【解説】2021年アカデミー賞、主要部門の結果は ─『ノマドランド』『ミナリ』『ファーザー』が快挙

そんな歴史的快挙を成し遂げたヨジョン。助演女優賞の受賞に際して、彼女は以下のように冗談を交えながら喜びの声をあげている。
「(プレゼンター・『ミナリ』プロデューサーの)ブラッド・ピットさん、ようやく会えましたね。撮影中はどこにいたんですか?(笑)お会いできて本当に光栄です。ご存知の通り、私は韓国出身です。“ユン・ヨジョン” という名前ですが、“ユンジョン”とも呼ばれています。ただ、今日は何と呼んでもかまいませんよ。普段は他のところに暮らしています。いつもこのアカデミー賞授賞式は、テレビで見ていました。私たちにとって、これはテレビ番組でしたが、私は実際にここに来ることできました。信じられません。続けます。ありがとうございました。
アカデミーに感謝します。私に投票してくださったみなさんにも感謝します。素晴らしい『ミナリ』のファミリーにも。スティーヴン(・ユアン)、 (リー・)アイザック(・チョン)、ノエル(・チョ)、アラン(・キム)…私たちは家族になりました。そして何と言っても、リー・アイザック・ チョンがいなければ私はここにいません。私たちのキャプテンでした。心から感謝します。
私は競争というものを好みません。グレン・ クローズさんではなく私が選ばれましたが、私は彼女の演技を何度も拝見してきました。5人のノミニーがいますが、それぞれ異なる作品で異なる役柄を演じています。ですので競争などというのはふさわしくなく、私は少し運がよかっただけ、少しだけラッキーだったんです。アメリカのホスピタリティ、おもてなしの気持ちでしょうか?」
『ミナリ』は、2021年3月19日より日本公開中。
主演男優賞:『ファーザー』アンソニー・ホプキンス

アカデミー賞の最後を飾ったのは、作品賞ではなく主演男優賞。このたび栄冠に輝いたのは、83歳の名優アンソニー・ホプキンス。世界30カ国以上で上演された傑作舞台の映画化『ファーザー』にて、記憶や時間が混迷していく認知症の父親役を怪演した。
『羊たちの沈黙』(1991)以来、29年ぶりの受賞であり、主演男優賞部門では史上最高齢での結果だ。世界を代表する名優の受賞だが、このたびのアカデミー賞にとって一番の予想外の展開だったとも言えるだろう。それというのも、ゴールデングローブ賞をはじめ、前哨戦の多くで受賞を果たしていたチャドウィック・ボーズマンがこれまで最有力視されていたからだ。ホプキンスによる名演に疑う余地はないため、納得のいく結果といえるだろう。なおホプキンスは、このたびの授賞式には出席しておらず、トリのスピーチがないまま同授賞式は幕を閉じた。
『ファーザー』は、2021年5月14日より日本公開予定。
助演男優賞:『ユダ&ブラック・メシア』ダニエル・カルーヤ

1960~70年代に黒人解放運動を牽引した政治組織、「ブラックパンサー党」の有力者の暗殺事件を描く伝記映画『ユダ&ブラック・メシア』。『クリード』『ブラックパンサー』シリーズのライアン・クーグラーが製作に入る本作にて、暗殺された有力者役を演じ、このたび助演男優賞に輝いたのは、『ゲット・アウト』(2017)『ブラックパンサー』(2018)のダニエル・カルーヤだ。
アカデミー賞としては、『ゲット・アウト』につづいてのノミネートであり、今回初受賞となった。そんなカルーヤは受賞に際して以下のように喜びの声をあげている。
「なんてことでしょう。このような光栄なことを、(ラキース・)スタンフィールドと共有したいです。ドミニク・フィッシュバーグ、素晴らしいキャスト、スタッフのみんなにも感謝したいです。周りを見て嬉しく思います。みんなインスピレーションを与えてくれました。信頼してくれてありがとう。深く感謝します。並んで一緒に仕事で来て光栄でした。我々は、フレッド・ハンプトンという人の人生にインスピレーションをもらいました。22歳で亡くなったけど、子どもたちの教育や無料の医療の提供に尽力した人です。ブラックパンサー党の一員であった彼から多くを学びました。『統合』の力を示したと思います。『分割』ではなく『統合』の強さを語ってくれたフレッド・ハンプトンに感謝したい。
人生を祝う必要があります。生きてるって素晴らしいことです。私の父と母もいまもセックス楽しんでるし、それで私はここにいるわけです。人生に感謝しているし、平和と愛を感じてます。」
『ユダ&ブラック・メシア』は、2021年夏レンタルリリース。