『君の名前で僕を呼んで』脚本家のフルヌード・カット批判にルカ・グァダニーノ監督が反論「この映画に男性の全裸は必要か」

「これがアメリカ人的な態度です。女性が全裸になっても、誰も気にもしないし驚きもしないのに」。これは、『君の名前で僕を呼んで』(2017)の脚本を執筆した巨匠ジェームズ・アイヴォリーが2017年に米Varietyで発した言葉だ。
2017年公開のルカ・グァダニーノ監督作『君の名前で僕を呼んで』の脚本には、同性愛の男性キャラクターによるフルヌード・シーンが元々含まれていたが、後に改稿され、公開された映画ではカットされていた。これを受けて発せられたとされる上述の発言で、アイヴォリーは映画業界に疑問を投げかけた。
このたび英The Independentの取材に応じたグァダニーノ監督は、アイヴォリーの同批判について言及。「ジェームズは状況の空気が少し読めていなかった」と語った。この発言の意図には、必要性の無い露出に対するグァダニーノ監督独自の考えがあったようだ。
「ジェームズの主張や意見は、実用的な考えや映画との関係性をある意味欠いていたものだと思います。彼に問いたいのは、この映画に男性の全裸が必要なのかということ。僕はそう思いません。必要ではなかったんです。」
こう語るグァダニーノ監督は、「ジェームズが書いたものは、ヌードに関する過剰な描写を通して無理やり語られていた」と話す。一方で、アイヴォリーの物語を「市場の基準に満たないような、違った映画だった」とも以前話していたグァダニーノ監督。“市場の基準”がどのような観点から語られているのかは定かでないが、フルヌード・シーンの有無を巡る両者の議論には複雑な背景や事情が絡んでいるのだろう。
なお、アイヴォリーはグァダニーノ監督がフルヌードを演出しなかった理由として、主演を務めていたアーミー・ハマー&ティモシー・シャラメの出演契約書に全裸撮影を禁ずる項目があった為と指摘している。ちなみに、アイヴォリーは監督としての代表作『眺めの良い部屋』(1985)の劇中で男性のフルヌード・シーンを演出。同作は、第59回アカデミー賞で最多8部門ノミネート、3部門受賞という輝かしい成績を収めた。
Source: Variety, Indiewire(1,2), The Independent