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サイモン・ペッグ、うつ病とアルコール依存に苦しんだ過去明かす ― 「僕は俳優です。だから、ずっと演じていたんですよ」

サイモン・ペグ
Photo by vagueonthehow https://www.flickr.com/photos/vagueonthehow/9418456640/

『ミッション:インポッシブル』『スター・トレック』シリーズをはじめとした大作映画をはじめ、『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)、『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』(2007)などの人気作品に多数出演する俳優サイモン・ペッグが、うつ病とアルコール依存症に苦しんでいた過去について詳しく明らかにした。本記事では英The Guardian紙のロング・インタビューより、彼の発言の一部を翻訳してお伝えしたい。

サイモン・ペグ
Photo by vagueonthehow https://www.flickr.com/photos/vagueonthehow/9418456640/

「僕は俳優です。ずっと演じていたんですよ。」

1970年生まれのサイモン・ペッグは、1995年からテレビドラマの世界で脚本家・俳優として活動を開始。その才能はすぐさま注目を集め、今では『ベイビー・ドライバー』(2017)などで知られる映画監督エドガー・ライトとはお互いのキャリア初期から共同で創作に取り組んでいた。

しかしその当時、すでにサイモンはうつ病とアルコール依存症に悩まされていた。18歳でうつ病を患ったサイモンは、2005年(35歳)まで独力で病気に対処してきたという。しかし、その“独力”こそがアルコールに頼るという方法だったのだ。悲しい気持ちになれば酒を飲んで気分を上げ、再び落ち込めば同じように酒に手を出す。自身のキャリアが培われ、あらゆる企画に携わる中で、そうした問題について立ち止まって考える余裕はなかったという。

ひどかった、大変でした。自分自身が支配されていたんです。[中略]トム・クルーズと映画に出て、『スター・トレック』のスコッティ役をもらえた。幸せに感じるべきですよ。でも、そうじゃなかった。」

『ミッション:インポッシブル』シリーズの第3作『M:i:III』(2006)は、サイモンにとって初めての大作映画だった。しかしその撮影が行われていた2005年、彼の状態はそれまでにないほど悪化していたという。「あの映画を見直すと、当時の自分が相当ボロボロで、憂鬱で、アルコールに依存しているのがわかります。」

ただしサイモンは、それほどつらい状況にあっても、自身の問題をファンや共演者たちに悟られないよう務めていた。『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ』など多くの作品で共演し、プライベートでも親友であるニック・フロストにすら依存症の事実を打ち明けていなかったという。

僕は俳優です。だから…常に、ずっと演じていたんですよ。[中略](依存症になると)周囲には何もバレないよう、賢くなるんです。常習者や依存症患者はだらしなくてやる気がないと思われているでしょうが、そうじゃない。みんな、ものすごくきちんとしていますよ。ウイスキーをショットで一杯だけ飲みに行って、急いで帰ってきても誰も気づかないでしょう。細かいところまで管理されてる感じなんです。」

しかし、彼は「それでも最後には(依存症の)兆候が隠せなくなる」と話している。
2010年夏、サイモンは『宇宙人ポール』(2011)のプロモーションのため、世界最大級のポップカルチャーの祭典「サンディエゴ・コミコン」に登場。しかしそのツアーの途中、彼は4日間にわたって無断で姿をくらましてしまったのだ。その後イギリスに戻ったのち、彼は酒を飲みにどこかへ立ち寄らなければ、空港から自宅まで帰ることすらできなくなってしまったという。こうして症状の重さが妻に発覚したのち、サイモンは病院での治療を受けることになったのである。

「(治療に)参加して、あんなふうに感じていた理由を踏み込んで考えて、アルコホーリクス・アノニマス(依存性者の自助グループ)にもしばらく通いました。もしもそうした助けがなければ、僕は今ここにはいなかったと思います。」

依存症の治療が本格的に始まったのは、自身の状態が悪化した『M:i:III』の続編である『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(2011)の撮影が開始された2010年秋だったという。サイモンによれば、注意深く映画を観ると、作品が進むにつれて健康を取り戻していく様子が見て取れるのだとか。

2013年のコメディ映画『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』は、盟友エドガー・ライト監督やニック・フロストとサイモンが久々の共同創作に臨んだ長編作品だ。この映画でサイモンが演じたのはアルコール依存症の主人公ゲイリー。4人の幼なじみと一緒に、12軒のパブを一夜でハシゴしようと決意する中年男である。劇中でゲイリーは、何が起こっても飲み歩くのをやめようとしない。

「あの映画に出て、僕は(依存症について)多くの人に伝えているような気持ちでした。依存症ってあんな感じなんですよ。自分の頭がもうひとつ飛び出してきて、自分自身を破壊することばかりしたがるような。そうすることを何よりも優先してしまうんです。結婚や子ども、仕事よりも。」

自身が治療を終えた時期をサイモンは語っていないが、少なくとも状態が悪化してから6年以上、最初にうつ病を患ってからは22年以上という時間を費やして、彼は長らく抱えてきた問題を克服したのだ。そして、その後しばらくの時間が経過した現在、ようやくその体験を語るに至ったのである。

現在でもサイモンは数えきれないほどの作品に携わっており、2018年には『レディ・プレイヤー1』のほか『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』やマーゴット・ロビーと共演した『アニー・イン・ザ・ターミナル』が劇場公開され、さらに2作品が公開待機中。年内には初監督作品の撮影も始まるとみられ、その後には『スター・トレック』次回作の撮影も控えているのだ。働きすぎでファンから心配されることも多いサイモンだが、これからもどうか元気な姿で、いろんな表情を世界中の観客に見せてほしい。

Source: The Guardian
Eyecatch Image: Photo by vagueonthehow

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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