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『アベンジャーズ』MCUを彩った、忘れられないセリフの数々 ─ 『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』刊行にあたって

『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』(KADOKAWA)

2021年3月31日(水)に、書籍マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』がKADOKAWAから発売される。

『アイアンマン』(2008)から『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)、「ワンダヴィジョン」(2021)「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」(2021)まで約13年。世界中の観客を惹きつける、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の魅力とはなんだろうか。多彩かつ個性的なキャラクター、目を見張るアクション、練り上げられたストーリーと演出……。それらが大きな理由であることは確かだが、“セリフ”もMCUの大切な骨格のひとつだ。

ヒーローの言葉は、世界中の人々を励まし、支えてきた。ヴィランの言葉は恐ろしくも残酷な真実に迫るようで、それがかえってヒーローの輝きを照らし出す。『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』は、そんなMCU作品の登場人物たちが紡いできた言葉を振り返る一冊だ。

THE RIVERでは刊行を記念して、訳者の上杉隼人氏による特別コラムを掲載。「言葉」という切り口で、改めてこれまでの歩みをたどり直してみよう。

『アベンジャーズ』MCUを彩った、忘れられないセリフの数々 ─ 『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』刊行にあたって/上杉隼人

この世界のあらゆる者がスーパーヒーローになれる

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)では、あらゆる者たちに機会が与えられている。そう、あなたにだってスーパーヒーローになれる可能性があるのだ。

ママはラッキーだね。あなたみたいに誰よりも強い子を授かった。お転婆隊長。
(キャロル・ダンヴァース『キャプテン・マーベル』)

ディズニープラス(Disney+)で配信中の「ワンダヴィジョン」にキャロル・ダンヴァースの親友マリア・ランボーの娘モニカ・ランボーが登場し、歓喜したマーベル・ファンも少なくないだろう。モニカは超能力を秘めていることも明らかになり、『キャプテン・マーベル2(仮題)』での活躍が期待される。

『MARVEL マーベル最強ヒロイン ファイルBOOK』(講談社、2019年7月刊)をご覧いただきたいが、マーベルには強力な女性ヒーローが数多く存在する。MCUフェーズ4では、そんな彼女たちの活躍を存分に楽しむことができるはずだ。

マリア・ランボー:もう一度、お嬢さんって呼んだら、 あそこに蹴り入れてやるから。
タロス:あそこってどこだ?
ニック・フューリー:おまえのケツ。
キャロル・ダンヴァース:あんたのケツ。
(『キャプテン・マーベル』)

MCUには女性蔑視もセクシャル・ハラスメントも存在しない。そんなことをすれば、強い彼女たちに痛い目に遭わされるだけだ。

ブラック・ライヴズ・マターの時代に

白人と黒人の対立。この問題をアメリカは今も解決できていないし、これによって国家は長く分断されてきた。昨年、2020年にはミネアポリスで白人警官数名によって無抵抗の黒人が窒息死する事件が起こり、「ブラック・ライヴズ・マター(BLM)」(黒人の命は大切)運動がアメリカのみならず、日本を含めて全世界に広がった。 

だが、MCUにはBLMの動きも皆無だ。あらゆる人種がスーパーヒーローとして活躍し、そんな彼らを誰もが頼もしいリーダーとして受け入れているからだ。

かつてないほど人間は対立するものであるという思い違いが現在いたるところに広がり、われわれの存在そのものが脅かされています。誰もが真実を認識しています。人間は分裂するものではなく、たがいにつながりあえるものであると。
困難の時代に賢者は橋をかけ、愚者は壁を積み上げます。ひとつの種族のように、たがいを受け入れる方法を見出さなければなりません。
(国王ティ・チャラ『ブラックパンサー』)

こんな時代だからだろうが、故チャドウィック・ボーズマン(1976~2020)演じるワカンダ国王ティ・チャラ/ブラックパンサーの言葉が我々の胸に強く突き刺さる。

つながりあうMCU映画

「みんなで集まれば何をしたいかすぐにわかる」と『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)を監督したジョー・ルッソは言う。彼はふたたび弟アンソニーとともに『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)のメガホンを取ることになった。

そのあと、僕らがしたいと思ったことがほかの映画のストーリーにどんな影響をおよぼすかどうか自問してみる。『あの映画ではどうなるか? この映画に何か少し入れられるか?』というふうに。ここから各映画のつながりを考えてみるわけだけど、何より大事なのは湧きあがってきたアイデアを形にしてみようとすること。なぜなら、そうしたアイデアはストーリーを作っているときに消えてしまうから大事にとっておかないといけない。ケヴィンはどの映画も精力的に制作を進めるけど、いつも後の映画のことも考えている。というのは、先のことを考えると、ふたつことがありうるからね。ひとつは、いま作っている映画に集中しないと、その映画が失敗してしまう。ふたつ目に、もしそんなことになれば、もう次の映画は作れなくなる。だからいつもケヴィンは『いまやってる映画に集中しよう。それができた時点で次の映画を心配しよう』という気持ちでいるんだ。
(『MARVEL 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密』すばる舎、2020年9月)

