【ネタバレ】『Mr.ノーバディ』に『グッドフェローズ』のオマージュあり

“何者でもない(NOBODY)”と思ってナメてたオジサンが、実は激強だったという痛快アクション・スリラー『Mr.ノーバディ』が公開中だ。この劇中には、マフィア映画の傑作『グッドフェローズ』(1990)のオマージュが存在している。
この記事には、『Mr.ノーバディ』のネタバレが含まれています。
ここで注目するのは、ロシアン・マフィアのボス、ユリアン・クズネツォフの初登場シーン。荒い運転で現れた黒塗りの車を降り、ひいきにしているナイトクラブへと入っていくシークエンスだ。ユリアンは行列のできた入り口から悠々と立ち入り、フロアに到着するとそのままステージに上がり、歌とダンスをノリノリで披露する。
このシークエンスでは、ユリアンの背中をカメラがワンカットで追うことにより、この悪役の豪胆無比さを紹介しているが、これは『グッドフェローズ』のオマージュなのだそう。筆者がイリヤ・ナイシュラー監督に尋ねてみると、「そうです。あれはオマージュです。傑作から引用しました」と認めた。
マーティン・スコセッシによる名作映画『グッドフェローズ』では、主人公のヘンリーが、まだ付き合いたてのカレンを連れて、ナイトクラブへ出かける有名なシーンがある。マフィアとして顔の効いたヘンリーは、車を降りると駐車場を待つこともなく係員に車を預け、行列の出来た正面入口は無視して、裏口からスイスイ通され、店内では特等席を用意される。マフィアの自由で豪華な夜遊びぶりを表した名シーンを、『Mr.ノーバディ』も参考にしたというわけだ。
ところで『グッドフェローズ』でのヘンリーは絶頂の日々を謳歌した後に追い込まれていくこととなる。『Mr.ノーバディ』のユリアンも劇中でどのようなラストを迎えたかを思い返すと、この2作はマフィアの盛者必衰ぶりも共通しているようだ。