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クリストファー・ノーラン、米ワーナーの劇場&配信戦略を批判 ─ 「不信感がある、やり方が良くない」

クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
© LFI/Avalon.red 写真:ゼータ イメージ

2020年12月4日、米ワーナー・ブラザースは、2021年公開予定の映画17作を、すべて劇場公開と同時に自社配信サービス「HBO Max」にて配信リリースすることを明らかにした。コロナ禍を受けての大きな決断だが、これに『TENET テネット』(2020)のクリストファー・ノーラン監督が厳しい視線を向けている。

ノーランとワーナー・ブラザースは、これまで『インソムニア』(2002)から『TENET テネット』までの全作品でタッグを組んできた。しかし米Entertainment Tonightの取材にて、ノーランはワーナーの決定について「不信感があります。特にやり方が良くない」と述べている。

「議論が大きくなっているのは、彼らが(方針を)誰にも伝えていなかったからです。2021年にも、彼らのもとには、世界でトップのフィルムメーカーやスターたちが数年にわたって大切にしてきたプロジェクトがあって、それらは大スクリーンでの上映を前提としていたもの。なるべく幅広い観客層に観られることが前提だった作品です。それが今では、生まれたばかりのストリーミングサービスで激安の目玉商品として使われる。しかも、何の相談もなく。[中略]それはプロジェクトに力を注いできた人々に対するやり方じゃない。彼らは自分たちの仕事について相談を受けるべき、話を聞いてしかるべきと思います。」

今回、ノーランはワーナーの戦略を「すごく、本当に厄介な、まぎれもない“おとり商法”」だと述べている。一方、この戦略が業界に及ぼす長期的な影響については、いずれ映画館での経験が元通りになること、それが長期的には非常に重要であることを大手スタジオは理解しているはずだとの見解を示した。

我々の業界では、いま(スタジオが)短期的な利益を追求するための言い訳として“パンデミック”が使われています。これは本当に残念なことだし、ビジネスのやり方じゃないし、業界の健全性にとっても最良の方法ではありません。映画館が再開されて人々が劇場に戻り、ワクチンが広まり、政府から適切な対応が取られた時には、業界の長期的な側面について、私は強気に出ることになるでしょう。人々は映画館に出かけることが大好きなのだし、彼らはまた戻ってくるものだから。」

ノーランによる発言の根拠は、『TENET テネット』がコロナ禍においても、映画館の営業が実施された海外各国で優れた成績を収めたことだ。今回の取材でも、ノーランは「安全に映画館に行ける場所で、とても大勢の観客が観てくれたことが本当にうれしい。業界の未来にとっても素晴らしいこと」だと喜びを語った。「日本やオーストラリアなど海外に行けなかったこと、プレミア上映を観客と過ごせなかったこと、アメリカできちんと上映できていないことは残念ですが」。

なお、ワーナーに対しては『DUNE/デューン 砂の惑星』『ゴジラ VS コング(原題:Godzilla vs Kong)』を製作したレジェンダリー・ピクチャーズが法的手段に訴える可能性も浮上していると報じられている。ノーランと同じく、『DUNE/デューン』や『ブレードランナー 2049』(2017)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督も不快感を示しているということだ。

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Source: Entertainment Tonight

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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