目指したのは「日本のセルアニメ」的表現 ─ Netflix『ネクスト ロボ』VFX手がけた日本人アーティストに聞く愛とこだわり

カナダ上空を流れる雲を見上げて、石垣は人と違った見方をしていた。「”あの雲、どうやって作ろうかな”って考えちゃいますね。どういうパラメータを振ればいいのかなって(笑)。職業病ですね。」
石垣 聡、タンジェント・アニメーションでVFX製作を行う。爆発や煙、そして雲など、シミュレーションが必要となるVFXを得意とする。Netflixオリジナル映画『ネクストロボ』では、リードVFXの担当として、プロジェクト初期のエフェクト雛形製作から一貫した作業を行った。
『ネクスト ロボ』は、孤独な少女メイと勇敢でピュアな戦闘用ロボット7723の絆と冒険を描いた長編アニメーション映画。2018年9月7日より全世界独占配信となった。THE RIVERでは、この作品を彩る様々なエフェクトを製作した石垣 聡氏に話を聞いた。

CGで日本的なセルアニメ目指す挑戦
たとえば「爆発」ひとつ取っても、その表現方法は様々だ。『ネクスト ロボ』ケヴィン・アダムスとジョー・ケイサイダー監督の意向を汲み、エフェクトの視覚的な方向性を精密化した石垣氏は、「最初に見せられた資料が、80年代の『マクロス』の爆発シーンでした」と振り返る。
「監督たちの要望は、日本的な”セルアニメ”の表現でした。『マクロス』初代TVシリーズの、ミサイルのトレイルが何十本もあって、そこらじゅうで爆発が起きているような映像。これをどうやってやろうか(表現しようか)と。」
「とにかく『マクロス』のリファレンスが多かった」と語る一方で、『ネクスト ロボ』製作では実写と変わらぬ表現を目指すという指針があった。「爆発なども、物理的に正しく成立していないと、キャラクターなど他のものと上手くレンダリングできない。紆余曲折を経て、どちらかと言えばリアリスティックになったと思います。ただ、ミサイルのトレイルなどは監督さんたち(日本のセルアニメ的な表現にしたいという意向)に近づけた。」
こだわりは、流体力学に基づいたフォトリアリスティックな表現と、デフォルメされたアニメ的な表現のバランス。「3Dのソフトウェアでレンダリングするので、物理的に正確である必要がある。見た目的にはフォトリアルにするけれど、動きや形でアニメっぽさを表現しようと。」
この苦労のおかげで、クライマックスのバトルシーンが光った。ハイウェイでのチェイスシーンを真っ先に手がけたことで、「何が足りていないか、何を直すべきか、どんな機能が必要か」が明確となり、他部署(ソフトウェア・ディベロップメントなど)との連携の確度が上がったという。
クリエーターとして最近関心した表現は『機動戦士ガンダム サンダーボルト』(2017)のビーム表現、『機動戦士ガンダムUC』(2016)の爆発表現。「気になるのは、やっぱり爆発とか煙ですね。CGだと『インターステラー』(2014)は良かったですね。爆発はないんですけど、かなり上手に作られているなと。ちょっと昔ですが『インセプション』(2010)のCGも。街が折り畳まれていくシーンはCGを上手く使っているなと思いました。」