ロバート・レッドフォード、ジム・キャリー、リチャード・ギア…なぜかアカデミー賞に恵まれないスター俳優たち

一方でアカデミー賞はコメディには冷たいもののミュージカルには優しく、2000年代以降に限ってもエマ・ストーン、アン・ハサウェイ、ジェニファー・ハドソン、リース・ウィザースプーン、ジェイミー・フォックス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズがミュージカル(正確にいえばゴールデングローブ賞が「ミュージカル」としてカテゴリー分けした映画)でアカデミー賞を受賞しています。
アクションに冷たいアカデミー賞
コメディに冷たいアカデミー賞ですが、アクションはそれ以上に冷遇されているジャンルです。
アクション大作の出演者で受賞までこぎつけたのは『ダークナイト』(2008)のヒース・レジャーくらいで、ノミネートまで広げても『エイリアン2』(1986)のシガニー・ウィーバー、『パイレーツ・オブ・カリビアン』(2003)のジョニー・デップがいる程度です。
1970~1980年代にはシルヴェスター・スタローン、チャック・ノリス、ジャン=クロード・ヴァン・ダム、スティーヴン・セガール、アーノルド・シュワルツェネッガーといった肉体派スターたちがスクリーンを彩ってきましたが、この中でアカデミー賞候補経験があるのはスタローンのみで、彼らの映画界での功績を考慮すると「冷遇されている」と言わざるを得ません。ブルース・ウィリス、ジェイソン・ステイサム、ヴィン・ディーゼルといった、アクション専業ではないもののアクションのイメージが強い俳優たちも、やはり2018年時点ではノミネートの経験がありません。
なぜかアカデミー賞無冠のスター俳優たち
このように、アカデミー賞がアクション俳優とコメディ俳優を冷遇する傾向にあります。これは良し悪しではなく、単純に賞の傾向であって、それ自体を批判するものではありません。しかしアカデミー賞はハリウッドをメインフィールドとする映画賞であり、ハリウッドの映画人に対する功労賞的な意味合いのある賞でもあります。
たとえばマーティン・スコセッシが最高傑作とは言いがたい『ディパーテッド』(2006)で監督賞を受賞したことや、同じくベストパフォーマンスとは言いがたい『ハスラー2』(1986)でポール・ニューマンが主演男優賞を受賞したことは、功労賞としてのアカデミー賞の側面を物語っているといえるでしょう(ニューマンは前年にアカデミー名誉賞も受賞)。
しかし、その“功労賞”の機会に恵まれない俳優たちもいます。下記はアカデミー賞好みの映画に多数出演し、大きな功績があるにもかかわらず、アカデミー賞に無縁であるスターたちの例です(※は故人、2018年時点、順不同)。
- ※ピーター・オトゥール ノミネート8回
- ※リチャード・バートン ノミネート7回
- グレン・クローズ ノミネート6回
- エド・ハリス ノミネート4回
- アルバート・フィニー ノミネート5回
- アネット・ベニング ノミネート4回
- ハリソン・フォード ノミネート1回
- ロバート・レッドフォード ノミネート1回
- サミュエル・L・ジャクソン ノミネート1回
- クリント・イーストウッド ノミネート2回
- トム・クルーズ ノミネート3回
- マット・デイモン ノミネート3回
- ブラッド・ピット ノミネート3回
- リチャード・ギア ノミネートなし
- キアヌ・リーブス ノミネートなし
錚々たるビッグネームが並びますが、彼らのアカデミー賞受賞回数は全員併せても0回です。一番若いデイモンでも40代後半で、20年以上のキャリアがあります。ギアは『シカゴ』(2002)でゴールデングローブ賞主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門)を受賞し、同作はアカデミー賞の有力候補と見なされていましたが実際には候補漏れとなりました。2018年時点で彼の映画界でのキャリアは40年を超えますが、アカデミー賞は候補経験すらありません。これは不可解とすら言えるでしょう。