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【インタビュー】『マトリックス レザレクションズ』キャリー=アン・モスのトリニティー再訪 ─ メンタルの試練は太極拳で撃破

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

衝撃の完結から18年。世界中に大興奮をもたらしたSF超大作『マトリックス』シリーズの最新作『マトリックス レザレクションズ』には、おなじみの顔ぶれが帰ってくる。中でも、主人公トーマス・アンダーソン/ネオを演じたキアヌ・リーブスと、ネオと最後まで運命を共にしたトリニティー役のキャリー=アン・モス、2人揃っての復帰には往年のファンも目頭を押さえたはずだ。

もっとも、『レザレクションズ』に登場するネオとトリニティーは、かつての関係性にないことが予告編では示唆されている。一体どういうことなのか皆目見当もつかないが、とにかく2人の再会には、世界中のファンが今か今かと待ちわびていることだろう。

このたびTHE RIVERは、トリニティーを演じたキャリー=アン・モスと取材を行う貴重な機会に恵まれた。Zoomを介して行われた取材では、3部作当時から全く変わらない笑顔をモニター越しに見せてくれたキャリー=アン・モス。『マトリックス』の世界に再び足を踏み入れた心境や、久々に現場で再会したというキアヌ・リーブスとの共演、そしてきっと劇中でもたくさん見せてくれるであろうキレッキレのアクションへの挑戦など、内容盛りだくさんに語ってくれた。

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

トリニティーの「新たな一面を見ることに」

── 『マトリックス レザレクションズ』が製作されることを初めてお聞きした時、どう思われましたか?あなたは脚本を絶賛されていましたが、どのような点が響いたのでしょう。

『マトリックス』を(また)作るというアイデアには本当にワクワクさせられました。「この先百万年待っても絶対にない」と思っていたので、私にとってはサプライズのような知らせでした。初めて脚本を読んだのは、ラナ(・ウォシャウスキー監督)のお家で、そこにはキアヌをはじめ何人かが集まっていました。内容を事前に教えてもらえなかったこともあって、ワクワクしながら読み進められましたね。その時は、良い意味でショックを受けました。自宅に帰ってからは、自分なりに少しずつ咀嚼していって、トレーニングもすぐに始めました。今回の道のりでは、どの瞬間も充実していて、挑戦の連続でもありました。スタントをはじめ肉体的なことにも挑戦しましたが、心の底から楽しめました。

── 予告編で見られるトリニティーは、3部作から全く違う状況にあるみたいですし、とにかく謎に包まれていることばかりです。『レザレクションズ』での彼女について、可能な範囲で教えていただけますか?

言えないんですよ……本当に素敵な質問なんですけれど、内容を言ってしまったら観客の皆さんにとってネタバレになってしまうので……。ダメなんです。ただ、物語は間違いなく楽しいし、美しいです。たくさんのユーモアもあります。皆さんはトリニティーの新たな一面を見ることになりますし、スクリーン上でキャラクターたちが再会するのは観ていて楽しいと思います。私自身も演じていて楽しかったですし、映画を観た時も楽しめた。だから皆さんも楽しめるといいな。

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

メンタル的な試練、克服は太極拳で

── (THE RIVER)最後にトリニティを演じてから20年が経ちます。再演する上で最もチャレンジングだったことは何でしょうか?

大変だったことを含めて、今回は全てが楽しくて仕方なかったです。これが試練という言葉で表現できるものなのかは分からないですが、トレーニングは大変でしたね。身体づくりや、準備できる状態まで持っていくことには数ヶ月程かかったと思います。“こんなにやっているんだから、しっかり撮影もできるはず”なんて思いながらトレーニングをしていたんですけど、やはり肉体的に30歳の時とは違うなと感じました。ただ、50代の今、そんな機会を与えていただけるなんて素敵なこと。スタントの中で大変だったことも何個かあって、メンタル的にも結構辛かったです。個人的に、挑戦することに楽しみを感じる方なんですけどね。特にメンタル的な試練を乗り越えることは好きです。

── トレーニングには数ヶ月かかったとお話されていましたが、具体的にはどのような格闘術を学びましたか?久々にキアヌと一緒にアクションをしてみて、いかがでしたか?

彼は本当にスゴいんです。格闘術の才能を授かった方で。上手いだけじゃなくて、しっかりと愛を込めますし、敬意も払うんです。そんな彼を見て、いろいろと学ばせていただきました。格闘技のことを大事にされているんですよ。私はどちらかといえば、映画の(型にはまった)格闘しかできないので。とにかく、今回も基本から始めました。キアヌは自分が学ぶコレオグラフ(振り付け)の全てに全身全霊を捧げるマスターのような存在で。私自身も楽しめました。

今回新しく、リラックスするためにトレーナーの方と太極拳をやりました。映画の中で必要だったわけではないんですが、そうすることで緊張感のような心の乱れを落ち着かせられて。エネルギーが身体を流れていく感覚もあって、気に入っていたので、食後のデザートみたくトレーニングの最後にやっていました。今回挑戦したスタントのコレオグラフは全部楽しく出来ました。今でも、スーパーのレジ待ちの時なんかは無意識に身体が動いてしまうほどで(笑)。

── 肉体的にも20代の頃に戻っていくような感覚だったんですか?

