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クリストファー・ノーラン、Netflix時代のフィルムメーカーの責任を説く ─ 「家から出る理由を観客に与えなければ」

ダンケルク
© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

Netflix映画『ROMA/ローマ』が第91回(2019年)アカデミー賞で外国語映画賞を受賞、作品賞にノミネートされたことを受けて、巨匠監督スティーブン・スピルバーグが同賞のノミネート基準の変更を提案すると報じられた。俳優・監督のベン・アフレックが直後にNetflixの支持を明言するなど、この出来事はクリエイターたちの思想や思考を明らかにするきっかけともなっている。

スピルバーグと同じく、映画館での映画体験の重要性をかねてより訴えてきた“若き巨匠”がいる。『ダークナイト』3部作や『インターステラー』(2014)、『ダンケルク』(2017)などを手がけてきたクリストファー・ノーランだ。
2019年3月5日(現地時間)、英国映画館連盟(UK Cinema Association)の定例会議にビデオスピーチで登場したノーランは、自身の映画体験、そして現在のフィルムメーカーに求められる重要なミッションについて語っている。英Screen Dailyが伝えた。


「家から出る理由を観客に与えねばならない」

今回のスピーチで、ノーランは「経済の現実がどうであろうと、いかにコストやムダを省く必要があろうと、ショーマンシップは絶対に忘れたくない」と宣言している。ショーマンシップとは、興行を仕掛ける人物として観客を楽しませようという心構えのことだ。その背景には、自身の鮮烈な映画館体験があるようだ。

「私の思い出は、映画そのものや、スクリーンで起こる目を見張るような冒険にとどまるものではありません。時間や場所によるところもあるのです。小さい子どもが、自分の身体よりもずっと大きくて立派な建物に入る。カーテンが開き、ワイドスクリーンの上映用にスクリーンが広がる動きにワクワクする。特に古びていないのは、スクリーンのスケールやサイズの記憶です。現実よりも大きな人や風景を観て、時に圧倒されるけれども、夢中になり、興味を惹かれました。」

『ダンケルク』Blu-ray&DVD発売中 ©2017 Warner Bros. All Rights Reserved.

ノーランは「映画が映画館で上映されている時はすごくワクワクするもの」と述べつつ、映画の上映形式がさまざまに変化していることも自分なりに受け止めていることを明かしている。

「この20年間は非常に良い期間となりました。映画を発表することについて、たくさんのルネサンス(復興)や革新が起こり、あらゆる考えがもたらされてきたんです。私自身、イギリスではあらゆる映画体験を楽しんできました。それぞれの印象を観客に与えられるよう、映画館はそれぞれの取り組みをしているんですよ。」

しかしいまや、スピルバーグが懸念を抱いているように、リビングルームに新作映画がいきなり配信される時代だ。ストリーミング時代の到来によって、ベン・アフレックの言葉を借りれば「この業界は変化している」のである。そんな中、ノーランは現代のフィルムメーカーには大きなプレッシャーと責任があるのだと強調する。

家から出る理由を観客に与えねばならないという、かつてないプレッシャーがあります。それから、映画館の提供する巨大なキャンバスを使う責任がある。エキサイティングな形で物語を伝える、既存のジャンルに斬新なアイデアや解釈をもたらす、そして新しいジャンルを発明する責任があるんです。」

こうした言葉遣いから察するに、ノーランはストリーミングによる映画の発表をさほど肯定的には捉えていないように思われる。しかし、ここでノーランの説いているプレッシャーと責任は「映画館で上映される映画を作る者たちの」責任だろう。自分の名前だけで観客を呼べる数少ない映画監督としての自戒も、ここでの言葉には多分に含まれていると思われる。

なお、英国映画館連盟でのスピーチだということもあるだろうが、ノーランは映画館をフィルムメーカーの「素晴らしいパートナー」だと呼んでいる。

「革新を起こせる、劇場を造ることができる、新たな観客を呼び込める方法で劇場を改修できる、そして人々に家から出る理由を与えられるパートナーがいるのは素晴らしいことです。」

ノーラン監督の次回作は2020年7月に米国公開予定。スピーチで本人が明かしたところによると、まもなく撮影が始まるということだ。いつも徹底の秘密主義で知られるノーランだが、今回はどんな物語で、どんなキャスティングになるのだろうか……。

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Source: Screen Daily

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。国内舞台作品の執筆・創作にも携わっています。ビリー・アイリッシュのライブに行きたい。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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