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【解説】パラマウントがワーナー買収へ、Netflixが撤退宣言 ─ 映画・配信・テレビの全社買収計画へ

ワーナー・ブラザースを買収するのは、Netflixではなくパラマウントとなりそうだ。

2026年2月26日(米国時間)、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーをめぐる買収劇からNetflixが撤退した。今後は、パラマウント・スカイダンスによる完全買収が進められることになる。

Netflixとワーナーは、2025年12月5日に事業買収の計画を共同で発表していた。Netflixがワーナーを1株あたり27.75ドル、企業価値およそ827億ドル(約12兆8,000億円)で買収するというものだ。直後からパラマウントは敵対的買収提案を繰り出していたが、ワーナーはこれを拒否しており、Netflixの優勢は変わらないとみられていた。

ところが2月24日(米国時間)、パラマウントは最新の入札で、ワーナーを1株当たり31ドル、企業価値としては約1,110億ドル(約17兆3,000億円)で買収することを提案。26日、ワーナーはこれが既存の契約内容より「優れた提案」だとして、Netflixに対し3月4日までの新提案を要求した。この直後、Netflixは撤退の意志を表明している。

ポイントは、Netflixがワーナー・ブラザース・ディスカバリーのスタジオ&ストリーミング部門のみを買収する計画だったことに対し、パラマウントがディスカバリーやCNN、カートゥーン・ネットワークなどを含むグローバル・ネットワーク部門を含む全社を対象としたこと。そもそもワーナーはネットワーク部門のみを新企業として独立させる計画だったが、パラマウントとの合併であればその必要はなくなったのだ。

またパラマウントは、政府当局の規制によって買収が実現しない場合は70億ドルをワーナーに支払うほか、Netflixへの違約金28億ドルも負担する、ワーナーに発生する可能性があった資金コスト15億ドルも解消すると提案。ネットワーク部門の不調を、契約破棄の条件にあたる“重大な業績悪化”とはみなさないことも明言した。

Netflixの共同CEOであるテッド・サランドス&グレッグ・ピーターズ氏は、「この取引はもはや魅力的なものではありません」として、新たな提案を辞退する声明を発表した。ワーナーとの取引は「エンターテインメント業界をより強化し、アメリカにおける制作の雇用を維持・創出するものと信じていました」と。「ただし、この取引は適切な価格で“実現されれば良い”ものであり、いかなる金額でも“実現しなければならない”ものではありません」。

また、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーのデヴィッド・ザスラフCEOは、Netflixに対する感謝を述べつつ、「我々の取締役会がパラマウントとの契約を承認すれば、株主の皆様にきわめて大きな価値がもたらされます。パラマウント・スカイダンスとワーナー・ブラザース・ディスカバリーの統合が生み出す可能性に胸を躍らせ、世界を動かすストーリーをともに語れることを楽しみにしています」との声明を公開した。

撤退以前、Netflixによるワーナー買収は映画界の大きな反発を受けていた。以前からサランドスCEOが、劇場での映画体験を「時代遅れ」だと公言していたことで、“今後も劇場公開を維持する”というその後の主張もあまり業界では受け入れられなかった。現実的に、Netflixの株価は買収計画の発表後から急落していたが、撤退発表の直後には時間外取引で10%近く上昇している。

今後、ワーナーの取締役会がパラマウントによる買収を承認した場合、両社の合併は司法省や規制当局による審査を受ける。ただしパラマウントのデヴィッド・エリソンCEOやその父親はドナルド・トランプ大統領の熱心な支援者であり、このことが審査のプロセスにおいても大きな利点になると考えられている。もちろん政界には反対の声もあるが、司法によるNetflixへの視線が、現在のパラマウントに対する見方よりも明らかに厳しかったことは確かだ。

Netflixは買収撤退を受け、自社の事業が「豊富なラインナップと最高クラスのストリーミングサービスにより、健全かつ力強く、有機的に成長している」ことを改めて明言。「今年は質の高い映画やシリーズに約200億ドルを投資し、エンターテイメントの提供を拡大していく」ほか、自社株買いプログラムも再開するなど、会員の満足度を高めつつ、さらなる株主価値の向上に努めてゆく意向を示した。

Source: Variety (1, 2), Deadline, Paramount Skydance

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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