精神的にはそうだったかもしれないです。でも今回は間違いなく大変でした。練習の時は録画をするんですけど、やっている時は“良い感じに出来た”って思えても、実際に確認すると全然カッコよく映らなくて……(笑)。よく見せるには、本当に時間がかかるんですよ!

 マトリックス レザレクションズ(ロングリード用)
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

「ダンスをしているような」自由な撮影

── (THE RIVER)シリーズ3部作では、ウォシャウスキー姉妹2人で監督を務めていましたが、今回はラナ監督1人での挑戦となりました。3部作を知るあなたから見て、演出の仕方や考え方に何か変化はありましたか?ラナ監督との会話で何か印象的なことは?

彼女とはいろんなことを話しましたから、覚えていないんですよね(笑)。昨日夫と話したことすら覚えていない私なので(笑)。ラナはとにかく才能がある方で、物語の作り方から成り立たせ方まで、全てがクリエイティブなんです。

私、ラナと一緒に映画を観ている時に、彼女がどう理解しているのかを観察することが好きなんです。本当に聡明な方で。私は感覚派の人間です。ラナは感覚の部分に加えて、知的さ、分析する能力を持ち合わせてもいる方なんです。まさに最強の組み合わせを彼女は備えている。

彼女の演出スタイルはすごく美しいと思います。とても流動的で、自由さが織り交ぜられていて。全てが整った後に“アクション!”と言ったら、しばらくカメラを回したまま、みたいな。カメラにつきっきりの時もありました。シーンの最中でも何かアイデアが浮かべば、彼女はそれを聞いてくださる。とても楽しかったです。1作目の時もクリエイティブではあったんですけど、その時は体系的だったというか。今回はまるでダンスをしているかのように、自由に撮影が出来ました。

── ラナ監督と一緒に映画を観たとおっしゃっていましたが、『レザレクションズ』の参考用として一緒に観た作品、または彼女から渡された作品はございますか?

特に無かったですよ。みんなで何作かは一緒に観ましたけど。一緒に映画を観なくても、後でその作品について話した時には、彼女の解釈に圧倒されるばかりで。思っていたことが同じでも、自分だと上手く言葉に落とし込めないこともあったから、彼女はすごいなと。

 マトリックス レザレクションズ(ロングリード用)
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

キアヌとの共演、今後のキャリア

── キアヌ・リーブスと久々に共演されてみていかがでしたか?

すごく楽しかったですし、彼との仕事は本当にラクで。演技だけじゃなく、オフの時もセットで一緒に座って楽しい時間を過ごしました。彼はすごく面白くて、チャーミングです。面白い話で笑わせてもくれて。プロフェッショナルな方でもあって、仕事は常に一生懸命。彼には刺激を受けました。

── 撮影現場で印象深いエピソードなどは?

私自身、具体的なエピソードで記憶することがあまり得意ではなくて、どちらかというと肌で感じるタイプなんです。彼との仕事では、気分は毎日絶好調でした。1日1日を噛み締めながら、彼と時間を過ごしたり、キャラクターを演じていました。こういうことって何度もあるわけじゃないですからね。感謝しています。

── 『マトリックス』の完結後から彼とは親交があったのでしょうか?

親交自体はありましたよ。ただお互いにはそれぞれの人生があるわけなので、連絡を取っていながらもたくさんのことが過ぎ去り、変わったのはたしかです。それでもずっと会っていなかったような感じは全くしなかったですね。

 マトリックス レザレクションズ(ロングリード用)
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

──『マトリックス』シリーズは世界中の映画ファンから今も愛されています。どのようなところが魅力的なんだと思いますか?

あまりにも近い存在なので、魅力について自分で答えるのは難しいですけれど、私も映画やトリニティー、ネオに対する愛は皆さんと同じように持っています。皆さんにとっての『マトリックス』がどんな存在なのかも理解できます。ファンの方々が『マトリックス』からどう影響されているのかには常に興味があって、今作でも皆さんがどう愛してくださるのかが楽しみです。

── 劇中のセリフから革新的な映像まで、『マトリックス』は世界中に絶大な影響を与えてきました。これを踏まえた上で、『マトリックス』があなたのキャリアに与えた影響を教えて下さい。『マトリックス レザレクションズ』によって、これからのキャリアはどう進んでいくと思いますか?

私のための扉を開いてくれたのは、間違いなくこの作品のおかげです。ラナとリリーが私をトリニティー役に選んでくださったその瞬間から、私の人生は変わりました。彼女たち2人がその機会を与えてくれたことに、これからずっと感謝し続けるつもりです。これからのキャリアについては予想もつきません。考えないようにしています。これまで素敵な人生を送ってこられましたし、演技でご飯を食べていくことができてラッキーだと思っていますから。今も大好きな演技で。

他のどの作品よりも、今作の全てが愛おしかったです。後世にも残って、多くの人や物事に影響を与える作品に参加できることってめったにないですよね。だからこそ、今を大切に生きるようにしています。今はこの作品(『レザレクションズ』)のことだけを考えていて、「次は何だろう?」と考えないようにしているんです。

『マトリックス レザレクションズ』は2021年12月17日(金)より全国公開。

Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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