『プー あくまのくまさん2』、本当にあの1作目の続編かと思うほど劇的レベルアップ ─ 原作は完全無視、新ユニバース開幕だ【先取りレビュー】

(カナダ・トロントから現地レポート)世界中から愛されているA・A・ミルンの児童小説「くまのプーさん」。1966年以来、ウォルト・ディズニー・カンパニーがキャラクター権利を保有していたが、2022年に著作権が切れ、パブリックドメインになったことで、さっそく低予算ホラー『プー あくまのくまさん』(2023)が作られた。ホラー映画ファンはもちろん、ディズニーファンもザワつかせた本作、先日3月9日に発表された“最低映画”を決めるゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)にて、最多5部門を受賞し再び話題に。ワースト映画賞に加え、ワースト脚本賞、ワースト監督賞などを獲得した。
本作は、殺人鬼と化したプーさんとピグレットが『13日の金曜日』のジェイソン並に人を襲う、これまでの可愛らしいイメージとは真逆の設定で、グロテスクをとことん盛り込む手法、お粗末な脚本&演技、そして救いのないエンディングに何故か惹き込まれてしまうファンが多く、世界で1600以上の劇場で公開されると、世界的興行収入は490万ドルを越えた(Box Office Mojo調べ)。製作費10万ドル以下という予算に対して、驚くべき大ヒットを記録したのだ。
北米では、続編『Winnie-the-Pooh: Blood and Honey2(原題)』が3月26日より3日間限定で劇場公開となった。1作目はRotten Tomatoes批評家スコア3%という、ある意味驚異の数字を叩き出したが、なんと続編は53%、オーディエンススコアでは83%を記録している(3月28日現在)。この続編は、前作の約10倍の予算で製作され、イギリスの名優サイモン・キャロウがキーパーソンとして出演。クリストファー・ロビン役ニコライ・レオン含むオリジナルキャストは戻ってこないが、人気キャラクターのティガーとオウルが凶悪な殺人鬼として加わる。
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舞台は、100エーカーの森で起きた大虐殺から1年後のアッシュダウン。この町の住人はクリストファー・ロビンが1年前の惨劇に関与していると考えていた。クリストファーは肩身の狭い思いでこの町で暮らしており、酷いトラウマを抱えた彼は、カウンセラーと過去の記憶を振り返るため、深層意識にアクセスする。そこで、子ども時代の誕生日パーティーで起きた“ある事件”を思い出していく。一方で、プーさんは仲間たちとクリストファーを追い、邪魔してきた者を容赦無く殺害。そして彼らはついにアッシュダウンへとやってくる……。
特殊メイク一つとっても、前作とはレベルが全く違う。それはプーさんの“眼”の表現だけでも明らかだ。血混じりの恐ろしい目を映し出すシンプルなシーン一つとっても、脳裏に焼きつくほど印象的となっている。そして、プーさんたちの凶暴性もパワーアップ。仲間たちの襲い方もキャラクターそれぞれの特徴を活かしている。ティガーのあの陽気で元気な性格も、殺戮シーンで思う存分に発揮されている。
ちなみに、今作のプーさんのお気に入り武器はトラバサミのようで、バラエティ豊富な痛々しい殺し方を全編通して披露してくれている。また、チェーンソーに火をつけて追いかけ回したり、首を容赦なくもぎ取ったりするド派手なシーンも満載だ。
BRAND NEW LOOK at Winnie-The-Pooh and Christopher Robin.. trailer will drop at the end of THIS MONTH. @Scott_JChambers pic.twitter.com/9nLbvMn8vV
— Jagged Edge Productions (@JaggedEdgeProd) January 4, 2024
注目して欲しいのは、ナイトクラブで人々を襲うシーン。ホラー名作『ライト/オフ』(2016)を彷彿とさせる照明効果に、刺激的なカメラワークは他のホラー作品に負けず劣らずで、「本当にあの『プー あくまのくまさん』の続編なのか……?」と言いたくなるくらいクオリティが劇的に高くなっている本作。「ド派手なスプラッター映画」という言葉がピッタリ当てはまる一本だ。
ストーリー的にも、前作とは比べ物にならないほどいいものに仕上がっている。原作の物語を完全に無視しているところに笑ってしまうが、“続編に対する欲”をそそる思いがけない展開に。今作で明かされるプーさんたちの正体には度肝を抜かされるだろう。前作のような「退屈」と感じるパートは少なく、最後には『13日の金曜日』や『ハロウィン』のような、新たな巨大フランチャイズが誕生するのではないかと期待させるようなエンディングが待ち受けていた。
監督を務めたライズ・フレイク=ウォーターフィールドは、過去2年間で36本もの低予算作品を製作したという実績を持つ。『Winnie-the-Pooh: Blood and Honey2』はそんな彼の代表作の一つになったに違いない。
ちなみに彼はプーさんほか、児童向けキャラクターをホラー化するユニバース「Poohniverse」を発表。今後、バンビを題材にした『Bambi: The Reckoning(原題)』のほか、ピーターパンを描く『Peter Pan’s Neverland Nightmare(原題)』やピノキオを描く『Pinocchio Unstrung(原題)』などを計画している。さらに2025年には、マーベル・シネマティック・ユニバースの『アベンジャーズ』のように、単独映画で活躍したキャラクターが集結するクロスオーバー作品『Poohniverse: Monsters Assemble(原題)』も公開予定とのこと。今後にますます期待が高まる。
『Winnie-the-Pooh: Blood and Honey2』の日本公開は未定。
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