デップー効果?『ローガン』や『ブレードランナー』新作など、映画界がR指定に注目する理由

映画好きの皆様でしたら、きっと“R指定”という言葉をご存知かと思います。性的描写、暴力描写など過激な表現を含む映画には、鑑賞できる観客の年齢に制限がかかるのです。
R指定となった作品は、必然的に観客の年齢層が狭くなり、若い世代からのチケット購買率が下がってしまうため、興行収入は一般作品と比べるとあまり見込めず、大きなハンデとなります。それゆえR指定になることを懸念してか、ある程度描写に制限をかけて公開される生ぬるい映画も少なくないように思います。
ところが、2016年公開の『デッドプール』は、R指定にもかかわらず大ヒットとなり、R指定史上最高の興行収入を叩き出しました。きっと配給元の20世紀フォックス社にとっても嬉しい誤算…いや、結果だったことでしょう。
そして今、大きなハンデを抱えながら大ヒットした『デッドプール』をきっかけに、R指定作品の注目が高まっています。
そもそもR指定とは?
そもそも、R指定の“R”は“restricted”の略で「制限された」という意味を持ちます。日本の場合は“rating”、すなわち「評価、格付け」という意味も持っています。日本ではこのR指定を、映画倫理委員会という組織が審査・決定しています。R指定マークの下にはいつも「映倫」と書かれていますよね。
現在、日本で定められている映画の区分は下記の通りです。

- G:一般向け。年齢制限なく鑑賞できる作品
- PG12:12歳未満(小学生以下)には保護者の指導、助言が必要
- R15+:15歳未満は、鑑賞することができない作品
- R18+:18歳未満は、鑑賞することができない作品
R指定を受ける・受けないの基準は国によって異なります。アメリカなどは日本よりもはるかに厳しく、性・暴力描写はもちろん、たとえば“fuck”などの卑語だけでも制限を受けるほどです。日本では一般向けとして公開された映画も、アメリカではしばしばPG指定(保護者の厳重な注意が必要)となっています。たとえば『X-MEN』シリーズは、アメリカではPG指定となっていますが、日本だと一般向け映画として公開されました。
ちなみに和製『セブン』ともいわれた、小栗旬主演の映画『ミュージアム』は、残酷描写が多いように見えたもののR指定を回避しています。日本の基準は他国に比べるとまだまだ緩い方なのかもしれませんね。(参考:『ミュージアム』大友啓史監督インタビュー「これでR指定無し。映倫の基準は興味深いね」|ガジェット通信)
いま、R指定作品が注目されている?
作品にR指定が付いてしまうと、観客の年齢層が制限されるだけでなく、公開できる映画館が限られるなど、一般指定の映画よりも大きなハンデを受けることになります。そのため製作サイドは、R指定を回避すべく内容や表現を変更するなど、“本当は描きたかった部分”をオブラートに包んだりするわけです。
ところが現在、「R指定では集客数が見込めない」という考えが変わり始めているようです。
『ローガン』ヒュー・ジャックマン、自ら出演料をカット
この予告編から感じられることは、これまでの『X-MEN』とは違った異様な空気感ではないでしょうか。全体のトーンは暗く、年老いたウルヴァリンの姿は傷だらけで治癒能力が失われていることを示唆しています。さらにどことなく哀愁を感じ、表情には絶望をも感じ取ることができます。本作ではウルヴァリンではなく、初めて生身の人間としてのローガンが描かれるようです。
主演のヒュー・ジャックマンは、本作で過激な描写を実現できるよう、自らの出演料をカットしていたといいます。そこまでしてのR指定をスタジオが許した背景には、やはり『デッドプール』の成功があることでしょう。20世紀フォックス社が新たな可能性を見出したことで、今後の『X-MEN』では表現の広がりが見られるかもしれません。
- <
- 1
- 2