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【ネタバレ】『ロケットマン』結末は何故◯◯◯か ─ 監督に訊く、『ボヘミアン・ラプソディ』との最大の違い

ロケットマン
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

この記事には、『ロケットマン』のネタバレが含まれています。


『ロケットマン』結末、なぜ内省的だったのか

同じく偉大なミュージシャンの人生を描く伝記映画として、前年に公開され世界的大ヒットとなった『ボヘミアン・ラプソディ』で最終監督を務めたデクスター・フレッチャーの監督作とあって、『ロケットマン』はしばしば『ボヘミアン・ラプソディ』と比較されることがある。ただし、劇中で描かれた苦悩や葛藤に対し、ミュージシャンとして音楽で決着を付けた『ボヘミアン・ラプソディ』に対して、『ロケットマン』は全く異なるアプローチを取っている。

デクスター監督はTHE RIVERとのインタビューの中で、『ロケットマン』ではエルトンの精神の旅路を描くことに最も注力したと語った。その折、筆者は映画の結末に関する質問を尋ねていた。決して『ボヘミアン・ラプソディ』の後追いを求めるわけではないが、それでもエルトン・ジョンを描く映画において、音楽的な演出で結末を迎えるものと期待していた筆者は、なぜ精神的な結末に帰結したのかを知りたかったからだ。

デクスター・フレッチャー
© THE RIVER

── 『ロケットマン』について、実直に述べさせて頂きます。映画の前半と後半が、異なる性質を持っているように思いました。前半は、エルトンのミュージシャンとしてのキャリアを描いていますね。幼少期に始まり、才能が開花して、初めてのライブ演奏があって……。でも後半では、エルトンの精神世界に入っていきます。とても内省的になっていきます。なので僕は、映画の前半と後半が分かれているように感じました。なぜ、このような作りにしたのですか?

君は、分かれているから良かったと言いたいのかね?

── 正直なところ、映画のラストでは大規模なコンサートか何かがあると思っていました。そういった音楽的表現をもって、この物語は終わるのだと期待していた部分がありましたから、非常に印象的なラストでした。

なるほど。確かに『ボヘミアン・ラプソディ』のラストは壮大で素晴らしかった。我々も、それについては議論したんですよ。そこで私が言ったのは、「あの映画のラストは超えられないぞ」ということ。あれ以上に凄いコンサートはもう作れない。

ただ、『ロケットマン』はとある特定の瞬間を描く作品ではなく、人生を描く映画です。『ボヘミアン・ラプソディ』は、あの決定的な瞬間、史上最高のライブ・パフォーマンスを描くための作品でした。皆さんもそう思っていることでしょう。

『ロケットマン』はその点で違います。まず映画の前半で、エルトンとは何者なのか、1人の人間としての彼が何を欲していたのかが理解できるようになっています。そして映画の後半で物語が内省的になった時、その2つは繋がっていたのだと気付く。彼がどんな子供だったのか、何が彼の人格形成に影響を及ぼしたのかを見ていますから、ラストにおける彼にどのように繋がっていくのかが分かる。だからこそ、なぜ彼が最後に自分自身を許し、自己愛を認められたかが理解できるというわけです。

ロケットマン
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.


『ロケットマン』のラストでは、リハビリ施設のグループ・セラピーの中にあったエルトンが、自らの精神の中で因縁あった家族や、恋人、親友、そして幼少期の自分自身を呼び出していた。自分自身を乗り越え、認め、許すという自己愛を手に入れて、エルトンは人生の回復へ向かって歩んでいく。エルトンの、偉大でありながらも脆い精神の旅路は、こうして映画的な区切りを迎えるのだ。

「三人称視点からの俯瞰的な映画」だった『ボヘミアン・ラプソディ』とは「全く違う作品にしようと決めていた」と語る監督は、「『ロケットマン』はエルトン・ジョン個人の、非常にパーソナルな経験を描くものです。エルトンを俯瞰するのでなく、彼の精神の中に入っていく」と説明する。

「絶頂期って、実は思っている以上に薄っぺらいんですよね。表層的で、別に何かを得られるわけじゃないんですよ。良いレストランに行けるかもしれないけど、それ以上は特に何もありません。」監督は、「『ロケットマン』が上手くいったのは、私が思うに、エルトンの絶頂もどん底も、同じように描いたからだと思います」と分析した。絶頂とどん底、その両方を包み隠さずに描いたからこそ、『ロケットマン』エルトンの精神の旅路は、より色濃く、リアルに感じ取ることができるのだ。

映画の幕開けには悪魔の姿で登場したエルトンは、濁り無き白い姿でグループ・セラピーを後にする。そうして最後に、エルトンは「アイム・スティル・スタンディング(I’m Still Standing)」で己の復活を高らかに歌う。「僕はこうして立っている 今までよりも力強く」。

映画『ロケットマン』は大ヒット公開中。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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