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マーベル・ドラマ、削減へ「あまりにも多すぎた」 ─ 『サンダーボルツ*』でも反省「ドラマを観てなきゃいけないと思われた」

ケヴィン・ファイギ
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/35437565993/ Remixed by THE RIVER

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のテレビシリーズは、今後そのボリュームを減らしていくことになるようだ。作品の過剰供給が『マーベルズ』(2023)や『サンダーボルツ*』(2025)に与えた悪影響を、マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長が認めた。

現地メディア向けの記者会見に登壇したファイギ社長は、『アイアンマン』(2008)から『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)までの“インフィニティ・サーガ”で製作したのが約50時間だったのに対し、その後のマルチバース・サーガでは「半分の期間で100時間以上の物語を製作しました。あまりにも多すぎた」と告白。アニメーション作品まで含めると、そのボリュームは現時点で127時間に及ぶという。

「史上初めて、量が質を上回ってしまいました。インフィニティ・サーガの12年間は、“そんなことは絶対に起こらない”と言っていたのです。月に1本のペースで映画を作る気はなかったので、常に製作できる本数よりもキャラクターの数のほうが多かった。ところが突然、もっとたくさん作るようにという命令が下され、私たちは“えっ、もっと作るのか”と。」

ディズニーとマーベル・スタジオは最近、ディズニープラスのために作品数を増やしていた数年間を率直に反省している。事実として、マルチバース・サーガでは映画の興行収入がふるわない傾向にあり、ストリーミング作品も視聴者数が減少しているというデータがあるためだ。

ファイギ社長いわく、『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降は「実験」と「進化」がキーワード。そのことが『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)や『エターナルズ』、ドラマシリーズの成功作「ワンダヴィジョン」(2021)「ロキ」(2021-2023)につながったことは評価しているという。

「私は“実験”と“進化”を誇りに思っており、今後も変えるつもりはありません。たとえ成功しても、実験とリスクなくして価値はないからです。一方で、ディズニープラスのために注力したのは“拡大”でした。この拡大こそが価値を損なってしまった。みなさんに、“前は楽しかったのに、今は全部知っていなきゃいけないの?”と思わせてしまったのだと思います。」

特に大きな影響を感じたのが、『マーベルズ』だった。ドラマシリーズからミズ・マーベルとモニカ・ランボーが登場したが、ファイギ社長は「“この2人は誰なんだろう? テレビに出ていたのかな、じゃあ見なくてもいいや”という感じになったのだと思う」と分析する。

『サンダーボルツ*』についても同様だ。「とても良い映画だと思います」と完成度には満足しているものの、「知名度の低いタイトルだし、テレビからの登場人物も多かった」と振り返った。

「観客のなかには、“この人物を理解するには別の番組を見ていなければいけないんだ”と感じた人もいるはずです。実際に映画を観ると、必ずしもそうではないし、私たちもそうならないように映画を作っています。けれども、そのことを観客に理解してもらわなければならないのです。」

現在、マーベル・スタジオは解決策として映画・テレビの製作本数を減らしている。映画は年平均2~3本のペースで、「1本しかない年もあれば、3本ある年もある」が、テレビシリーズは「実写作品は年間1作品まで減らす」と宣言。実際にただいま進行中のドラマシリーズは「デアデビル:ボーン・アゲイン」とヴィジョンの単独ドラマ「ヴィジョン・クエスト(原題)」のみだ。

また、ドラマシリーズと映画の関係も希薄で、『サンダーボルツ*』のクライマックスで描かれた展開も「デアデビル:ボーン・アゲイン」シーズン2にはまったく影響しないという。『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』にジョン・バーンサル演じるパニッシャーが登場することが稀有な例外だ。

「テレビシリーズはテレビシリーズとして、というところに戻していいと思います」とファイギ社長。これはNetflixで「デアデビル」や「ジェシカ・ジョーンズ」などの“ディフェンダーズ・サーガ”が展開されていた時代(当時はマーベル・スタジオではなく、すでに廃止されたマーベル・テレビジョンが製作を担っていた)への回帰宣言だ。

▼ マーベル・シネマティック・ユニバースの記事

Source: Variety, Deadline, The Hollywood Reporter

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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