『怪盗グルーのミニオン大脱走』挿入曲を大解説!新旧ヒットナンバーを織り交ぜる理由とは

『怪盗グルーのミニオン大脱走』は『怪盗グルー』シリーズ3作目(『ミニオンズ』を含めるなら4作目)にして、安定のクオリティーを届けてくれる佳作である。

今回、グルーには双子の兄弟、ドルーがいたことが判明。反悪党同盟を解雇されて落ち込むグルーは、ドルーと組んで悪党のバルタザールから盗まれた宝石を取り返そうとする。

怪盗グルーのミニオン大脱走

(C) Universal Studios

ハラハラドキドキのアクションの連続、愛らしいグルーの子供たちやミニオンズなど見所の多い本作だが、『怪盗グルー』シリーズ特有の音楽ネタや小ネタも満載。しかも、本作ではあえて「流行ネタ」と「懐かしのネタ」を代わる代わる登場させている節がある。

なぜなら、本作のテーマは「前に進むこと」だから。悪党を止めて正しい行いをしようとするグルー、母親として子供たちに認められたいルーシーの葛藤が丁寧に描かれていく。一方で子役時代の人気にすがり、現在を否定する悪党バルタザールの姿が対比されているのだ。

そんな新旧ネタの対比をいくつか抜き出してみた。本作のシャレた演出を知れば、何度も見返したくなるかも? 

【注意】

この記事には、映画『怪盗グルーのミニオン大脱走』のネタバレが含まれています。

怪盗グルーのミニオン大脱走

(C) Universal Studios

序盤より “BAD”→“JUMP”→“THE CUP PF LIFE”

序盤、バルタザールと宝石をめぐって戦うグルーたち。バルタザールのファッションは『パープル・レイン』期のプリンスやマイケル・ジャクソンそっくりで、肩パットをいじられもしている。そして、マイケルの“BAD”(1987)に乗せてダンスしながらグルーを翻弄するのだ。

また、バルタザールはキーボードで特定のメロディーを奏でることにより威力を発揮する武器を装備している。このとき奏でているのはヴァン・ヘイレン“JUMP”(1984)のイントロ。要するに、80年代節全開である。

戦闘直後、のん気にビーチで遊んでいるミニオンたちが映し出される。DJブースからミニオンが流しているのはリッキー・マーティンの“THE CUP OF LIFE”(1998)。こちらも懐メロではあるが、今時のクラブでも普通にかかっているアンセム曲。何より、一人きりで80年代ディスコを楽しむバルタザールと、ビーチ全体をアゲアゲにしているミニオンたちが対比されているのだ。

中盤より “FREEDOM”→“PHYSICAL”→POVホラー

成り行きで刑務所に入れられてしまったミニオンたち。仏頂面しながら受刑者の中で幅を利かせていくミニオンたちのBGMはファレル・ウィリアムズの“FREEDOM”(2015)。元々はメッセージ性の強い楽曲だが、ここでは単純に自由を求めるミニオンたちの心象が反映されている。

するとシーンが切り替わり、バルタザールがアジトでエアロビに勤しんでいる。BGMはオリビア・ニュートン・ジョンの“PHYSICAL”(1981)。70年代は爽やかなラブソングを歌っていたオリビアだが、80年代は時代に便乗してディスコ化(というよりエアロビ化)していた。ファレルのヒップホップ的なビートがキレキレでかっこよかっただけに、80年代商業音楽特有の間の抜けたアレンジがおかしく聴こえる。

すると、今度はユニコーンを探して森にやって来たアグネスとイディスのシーンに。二人が行っているのは『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999)に連なるPOVホラーのパロディ。登場人物が自分たちで撮影している体のあれである。現在では低予算ホラーの定番スタイルになっているので、幼い二人が真似しても不思議ではない。 

後半より “DOOWIT”→モリー・リングヴォルド

遂に刑務所を脱走することにしたミニオンたち。脱走シーンに流れているのはファレル・ウィリアムズの新曲“DOOWIT”だ。アフロ・ビートっぽいアレンジがメチャクチャかっこいい。

次のシーンではバルタザールのアジトに侵入したグルーとドルーが描かれる。バルタザールは寝言で「モリー・リングヴォルドとプロムに!」と口にする。モリー・リングヴォルドは80年代の学園映画のスターだった。ジョン・ヒューズが関わった『すてきな片思い』(1984)、『ブレックファスト・クラブ』(1985)、『プリティ・イン・ピンク/恋人たちの街角』(1986)が代表作だが、アイドル路線から演技派路線への転向に失敗し、90年代以降は代表作を残せていない。ある意味、バルタザールと似た境遇の女優である。

このように、細かいネタを散りばめて本作は未来に進みたがっているグルーたちと、過去に戻りたがっているバルタザールの違いを明確にしていく。他にもユニークなネタはあちこちで使われているので、劇場で確かめてみてほしい。

About the author

京都在住、農業兼映画ライター。他、映画芸術誌、SPOTTED701誌などで執筆経験アリ。京都で映画のイベントに関わりつつ、執筆業と京野菜作りに勤しんでいます。

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