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【レビュー】『マトリックス レザレクションズ』で再提起される「運命の選択」 ─ 結末に込められた復活の意味

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
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「センス8」で結実した「運命の選択」というテーマは、『レザレクションズ』で見事に応用されている。例えば、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が演じるモーフィアスは、“運命の選択”を象徴する最たるキャラクターだ。本作の予告編が初めて公開された時、ネット上では、「彼が本当にモーフィアスなのか、そうではないのか」という2択の議論が白熱した。しかしラナ監督が本作で提示していることは、アイデンティティの固定化ではない。力点は“モーフィアスであろうとするかどうか”、つまり運命を自ら掴むかどうかに置かれているのだ。

この『レザレクションズ』における「運命の選択」は“色”を通しても見事に表現されている。『マトリックス』3部作では、仮想空間内に入ったネオ達は現実とは違うスタイリッシュな姿に変身したが、メンバー皆のスタイルは同系統だった(※)。一方『レザレクションズ』では、予告編にも映し出されている通り、モーフィアスが派手な色のスーツを着れば、ジェシカ・ヘンウィック演じるバッグスはブルーヘアーと、色における多様性が目立つ。“色”は時として、意思表示の手段になる。その意味でも『レザレクションズ』は、3部作と比べて風景が鮮やかなのだ。

(※)ネブカデネザル号の女性クルー、スウィッチのみ、マトリックス内で白スーツを着用していた。スウィッチは後にトランスジェンダーの象徴であったことが監督から明かされている。

結末に込められた復活の意味

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

また本作は、ラナ監督のフィルモグラフィー史上「最も現実的なフィクション作品」としても評価すべきだ。ウォシャウスキー姉妹が日本人のトップクリエイターとタッグを組んだ短編オムニバスアニメ「アニマトリックス」(2003)では、渋谷のスクランブル交差点を行き交う人々が形成する軌跡がマトリックスコードに置き換えられていたが、こうした身近な現実を虚構化してしまう手法は、『レザレクションズ』で意表を突かれるようなやり方で踏襲されている。我々が知っているアレが、アノ人物がそのように描かれるのか、というように。『マトリックス』のファン、あるいは映画ファンであればピンと来るはずだ。

これまでに列挙した演出や仕掛けを通して、ラナ監督は観客に“気づき”を促している。鑑賞後には「自分の運命は、今の道で本当に正しいのか」と自問したくなるだろう。その結果、心に揺らぎが生じた時は決断と行動が求められることになるわけだが、これは本編でも重要なワンシーンとして描かれている。

最後に強調したいのは、ラナ監督は『マトリックス』3部作から書き換えた地図を『レザレクションズ』で完成させていないということ。つまりエンディングのことを指すわけだが、『マトリックス』3部作の続編として鑑賞すると、衝撃的な結末が待っているはずだ。しかし、それこそ、ラナ監督が現代で『マトリックス』を復活させた理由なのだとジワジワ実感させられる締めくくりになっている。それぞれの解釈で、ネオとトリニティーの新章を見届けてほしい。

マトリックス レザレクションズ』は公開中。

Writer

SAWADA
SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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