『マダム・ウェブ』予告編を徹底考察 ─ スパイダーマンの運命が変わる? エゼキエルの正体がヤバすぎる説

この記事で論じられる内容は、全て仮説です。映画『マダム・ウェブ』の内容を保証するものではありません。これらの仮説は正しいかもしれませんし、間違っているかもしれません。あくまでも考察としてお楽しみください。
『マダム・ウェブ』舞台は2000年代?
まず重要なポイントとなるのが、この映画の舞台が2000年代っぽいということだ。0:58のパソコンが明らかに旧型であることや、1:09の地下鉄の男性が持っているゲーム機がPSPであることから推測できる。地下鉄の乗客も、誰ひとりとしてスマホをいじっていない。それから、車内に「IF YOU SEE SOMETHING, SAY SOMETHING(不審物を見かけたらお声がけください)」という広告が掲出されているが、これは実際に2001年の同時多発テロ事件後にニューヨーク州と市交通局が商標登録したスローガンだ(と言うことは、この世界は911テロが起こった世界なのかもしれない)。

『マダム・ウェブ』の物語が2000年代、つまり、現在のタイムラインから約20年前の出来事だと仮定すれば、この映画に若きベン・パーカーが登場したり、ピーター・パーカーの出生が描かれたりすることは理にかなっている。そこで考察のポイントとなるのが、エゼキエルの正体だ。
エゼキエルの正体説①:彼はピーター・パーカー誕生を止めに未来から来た
まず注目したいのは、キャシーが見た出産のビジョン。これがピーター・パーカー誕生の瞬間を示しているのだとして、恐るべきヴィランのエゼキエルがこれを阻止しようとする、というのはどうだろう。
エゼキエルは、キャシーの母コンスタンスとクモ研究をしていた1973年の回想と、劇中の現在(2000年代)の両方に登場するが、あまり歳をとっているように見えない。さらに予告編では白髪姿も描かれており、これは彼の未来の姿と考えられる。

つまりエゼキエルは、1973年と2000年代、そして未来(2020年代?)の3つの時代を、何らかの方法によって行き来しているか、あるいは時間を超越した存在ということではないか。そしてピーター・パーカーは、将来ある時点でエゼキエルにとっての脅威になるのだ。未来のエゼキエルが何らかの計画を実行しようとしたところ、スパイダーマンに阻止されてしまう。何度戦ってもスパイダーマンを倒すことができないと悟ったエゼキエルは、ピーター・パーカー誕生以前にまでタイムスリップして、彼の存在ごと抹消しようと企んでいるということだ。『ターミネーター』で、未来の英雄ジョン・コナーを抹殺するために、サラ・コナー殺害を使命とするターミネーターが過去に送り込まれたような展開である。
そうであれば、エゼキエルはピーターの母親を探して、ニューヨークを手当たり次第襲っているのかもしれない。冒頭に登場したダイナーでの描写から、主な舞台はミッドタウン高校からの行動圏内、つまりピーターの地元クイーンズである可能性が高い。エゼキエルは、ピーターの母はクイーンズにいるという目星をつけて、人々を襲っているということだ。そして、未来予知能力を得たキャシーがその企みに気づき、3人の若き少女と共にエゼキエルを止めようとしているのではないか?
エゼキエルの正体説②:彼は未来のスパイダーマンで、闇落ちしている
続いての説は、エゼキエルはこの世界の未来における正真正銘のスパイダーマンであり、何らかの出来事によって“闇落ち”していたという説だ。
振り返ってみれば、『アメイジング・スパイダーマン』のピーター(アンドリュー・ガーフィールド)も闇落ちしかけていた経緯がある。彼は恋人グウェンを失ったことで自暴自棄になり、『ノー・ウェイ・ホーム』劇中では「気がつくと(悪人に)容赦をしなくなった。怒りに満ちて、冷酷になった」と語っている。
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』で語られたように、全てのスパイダーマンは大切な者を失う<運命>から逃れられない。『マダム・ウェブ』の世界におけるスパイダーマンであるエゼキエルにも辛い出来事が起こったのだが、その<運命>を受け入れられずに闇落ちしていたとしたら?ある時、彼は過去に戻る方法を確立し、これから起こる残酷な<運命>を未然に防ごうとするのでは?もしもその<運命>に、3人の少女が関わっていたら?キャシーは未来を変えようとするエゼキエルを危険視し、彼を止めようとする。一方、エゼキエルも必死なので、自分を邪魔しようとするキャシーたちと戦わなければならない……。
エゼキエルの正体説③:彼は3人の少女の運命を変えにきた
ところで説①と説②では、エゼキエルが3人の少女にこだわる根拠が弱い。この予告編でエゼキエルは、明らかにジュリア、マティ、アーニャの少女3人をつけ狙っている。その理由を推理するにあたって、ポイントとなりそうなのが「彼女たちには 秘密がある」というセリフだ。

