『最後のジェダイ』真のエースパイロット、ナイン・ナン大特集 ─ 映画で語られぬ歴戦物語と知られざる裏話【我が偏愛のSWクリーチャー】

お久しぶりの『我が偏愛のスター・ウォーズ・クリーチャー』シリーズ。ネタ切れを恐れるあまり、小出しにしている間にシリーズの存在自体を忘れてしまいそうになっていましたが、最新作スター・ウォーズ/最後のジェダイ』も公開となり、「今こそあのキャラを扱わなければ!」と意味不明の義務感にかられ、こうしてキーボードを急ぎ叩いている次第でございます。

そんなどうでもいいことはさておき、本予告編を見る限り何やらダークな展開が予想される『最後のジェダイ』(編注:本記事は『最後のジェダイ』公開前に執筆されたものです。)、旧三部作やプリクエル三部作の傾向からしても、トリロジー二作目は「悪」がその勢力を強めるストーリーになるのではというのが大方の見方です。予告編でも各キャラクターの重苦しいモノローグが大部分を占める中、ポー・ダメロンが超かっこいい台詞を呟いて一抹の希望を感じさせています。


日本語字幕では簡潔に意訳されてしまっていますが、曰く「We are the spark that will light the fire, that will burn the first order down.(俺たちは炎を照らす火の粉だ。その炎はファースト・オーダーを焼きつくす)」。さすがエースパイロット、『最後のジェダイ』でも頼んますよ!と、素直に言いたいところですが、ちょっとお待ち頂きたい。製作陣の皆様方、ポーさんをまるでレジスタンス軍を代表させるかのような扱いですが、パイロットとしての能力、戦歴、レイア将軍の信頼、そのどの項目においても件のポーさんを上回るパイロットがレジスタンス軍にいるのを忘れてはいませんか?そう、今回ご紹介するのは惑星サラスト出身のサラスタン人パイロットにしてレジスタンス真のエース、ナイン・ナン(ニエン・ナン)その人です。

真のエース、ナイン・ナンとは

「誰それ?」なんて思っちゃった方に説明させて頂くと、ナイン・ナンというのはですね、実写映画では旧三部作『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)にて初お目見得したキャラクターの名前です。大きなおにぎり形の頭部にくすんだアイボリー色の肌、つぶらな白目のない両眼、魚類を思わせる下顎部と、一度見たら忘れられない外見を持つエイリアンですが、同作においてのクライマックス「エンドアの戦い」で、ランド・カルリジアンの副操縦士としてミレニアムファルコンに搭乗、超兵器デス・スターⅡの心臓部の破壊に成功しています。

銀河帝国軍VS反乱同盟軍による宇宙戦争の趨勢を反乱同盟軍勝利へ決定づけた巨大な戦功ですが、レッド、ゴールド、二つのスターファイター中隊が参加したデス・スターⅡのコア破壊作戦において、たった二機しかいなかった生還機のうちの一機を操っていたという事実が、作戦の難易度と、生き残ったクルーの優秀さを物語っています。

そして30有余年の時は流れて『フォースの覚醒』(2015)、大方の旧キャラ、旧設定が刷新される中、カラマリ族のアクバー提督と並んでまさかの再登場。老兵は死なず、とばかりにまたしてもラストの戦闘機バトルにパイロットとして参戦、見事作戦を成功に導き、無事生還しています。実写映画で確認できる戦歴だけでも、彼こそがエースと断ずるに躊躇はありませんが、このナイン・ナン、『フォースの覚醒』に合わせてリリースを開始した小説・コミックにて映画で語られなかったエピソードが次々と明らかになりました。公式に正史(カノン)と認定されている、映画では語られることのなかったナイン・ナンの銀河を股に掛けた活躍を以下かいつまんでご紹介します。

『スター・ウォーズ』ナイン・ナン 歴戦物語

ナイン・ナンがスターウォーズの歴史年表に初めて姿を現すのは、『新たなる希望』(1977)におけるヤヴィンの戦いのすぐ後です。デス・スター(デス・スターⅠ)により破壊された惑星オルデラーンの難民を各地で救助して回っていたレイア姫が惑星サラストのオルデラーン居留地に赴いた折、帝国軍に発見され難民ともども窮地に陥ったところ、そのピンチを自らの宇宙船「メルクローラー号」で救ったのが当時やり手の密輸業者としてサラストで名を馳せていたナイン・ナンでした。

その功績を讃えてレイア姫自ら、養母プレハ・オーガナの形見である玉髄のネックレスを彼に贈っています。またその直後、ミッション中に帝国軍に捕まってしまったレイア姫を再び救い出したのもまたナンで、その際インペリアル級スターデストロイヤーを武装の乏しい宇宙船で手玉に取る手練れっぷりを見せつけています。(出典:ヴィレッジブックス刊『スターウォーズ:プリンセス・レイア』)その後、反乱同盟軍の任務で故郷サラストに戻っていたナンでしたが、『エピソード5/帝国の逆襲』(1980)で描かれたホスの戦いの後、反乱同盟軍本隊へ合流します。そして総力戦「エンドアの戦い」の準備のために立案された、レイア姫自らが参加する危険な陽動作戦「イエロー・ムーン」にチームの要として指名され、自機メルクローラー号と共に参加、数多の修羅場を乗り越え、愛機を失いながらも任務を成功させています。レイア姫がナンを指名した際、あのアクバー提督が「賢い選択」と賞したことからも、この時点でナンの名声は反乱同盟軍中に知れ渡っていたことが判ります。(出典:講談社刊『反乱軍の危機を救え! レイア姫の冒険』)

