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巨匠クリント・イーストウッド、現代社会の問題を撮る ─ 『リチャード・ジュエル』は「歴史と真実に光を当てる」問題作

リチャード・ジュエル
© 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

『アメリカン・スナイパー』(2014)『運び屋』(2018)のクリント・イーストウッド監督最新作、『リチャード・ジュエル』が2020年1月17日(金)に日本公開される。2020年に90歳を迎えるイーストウッドが今回描くのは、1996年のアトランタ・オリンピックで起こった爆破テロ事件の“真実”。衝撃の問題作で、真正面から「現代」に斬りかかる。

1996年、警備員のリチャード・ジュエルは米アトランタのセンテニアル公園で不審なリュックを発見。その中身は、無数の釘が仕込まれたパイプ爆弾だった。テロを未然に防いだことで、一時は英雄視されたジュエルだったが、やがて現地の新聞社とテレビ局が彼を容疑者のように書き立て、実名を報じたことで状況は一変。FBIによる捜査、連日の過剰報道で、全国民の視線にさらされながらジュエルの人格は貶められていった。弁護士ワトソンが立ち上がり、ジュエルの母親ボビーは息子の無実を訴えるが、3人の前に、約3億人の国民を抱えるアメリカ政府とマスコミが立ちはだかる……。

1996年のアトランタ・オリンピックで発生した爆破事件は、爆発物を発見したジュエルが、“報道断罪”によって容疑者に仕立てられた極端な事例だ。当時、メディアはジュエルを執拗に犯人扱いしたため、88日後にジュエルの無実が証明されたことを知る者はほとんどいない。ジュエル本人は、社会的地位や精神状態を回復させることなく、事件から11年後の2007年に44歳で他界しているのだ。「早すぎる結論」「メディアの功罪」。この極めて時事性の高いテーマを、巨匠イーストウッドが、サスペンスとミステリー、ヒューマンドラマの要素を融合させて描き出す。

リチャード・ジュエル
© 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

事件の被害を最小限に抑えた“英雄”から、一転して犯人扱いを受けるリチャード・ジュエルを演じるのは、『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)の演技が高く評価されたポール・ウォルター・ハウザー。息子の無実を信じる母親ボビー役をオスカー女優のキャシー・ベイツ、ジュエルの無実を信じる弁護士ワトソン役を『スリー・ビルボード』(2017)でアカデミー賞助演男優賞に輝いたサム・ロックウェルが演じる。

なぜ、イーストウッドは新作の物語にリチャード・ジュエルを選んだのか。2019年11月20日(水)に米国で開催されたワールドプレミアで、イーストウッドは自ら「ジュエルはひどい悲劇の犠牲者だった」と述べ、本作に込めたメッセージを語っている。

「ジュエルは“疑わしきは罰せず”という扱いを受けなかった。適切な調査をされないまま、(犯人だと)判断されたんです。それは憲法に反することだし、僕たちが信じる、あらゆることに反していますよね。(この映画で描かれているのは)現在の世界で起きていることと非常によく似た出来事。きちんと確認する前に、人々は早まった判断を下してしまうんです。」

リチャード・ジュエル
© 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

また、リチャード・ジュエルを演じたポール・ウォルター・ハウザーも「この映画は常に今日的な意味を帯びている作品です」と話した。「僕たちが同じ間違いを犯し続けている限り、歴史は繰り返される。[中略]この映画は、歴史と真実に光を当てる作品です」

またハウザーは、「観客のみなさんがこの映画を楽しんでくださることを、すごく楽しみにしています」と述べて、『リチャード・ジュエル』という作品に大きな希望を抱いていることを強調している。

「この映画が大好きだし、僕にとっては非常に大切な作品になりました。クリントとの仕事は楽しかったし、奥行きのある登場人物と意義深い物語を演じられてうれしく思います。[中略]観客はリチャード・ジュエルという人物の中に、自分自身、あるいは誰か知っている人の姿を見出すことになるでしょう。リチャードと一緒に(作品の完成を)祝うことが出来たらよかった。彼の魂はここにいるのだと思います。」

映画『リチャード・ジュエル』は2020年1月17日(金)全国ロードショー

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THE RIVER編集部THE RIVER

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