映像の2:12では、ジュリアとマティがそれぞれスパイダーウーマンに、そしてアーニャはアラナという名のスーパーヒーローに変身している。さらに2:17では、白髪姿のエゼキエルが何かに手をかけようとするところを、ジュリアがウェブ状のエネルギー波で止めようとしている。2:33では、ビルの壁に張り付くエゼキエルにマティが飛びかかり、首を締めているようにも見える。
少女たちは、映像の大部分で描かれる主たる時間軸(2000年代)では降りかかる出来事に振り回されているが、ヒーロー姿になると、ある程度の自信と経験を有しているように見える。つまり、少女たちは将来のある時点でスーパーヒーローと化して活動するということだ。また、白髪姿のエゼキエルを相手にしていることからも、未来の出来事なのだと推測できる。
さて、「彼女たちには 秘密がある」というセリフをどう解釈するかである。「彼女たちには 秘密がある」というセリフは、原語では“You have no idea what those girls become.”というもので、直訳すると「あの子たちがどうなるのか、お前にはわかるまい」というものだ。一体、彼女たちはどんな存在に“なる(become)”のだろうか?
可能性のひとつは、何らかの脅威となってしまうことだ。例えば、マルチバースの扉を開いて多元宇宙の脅威を招き入れてしまったピーター・パーカー(『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』)や、スパイダーマンの<運命>に抗おうとしてスパイダー・ソサエティに大混乱を起こしたマイルズ・モラレス(『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』)と、クモのヒーローは時として大問題を起こしてしまうことがある。
考えられるのは、スパイダーウーマンやアラナとなった3人の少女たちが将来とんでもない事態を巻き起こしてしまい、取り返しがつかなくなってしまうという展開。そこでエゼキエルが事態の収拾を図るために現在に現れ、彼女たちがスーパーパワーを得る<運命>を変えようとしているのではないだろうか。
エゼキエルの正体説④:彼はヴィランでなくヒーローで、警告のために現れた
今度は、「あの子たちがどうなるのか、お前にはわかるまい」というセリフを別の形で解釈しながら考えたい。少女たちがエゼキエルにとっての脅威や、厄介な存在になるのではなく、正義のヒーローになるということを、彼がキャシーに説いているという考え方だ。
おそらくこれは非常に重要なヒントなのだが、原作コミックでエゼキエルはヴィランではなく、むしろ味方なのである。つまり『マダム・ウェブ』のエゼキエルは、少女たちを助けるために、あるいは警告を与えるために、未来から送り込まれた使者なのではないか?今度は『ターミネーター2』、ジョン・コナーを守るためにやってきたT-800のように?
少しだけ原作コミックの設定を紹介したい。映画『スパイダーバース』シリーズでも描かれたことだが、コミックにおけるいくつものマルチバースの各世界には、クモの能力を持つ選ばれし者たちが何人も存在している。彼らは“ウェブ・オブ・ライフ・アンド・デスティニー”という精神ネットワークで繋がっているのだ。彼らの世界には、人間と動物を結びつける“トーテム”と呼ばれる超自然的な存在があり、スパイダーマンのようなクモの能力や外見を持つ者たちは“スパイダー・トーテム”と呼ばれる。ある時、トーテムを食い荒らす邪悪な捕食者「モールン」が現れ、さまざまな世界のスパイダー・トーテムたち、つまりスパイダーマンたちが次々と狙われていった。
原作コミックのエゼキエルは、スパイダーマンとよく似た能力を持つスパイダー・トーテムであり、映画『スパイダーバース』シリーズでも描かれたスパイダー・ソサエティ(異世界のスパイダーマンたちからなる組織)の一員である。エゼキエルはピーターの元に現れると、スパイダーマンの能力は放射線を浴びたクモ(=科学)によって授けられたものではなく、トーテム(=非科学、超自然)によるものなのだと説き、捕食者モールンの襲来からピーターを助けようとする。
もしも『マダム・ウェブ』が原作を踏襲するなら、こういうことになる。エゼキエルはヴィランではなく、スパイダー・ソサエティから送り込まれたヒーローなのだ!真のヴィランは別にいる!全スパイダーマンを狙う、捕食者モールンのような存在が!エゼキエルは、そのことを警告しに現れ、キャシーやスパイダーウーマンたちを守りに来たのではないだろうか?
これはソニー・ピクチャーズの『スパイダーマン』シリーズに重大な影響を及ぼすかもしれない。MCUにおけるサノスや征服者カーンのように、SSUにも全ユニバースにとって脅威となる独自のラスボス的ヴィランが別に存在するかもしれない、ということだ!
そしてエゼキエルは、少女たちが近い将来ヒーローになること、そのせいで真のヴィランに命を狙われることを知っている。だから彼は少女たちを死の<運命>から逃れさせるため、彼女たちに警告や稽古を与えたり、あるいはスーパーパワーを得るという未来を変えようとしているのではないか?
しかし、そのことを理解しないキャシーからすれば、いきなり現れた男が少女たちを攻撃するようにしか見えない。そこでキャシーが説得を試みたところ、エゼキエルがこう言うわけだ。「あの子たちがどうなるのか、お前にはわかるまい」と。
エゼキエルの正体説⑤:彼はピーター死亡の<運命>を変えるために未来から来た
もうひとつ、大胆な説を唱えるとしたい。エゼキエルは“ピーター・パーカーが誕生しない”という<運命>を変えるために現れたのではないかという説だ。
先述したように、予告編映像ではキャシーが「赤ん坊を産む女性」のビジョンを見ている。しかし、この赤ん坊は産声をあげているようには見えない。とても辛いことではあるが、この赤ん坊は死産となってしまったのではないか(落下するPのサインは、そのことを暗示している?)。つまり、ここは「ピーター・パーカーが生きられず、スパイダーマンが誕生しない世界線」の可能性がある。
もしかすると、この世界にスパイダーマンが誕生しなかったことが、未来の世界に何らかの悪影響を及ぼしていたのでは。そこでスパイダー・ソサエティからの使者であるエゼキエルは、2000年代に戻ってピーターと母の<運命>を変えるという禁断技を試みているのではないか。だから予告編映像内で、彼は「未来を変えようとしている」と言われているのだ。