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【ネタバレ】『Mr.ノーバディ』子猫の「その後」 ─ プロデューサーの猫愛で登場

Mr.ノーバディ
© 2021 Universal Pictures

この記事には、『Mr.ノーバディ』のネタバレが含まれています。

『Mr.ノーバディ』猫の登場は迷った

THE RIVERとのインタビューで、「『Mr.ノーバディ』には猫のシーンが3つあります」とイリヤ監督は説明する。「ひとつはイントロ部分とアウトロ部分で、ここはひと場面としてカウントしますね。2つ目は娘が“パパ、猫を飼おう”と言うシーン。そして3つ目は、猫がダクトから音を立てていて、ハッチが助け出すシーンです」。

監督はこの3つを挙げたが、ハッチが猫ちゃんブレスの返還を求めてブチ切れるシーンもあったから、これも含めてしまうと4シーンだ。『Mr.ノーバディ』は立派な猫映画である。(?)

ところで、『Mr.ノーバディ』の冒頭シーンは至妙だ。満身創痍でくたびれながらタバコに火をつけるハッチの姿を見れば、観客はこの男がただ者ではないことを即座に理解できる。そしてツナ缶を取り出したかと思えば、懐から可愛らしい子猫が現れて、もしゃもしゃと食いつく小さな身体を優しく撫でてやる一面も見せる。あの僅かな時間と、取調室という限定的な環境にもかかわらず、『Mr.ノーバディ』の冒頭シーンは、ハッチという主人公が「ただ者ではない」だけでなく、「元々は心優しい人物」という情報を与えることに成功している。これから描かれる物語に向けて、観客の興味を一気に引きつけているのだ。

冒頭に猫を救う(救った)を描写を用意するのは、「SAVE THE CATの法則」と呼ばれるテクニックにも則った手法だ。これは、ハリウッドのヒット映画の脚本を手掛けたブレイク・スナイダー氏による有名な脚本執筆ノウハウ本で提唱されている手法のひとつ。映画の主人公が初めて何らかの行動を起こす時、猫を救うなどをさせれば、観客が主人公の性格をすぐに理解でき、しかも共感できるようになる、というものだ。

「確かに、『Mr.ノーバディ』の冒頭シーンは、まさに『SAVE THE CAT』ですね。その本は僕も読んでいます」とイリヤ監督は認めている。もっとも、「SAVE THE CATの法則」を伴う導入部分を取り入れるかどうかは、撮影前になってためらったこともあったという。

「撮影前に、子猫は本当に必要かな?可愛すぎになっちゃわないかな?って心配になったことがあったんです。そうしたら、(プロデューサーのひとりの)ケリー・マコーミックが僕に『イリヤ、猫がいるかどうかを議論するつもりはない!』って(笑)。」

ケリー・マコーミックの猫愛に圧され、ほとんど言われるがままに子猫を登場させたようだが、「取り入れて本当に良かったです」とイリヤ監督は納得している。「あのシーンは猫がいなくても成立はしますが、猫がいるからこそ面白い。だからケリーが『猫は絶対だ』と言ってくれて良かったです。正解でした」。

ハッチはあの子猫を引き取っている

これは猫好きにとって大切な情報なのだが、ハッチはその後、あの子猫を引き取って飼うことになったのだそうだ。筆者は同じ確認を、主演のボブ・オデンカークとイリヤ監督の両方に行ってみたが、ボブは「イエス。彼は猫が好きなんですよ」と、イリヤ監督も「100%そうです。彼はあの子猫を飼うことにしています」と認めているから、間違いない。映画のラストでは、ハッチと妻ベッカが新居を探していたが、子猫も一緒に引っ越すことになるのだろう。

ところで本作は、同じ脚本家(デレク・コルスタッド)が手掛けた『ジョン・ウィック』シリーズと比べられることが多いが、こちらでは毎作ジョン・ウィックが犬を連れて登場する。もしも『Mr.ノーバディ』に続編が作られるのなら、ハッチが猫を抱いて登場するのが恒例になったら、面白そうだが。

そんな話をしてみると、イリヤ監督は「もし実現すれば、そうですね」としながら、「何事も実現するまでは期待しすぎないようにしています」と慎重な姿勢を見せた。

「特に続編とか、その類の話題はね。仮に今作が大成功して、ユニバーサルももっとやりたがって、観客からも気に入ってもらえて、続編を望む声が出れば、です。観客と共に成功する、とはそういうことです。映画は観客を楽しませるために作られるので。」

とはいえ『Mr.ノーバディ』では、明らかに続編を意識したようなラストが用意されていた。しかし、これは必ずしも続編のために仕込んだものではないようだ。イリヤ監督には代表的な過去作『ハードコア』(2015)があるが、こちらでもエンドロールの途中で「やあヘンリー、実はもう1つ頼みがあるんだ」と、続編を示唆するようなメッセージを聞くことができる。しかし、イリヤ監督に『ハードコア』の続編を作る意向は、もともとなかったようなのだ。

「続編をやる考えはありませんでした。もしも映画が成功すれば、続編が実現して楽しいことになったと思います。でも『ハードコア』の続編は作られていません。未だに“あのメッセージは何だったの?”と聞かれるんですが、あれはスタジオで2人の男がふざけているだけなんですよ(笑)。続編に向けたものではないんです。僕は続編の可能性の話題についてはとても慎重なんです。」

極めて現実的な視座のイリヤ監督だが、一方で「ハッチ・マンセルはまだまだ語るべき物語があるんですけどね」とも加えている。物語を自然に繋げられるようなラストがせっかく用意されたのだから、ぜひ実現を祈りたいものだ。

ところで話題は猫や犬に戻るが、主演のボブ・オデンカークは犬と猫を両方飼っているそうで、テレビ通話の画面越しに、スマホで愛犬と愛猫の写真を見せてくれた(「写真がいっぱいある」と、一生懸命画面をスクロールして探してくれた。その間、「君も猫を飼っているかい」「名前はなんていうんだい」と猫トークが始まりかけ、映画のインタビューから大きく脱線しかけたのだった)。

ボブの飼っている犬の方はオリーブという名前で、顔は白、身体は茶色い。犬種は定かではないが、見た所スタッフォードシャー・ブル・テリアか、スタッフォードシャー・テリアのようだ。猫の方の毛色は白とダークグレーで、ミックス種のように見える。シーシーという名前だそうだ。「いい子だよ」。

『Mr.ノーバディ』は大ヒット公開中。THE RIVERでは、ボブ・オデンカークイリヤ・ナイシュラー監督、それぞれへの単独インタビューも掲載中だ。

ボブ・オデンカークへのインタビューはこちら
イリヤ・ナイシュラー監督へのインタビューはこちら

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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