MCUは1本1本の映画製作に全力を注ぎつつ、シリーズ全体のつながりも常に考えている。現在、ディズニープラスで配信中の「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」にもそれはもちろん引き継がれている。

キャプテン・アメリカ:死ぬ覚悟でキャプテン・アメリカについてきてくれるか?
バッキー・バーンズ:断る。おれがついていく男はすごく怖いくせに逃げないブルックリンのもやし野郎だ。そいつについていく。
『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』

スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカの親友、サム・ウィルソン/ファルコンとバッキー・バーンズ/ウィンター・ソルジャーのあいだでも、同じような会話が交わされるかもしれない。

忘れがたい悪役のセリフ

負けるのは悔しいだろう。自分は絶対に正しいと思いたいだろうが、どうにもなるまい。
おそろしさでたちまちへなへなと頽(くずお)れる。
何のために戦う? こわいなら逃げてしまえばいい。どうしたって運命はやってくる。
(サノス『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』)

MCUの悪役のセリフも実に印象深い。

傷つくよな? だまされるのは。持ち上げられて、それが嘘だと知るのは。
(ロキ『マイティ・ソー バトルロイヤル』)

6月11日(金)から日米同時配信される「ロキ」で、人気俳優トム・ヒドルストン演じるロキがどんなセリフを聞かせてくれるのか、今から楽しみだ。

字幕のように楽しめる/日本限定のクールなカバーカット

3月31日にKADOKAWAから発刊される『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』には、MCUを代表するヒーローたちの忘れることのできない言葉ももちろんいくつも盛り込まれている。

アベンジャーズ。ぼくらはぼくらをそう呼ぶ。チームみたいなものだ。「世界最強のヒーロー集団」
(トニー・スターク『アベンジャーズ』)

おれがとんでもない間違いをおかすのはいつものことだ。どうせ最後にはなんとかなるだろう。
(ソー『マイティ・ソー バトルロイヤル』)

隣人がいなければ、隣人にやさしいスパイダーマンになれない。親愛なる隣人でいたいんだ。
(スパイダーマン『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』)

いよいよ正念場だな。
(ドクター・ストレンジ『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』)

ミスは許されない。やり直しは利かない。行く先はなじみの場所だが、何が起こるか予想できない。
気をつけろ。たがいに守りあうんだ。これは命をかけた戦いだ。
必ず勝つ。何を犠牲にしても。
(キャプテン・アメリカ『アベンジャーズ/エンドゲーム』)

本コラムに紹介したヒーローたちのセリフは、『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』にすべて収録されている。英語も併記したので(刊行にあたって、マーベル映画に詳しい翻訳者の桑名真弓さんに念入りに確認してもらった)、映画の字幕を観るように楽しめると思う。

カバーにも注目してほしい。原書とは異なり、日本限定でオリジナルカットがあしらわれている。これはほかでは見ることができないクールなものだ。

『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』(KADOKAWA)

コロナ禍の世界をアベンジャーズが救う

人種問題、女性蔑視、そしてコロナウイルスの感染拡大……。世界はかつてないほど壊れやすい状態にある。こんなときこそ、誰もがスーパーヒーローを求めたくなる。

わたしたちがいないと困るから。確かに、いま世界は無防備よ。そうしたのはこのわたしたち。でも、世界を守れるのもわたしたちしかいない。
(ナターシャ・ロマノフ『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』)

映画『ブラック・ウィドウ』は世界に先がけて日本で2021年4月29日(木・祝)に公開される予定だったが、米国公開が7月に延期されるとのニュースが3月23日(現地時間)に飛び込んできた。同日から米ディズニープラスにて「プレミア アクセス」として配信もされる予定だ。当初の予定から1年以上遅れての公開になるが、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』から約2年ぶりに、ついにアベンジャーズ映画を観ることができるのだ。

『ブラック・ウィドウ』とMCUのヒーローたちがコロナの不安を一掃し、世界に希望をもたらしてくれることを祈っている。映画館にアッセンブルする前に、MCUヒーローたちの活躍ぶりを確認するにあたって、本書『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』をご利用いただけたら、訳者としてはとてもうれしい。


訳者・上杉隼人氏のサイン入り『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』を、THE RIVERの読者3名様にプレゼントいたします。こちらをご覧ください。たくさんのご応募、お待ちしております。(賞品提供:KADOKAWA)

上杉隼人(うえすぎ・はやと)

翻訳者(英日、日英)、編集者、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書に『アベンジャーズ/エンドゲーム』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』『スター・ウォーズ』(全作、エピソード1~9)(いずれも講談社)、チャーリー・ウェッツェル、ステファニー・ウェッツェル『MARVEL 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密』(すばる舎)、ベン・ルイス『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』(集英社インターナショナル)ほか多数。2021年8月に『Star Warsライトセーバー大図鑑』をグラフィック社から刊行予定。

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THE RIVER編集部THE RIVER

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