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『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』気鋭脚本家フィービー・ウォーラー=ブリッジの貢献とは ─ プロデューサー&本人のコメントから

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
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『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』には、本作をもってジェームズ・ボンド役を去るダニエル・クレイグこだわりのスタッフィングがある。「Fleabag フリーバッグ」(2016-2019)「キリング・イヴ/Killing Eve」(2018-)の気鋭脚本家、フィービー・ウォーラー=ブリッジの起用だ。『007』に女性脚本家が参加するのは、第1作『ドクター・ノオ』(1962)と第2作『ロシアより愛をこめて』(1963)のジョアンナ・ハーウッド以来、史上2人目となった。

『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の脚本家としてクレジットされたのは、『007 カジノ・ロワイヤル』(2006)からクレイグ版ボンドを描き続けてきたニール・パーヴィス&ロバート・ウェイドとキャリー・ジョージ・フクナガ監督、そしてフィービーの4名。完成版にはクレジットされていないが、『ザ・レポート』(2019)『コンテイジョン』(2011)のスコット・Z・バーンズも一時改稿にあたっていた。では、フィービーの力は本作のどのあたりに活きたのだろうか?

プロデューサーのバーバラ・ブロッコリは、フィービーが「大きな貢献」をしてくれたと英BBCにて語っている。「(フィービーは)何人かのキャラクターについて、興味深い視点をもたらしてくれました。彼女を“女性脚本家”として考えるのは不当だと思います。映画のプロット全体に貢献してくださいました」

もっともフィービー自身は、2020年2月の時点で、自身の仕事は「台詞のブラッシュアップと違うアイデアの提案」だったと語っている。いわく、製作陣からいくつかのシーンを提示され、それぞれの場面の異なるバージョンや、既存の脚本に活かせるアイデアを求められたそう。「私は選択肢を作り、いろいろなシーンを書きました。あとは彼らが求めるものを選んだのです」とは本人の談である。

プロット全体への貢献か、はたまたシーン単位でのリライトか。プロデューサーであるバーバラの言葉と、フィービーの経験談にはやや乖離があるようにも思われるが、おそらくポイントは“キャラクターへの視点”だろう。フィービーによるアイデアとリライトが、『007』というシリーズに新風を吹き込んだのだ。「フリーバッグ」「キリング・イヴ」のファンなら、きっとフィービーらしい味付けを随所に感じることができるだろう。

ちなみに2019年11月、ダニエルは、“フィービーの起用は多様性を求める時代に適合するためのものか?”との問いかけにこう応じている。

「フィービーの性別について話すなんて、本当にばかばかしい。フィービーは素晴らしい脚本家であり、その彼女をなぜボンド映画に誘っちゃいけないのかという話です。あなたが言いたいことはわかるけれど、僕はその話はしたくない。あなたが聞き出そうとしていることもわかるけれど、それは大間違いですよ。彼女は本当に素晴らしい書き手だし、イギリス最高の作家のひとりだと思う。だからこの映画に関わってもらえないかと思った。それが僕にとっての(起用の)理由でした。」

映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』は全国公開中。

Sources: Deadline, IndieWire, Independent

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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