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『アントマン&ワスプ:クアントマニア』VFX過酷労働が告発される ─ 週80時間労働、デスク下で仮眠の日々「なぜ現場に予算が降りてこない」

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マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の制作裏について、不穏な情報が登場している。VFX制作の環境が劣悪だったと、実際のクリエイター複数名が米Vultureに告発しているのだ。

この記事によれば、『クアントマニア』制作における重要な人材がシリーズ直前作『ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー』(2022)との間で取り合いになった。マーベル・スタジオが『ワカンダ・フォーエバー』を優先させたがったため、『クアントマニア』では十分な体制にならなかったという。結果として『クアントマニア』は深刻な人材不足に陥った。

その背景には、以前から指摘されているマーベル・スタジオ側の管理体制における問題も深く絡んでいる。2022年7月にはマーベル作品のVFXスタッフらがあまりのハードワークぶりを非難したネット掲示板の書き込みが話題になった。いわく、マーベル・スタジオは制作途中で何度も平気で仕様変更をする、それでいて予算を渋るひどいクライアントだというものだ。

この度米Vultureに告発した視覚効果技術者のジム(仮名)によれば、『クアントマニア』でも、スタジオから重箱の隅をほじくるような粗探し(nitpicked)をされ、十分な作業時間もないまま、大幅な修正指示が戻されることがあったようだ。具体的には、後半の1/4から1/3にかけて、遅すぎる修正要望が飛んできたそう。

たとえ一部の修正に見えても、その実作業は想像以上に広範囲に及ぶというのは、デザイン関係の仕事をされている方であればよく知るところだろう。ジムはスタジオからの修正指示について、「もう取り返しのつかない時点のことだった」との責任を咎めた。マーベルの仕事をしたことによる“燃え尽き”が、業界全体に現れているとも話している。

悲しいかな力関係というものがあり、制作側がスタジオからの無茶難題を拒否することは到底できないようだ。「少しでも生活が危うくなるようなことはしたくない」「上からの指示は絶対。それに反対する権力は、自分にはない」と、現場の苦心を語るジム。彼らの間では、「金はあるはずなのに、なぜ制作に回さないのか」という空気感があったという。「スタジオは石ころから血液を絞り出そうとしている。そして、我々に血液はもう残っていない」。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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