そして誰もが知るエンドアの戦い(『エピソード6/ジェダイの帰還』)を経て、なおしぶとく暗躍する帝国軍が惑星ナブーを侵略した際、たまたま(笑)ナブーを訪れていたレイア姫が反攻作戦を率いたのですが、このナブー防衛戦においてもランド・カルリジアンと共にいちはやくレイア姫の救援に駆け付け勝利に導いたのが誰あろうナイン・ナンでした。(出典:ヴィレッジブックス刊『スターウォーズ:砕かれた帝国』)やがて、新共和国はファースト・オーダーの台頭を許し、新共和国の平和主義と袂をわかったレイア姫は、将軍として私設レジスタンスを組織するわけですが、ナイン・ナンもこれに付き従います。そして『フォースの覚醒』に至る、というわけです。

ナイン・ナン裏話

ナイン・ナン

©THE RIVER

かいつまんでも、かくも輝かしきナイン・ナンの戦歴と驚くべき生還率。何よりエピソード4から最新作まで、戦い続けるレイア姫の活躍の裏には常に彼女を支えナイン・ナンの存在があったことを初めて知る方も多いのではないでしょうか。まさにレイアの懐刀。ポー・ダメロンが優秀なパイロットであることに疑う由はありませんが、どちらがより多くの戦いを経験し、どちらがよりレイア姫との結びつきが強いか、もはや言を連ねるまでもないでしょう。え?『フォースの覚醒』オープニングロールで、ポー・ダメロンがレイアの「most darling pilot (最もお気に入りのパイロット)」だって言ってるって?これはあれです、英語特有の表現でone of themってことだと思います。「most(最も)」が一杯いるんですよ連中は。そういうことにしといてください。

もとい!ナイン・ナンがレジスタンスが誇る最高戦力の一人だってことを再認識して頂いたところで、ここまで読んで頂いた読者の皆様にとっておきの(大丈夫か)ナイン・ナン裏話をご紹介致します。

 

演者、台詞と名の由来

まず演者について。『ジェダイの帰還』のキャスティングをつぶさに見ていくと、ナイン・ナン役として何故か3名ものキャストがクレジットされています。リチャード・ボーンヒル、マイク・クイン、そしてキプサン・ロティチ。この理由は、当初このナイン・ナン、セリフもない背景にいるだけのクリーチャーとして造形されました。ところがマスクの造形に目を留めたジョージ・ルーカスが、ランドの副操縦士としての起用を決意、クリーチャー造形の責任者フィル・ティペットに意向を伝えます。

ところがこのナイン・ナンのマスク、前述のとおり台詞がない予定でしたので、口周りが喋れるように設計されていませんでした。そこでワイドショットでは、既に作ってしまったマスクをリチャード・ボーンヒルが身に着け彼に扮し、ミレニアム・ファルコン操縦席の場面では、パペット操者のマイク・クインが、作り起こしたナンのハンドパペットを操ることになりました。

そして、ランド・カルリジアンとの会話、ナイン・ナンの声をケニア人留学生であったキプサン・ロティチがあてています。ちょっとスター・ウォーズに詳しい方でも、ナンの喋る言葉は宇宙人ぽい適当な音声だと認識されているのではと想像しますが、あの「ンニャンニャンニャ」という台詞(正確には‘Atirizi inyui mwi hau inyouthe ukai haha,” とか発音してるらしいです)は、ケニアのキクユ族の言葉で話されているものです。ざっくり翻訳すると、「あんなとこで何してるの?」「(ランドの台詞を受けて)みなさん、こちらへ来てください。」と言っているらしいです。『エピソード6:ジェダイの帰還』公開当時、ケニアの映画館ではこのシーンで笑いが起こったという微笑ましいエピソードが残っていますちなみに、マイク・クイン、キプサン・ロティチ両氏は、『フォースの覚醒』でもナイン・ナンを演じられています。

そしてもう1つ、ナイン・ナンというネーミングについて。これはナンが名もないクリーチャーであったころ、マスクの入れ物に「Number Nine」と記載されており、そこから取られたものです。よってナイン・ナンを日本語で「ニエン・ナン」と表記する方も多いのですが、個人的には「ナイン・ナン」が正しいのではないかと考えます。

いかがでしたでしょうか。長文になってしまいましたが、筆者としては数あるスター・ウォーズクリーチャーの中でも最もお気に入りのキャラクターを特集できて満足感は高いです。はたして『最後のジェダイ』での登場はあるのか。ポー・ダメロンが霞むほどの活躍を祈念してこの稿を終えたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

About the author

1977年生まれ。スターウォーズと同い歳。集めまくったアメトイを死んだ時に一緒に燃やすと嫁に宣告され、1日でもいいから奴より長く生きたいと願う今日この頃。

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