクノロジーはO.B.が設計したものであるか、あるいは修理ができるものであるらしい。クァンはケヴィン・ファイギの直指名によって起用され、撮影現場ではトム・ヒドルストンと一緒になれることを互いに大感激で喜び合ったそう。シーズン2では、オスカー俳優も加わった超一流の役者同士の演技合戦も堪能したい。

「ロキ」シーズン2はキー・ホイ・クァンやロキ役のトム・ヒドルストンのほか、シルヴィ役ソフィア・ディ・マルティーノ、メビウス役のオーウェン・ウィルソン、“在り続ける者”を演じたジョナサン・メジャース、ラヴォーナ・レンスレイヤー役のググ・バサ=ロー、ハンターB-15役のウンミ・モサクらが揃って続投。シーズン1のラストから続く、衝撃の新物語が描かれる。

ロキ
(c) 2023 Marvel

ドラマ「ロキ」シーズン2はディズニープラスにて10月6日(金)より独占配信。

Supported by ウォルト・ディズニー・ジャパン

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

Tags

Ranking

Daily

Weekly

Monthly