『マッドマックス 怒りのデス・ロード』サイレント映画として製作予定だった ─ 火炎ギター男などの音のみを使用する構想
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)は当初、“サイレント映画”として製作される予定だったという。米The Hollywood Reporterのインタビューに登場したジョージ・ミラー監督によると、当初は巨大スピーカーを搭載したトラックの上で、火炎放射するエレキギターを掻き鳴らす、コーマドーフ・ウォーリアーなどによるサウンドを中心にする構想だったようだ。
「本作はサウンドのみを駆使したサイレント映画に仕上げるつもりでした。信じられないかもしれませんが、最初は音楽を使用したくはありませんでしたよ。コーマドーフ・ウォーリアーやドラマー、車が掻き鳴らすサウンドだけで、基本的に物語を伝えるには十分だと考えていたので。彼らを率いる武装集団にマックスとフュリオサが出会えば、自然と音楽は生まれます。特にマックスは人間味が増したでしょう。つまり、ミュージカル的な側面を作り上げられると考えたわけです。」
最終的に本作では「並外れた才能の持ち主」とジョージ・ミラー監督が絶賛した、ジャンキーXLによる音楽を使用されている。ところが、それでも「沈黙が非常に重要の要素だ」と訴えているのだ。
「テスト上映の際に、追跡劇を終えた場面で観客から拍手が巻き起こりましたが、直ぐに止んでしまいました。その後、マックスが荒野で目覚める場面が映し出されますよね。そこまでの一連の展開はそれなりに時間が掛かります。しかし何故、拍手が起きないのか、続かないのか、映画文化の素晴らしい要素ではないのかと疑問を抱きました。
ところが、この場面はサウンドが全く無かったわけではない事に気付かされたんです。次の場面まで持続する、小音量の低音が確かに鳴っていました。それが観客の耳に届き、何かが起こり得ると予感させたのでしょう。逆に完全に無音にすることで、観客に拍手する時間を与えていたんですけどね。私にとっては本当に興味深い出来事でしたよ。辛うじて聞こえる音が、観客の映画体験に影響を与えるとは思ってもいなかったので。」
本作を愛して止まない筆者としては、ジャンキーXLによる圧倒的な迫力を持たせた音楽にも心を鷲掴みにされたが、ジョージ・ミラー監督が当時構想していた、サウンドのみを駆使したサイレント映画版も観てみたいと思うばかりだ……。
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Source: The Hollywood Reporter