MCUドラマ、今後は複数シーズン製作に注力 ─ 従来のスタイルを撤回、「既存のテレビ界に近い」製作体制へ

マーベル・スタジオが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)におけるテレビシリーズの製作方針を大幅に改めることがわかった。現在は「ロキ」(2021-)「ホワット・イフ…?」(2021-)を除き、全作品が1シーズン限定のリミテッドシリーズとして製作されてきたが、今後は各シリーズで複数のシーズンを製作する意向。また、映画から継承した“MCUスタイル”を撤回し、より既存のテレビドラマに近い作り方を採用するという。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)を経て、マーベル・スタジオは「ワンダヴィジョン」(2021)からテレビシリーズに進出。ひとつのフランチャイズとしては異例のハイペースで作品を発表し、約3年間で累計50時間以上を送り出してきた。しかしながら、費やされたコストに対して批評家や視聴者の評価は伴わず、ファンの間でも「数が多すぎてついていけない」との声が聞かれていたほか、内部のトラブルも続いていたのである。
これまで“MCU流ドラマづくり”の基本は、ハリウッドにおけるテレビドラマ製作の王道である、企画から完成までの全段階を統括する「ショーランナー」を立てず、その代わりに脚本家チームを代表する「ヘッドライター」を擁するという方法だった。MCUの長編映画がそうであるように、あくまでもマーベルの幹部がシリーズを統括し、不具合があればポストプロダクション(撮影後作業)の再撮影・再編集によって問題を修正しようと試みてきたのである。
しかし、米The Hollywood Reporterによると、マーベル・スタジオは今後ショーランナーを起用し、同じく従来は実施していなかったパイロット版の製作・評価に取り組むという。通常、テレビドラマはパイロット版を製作し、その結果次第でシリーズ化を決定するのだが、マーベル・スタジオはこのプロセスを省略し、いきなり巨額の予算を投じてシリーズの製作に突入する方法を採っていた。
方針変更の一因は、「シー・ハルク:ザ・アトーニー」(2022)の脚本・製作総指揮を務めたジェシカ・ガオが、コロナ禍による不測の事態を受け、ポストプロダクションに至るまでシリーズの創作に関与したことで、マーベルがショーランナーを置くメリットを認識したことにあったという。監督のカット・コイロが就任した後、ガオも一時は「シー・ハルク」の第一線を離れていたため、ヘッドライターとしては稀に見る形での参加だった。
またマーベル・スタジオは、テレビ部門を専門的に監督する幹部の雇用も検討している。現在テレビ部門を統括しているブラッド・ウィンダーバウム氏は、「私たちはマーベルの文化と、従来のテレビ文化を融合させようとしています。大切なのは素晴らしい原作に敬意を払いつつ、いかにテレビで物語を語るか。映画とは異なる形式なので、配信やテレビに尽力する重役が必要です」と語った。
これまでの“MCUスタイル”について、関係者からは「テレビは脚本家中心のメディアだが、マーベルの場合はマーベル中心のメディアだった」「“全てをポストプロダクションで直せばいい”という態度は、監督を軽視しているように感じられる」との証言も出ていた。製作のありかたを一新し、スタッフの役割を整理して、ここからMCUドラマは再出発を図ることになりそうだ。
新体制のもと、今後のMCUドラマは「ロキ」のように複数シーズンの製作にも注力する。リミテッドシリーズにこだわるのではなく、時間をかけてキャラクターを描くことで、今後のクロスオーバーへの助走としてではなく、きちんと視聴者との関係を構築する構えだ。ウィンダーバウム氏は「キャラクターを好きになってドラマを観てもらいたい。それがうまくいけば、『アベンジャーズ』や他の作品に繋がる、彼らが他の映画に登場するという問題を超えてくれるはず」と期待を寄せた。
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Source: The Hollywood Reporter