【あなたの知らないスターウォーズ】『ローグ・ワン』の前に知っておきたい、“持ってる男”「ローグ・ツー」の冒険

Echo Base, this is Rogue Two. I’ve found them. Repeat, I’ve found them.” -Zev Senesca

http://starwarsttm.ucoz.com/news/rip_christopher_malcolm_and_malcolm_tierney/2014-02-23-13

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クリストファー・マルコムは、1946年、スコットランドのアバディーンで生まれました。幼少時に両親とともにカナダのブリティッシュ・コロンビアへ移住。齢17のときに、演劇に魅せられ地元のアマチュア劇団”The Powerhouse Theatre”で俳優としての第一歩を踏み出します。やがて本格的な演技の道へ進むことを決意したマルコムは、19歳のときにイングランドのエセックスに住む祖母を頼り、カナダから片道の航空券を握りしめ渡英します。なんのコネも持っていなかった彼は、祖母の家に滞在しながら、職探しとオーディションを受ける毎日を送ったそうです。しかしほどなくして、奇跡的にイギリスを代表する劇団”Royal Shakespeare Company”と劇団員として二年間の契約を結び、週給16ポンドで、プロの舞台俳優としてのキャリアをスタートします。RSC在籍は短い間でしたが、イアン・ホルム(『ホビット』ビルボ・バギンス役)やダイアナ・リグ(『女王陛下の007』テレサ役)、ヘレン・ミレン(『クイーン』エリザベス二世役)ら、イギリスを代表するきら星のような俳優たちと同じ稽古場に立つ夢のような日々だったと、後にマルコム本人が語っています。

何のツテもない状態から、イギリスでナンバーワンの劇団に所属するまでかかった期間はわずか半年あまり、この件だけでもかなりラッキーな青年ですが、彼の幸運はこのことだけに留まりません。

1973年、クリストファー・マルコムの演劇人生を決定づけるような作品との出会いが待っていました。映画史上最長のロングラン記録をもつ、カルトムービーの元祖『ロッキー・ホラー・ショー』(1975年)のオリジナルがミュージカルなのは有名な話ですが、そのミュージカル版”The Rocky Horror Show”の初演オリジナルで、ブラッド・メジャーズというメインキャラにキャスティングされたのです。後の劇場映画版のほうが知名度は高いですが、ミュージカル版の大成功なくして映画化はあり得ませんでした。わずか60席あまり、前衛的な実験作ばかり上演していたロイヤル・コート劇場の「アップステア・シアター」から、500席もの劇場「キングス・ロード・シアター」へのステップアップまでに要した期間はわずか4か月。40年近く経過した現在もなお愛され続けるコンテンツの誕生の現場に、クリストファー・マルコムは立ち会っていたわけです。

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1970年代を通してクリストファー・マルコムは、舞台俳優としてだけでなく、劇場映画の出演を求めて様々なオーディションを受け、その中のいくつかから実際にオファーを受けて出演作を重ねました(あの『ハイランダー』にも出ています)。

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そうして得た役のひとつがスター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』のゼヴ・セネスカ役、コールサイン「ローグ・ツー」でした。SF映画が好きというわけではなく、前作『スター・ウォーズ』に関しても特別な思い入れがあったわけではなかった状態、数秒の出演時間の「チョイ役」程度の認識で撮影に臨んだマルコム、しかし撮影そのものは悪い意味で「印象的」でした。当初1日と伝えられていた撮影日数は、合成撮影用のブルースクリーンの設置がうまくいかず12日間に延長されました。また彼が乗り込むスノースピーダーのコックピットのセットは非常に狭く、窮屈な衣装を身に着けてシートに固定され、汗だくになりながら、爆音と共にセットごとシェイクされる撮影は、肉体的に非常に過酷で、マルコムは撮影後、軽いシェルショックに陥ってしまったそうです。

http://i.imgur.com/Ohu52rR.png

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ただ、悪いことばかりでは当然なく、シリーズに登場しているマーク・ハミルをはじめとした同年代の俳優たちとの待機時間を使った交流はとても楽しい思い出となったそうです。もし予定通り撮影が1日で終わっていたら、マルコムの役どころであるゼヴの撮影は全てブルースクリーンバックのセットの中で他のキャストと絡みなく行われるので、そんな時間は持てなかったはずです。中でも同じパイロットという役柄の、ウェッジ・アンティリーズ役デニス・ローソンとは親友と呼べる間柄になりました。『帝国の逆襲』撮影の翌年、1980年以降、クリストファー・マルコムは自らが演じるだけではなく、ミュージカルのプロデューサーとしての道も歩み始めるのですが、その初プロデュース作『パル・ジョイ』の主演にデニス・ローソンを抜擢したりしています。

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「スター・ウォーズ」シリーズの世界的成功から、セリフが数行しかないような端役の一人ひとりにもスポットライトが当てられるようになりました。ただ、それを演じた俳優にとっての作品への思い入れと、熱烈なファンの愛情との間に、しばしば温度差が生じ、ハリソン・フォードがハン・ソロという役柄の死を願ったり、先ほど話題に出たウェッジ役のデニス・ローソンが、俳優としてたいして仕事をしていないウェッジ役について、いつまでも根掘り葉掘り聞かれることに心底ウンザリしてしまい、スター・ウォーズとの絶縁を口にしてしまったりしています。一人の俳優としては、ろくなセリフもないような役をいつまでも取りざたされるのは、確かに愉快なことではないのかもしれません。しかしクリストファー・マルコムは、ゼヴ・セネスカ役について、後年こんな風に語っています。

「私は偉大なコンテンツの一部となれたことを、とても嬉しく思っています。もし、ゼヴが、ルークとハン・ソロを発見していなかったら? シリーズはそこで終わってしまったわけですから、私の役はチョイ役ですがとても重要だったわけです。そんな風に考えるのが楽しいですね。」

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前述したとおり、1980年代後半から、クリストファー・マルコムは映画俳優としての活動を徐々に手仕舞いして、舞台のプロデュースへとシフトしていきます。1990年にはミュージカル版の”The Rocky Horror Show”をリブートさせて大成功、このショーは最終的にアメリカへ渡ってトニー賞にノミネートされるほどになります。他にも『パジャマゲーム』や『フットルース・ザ・ミュージカル』などのプロデュースを手掛けています。表舞台からは半ば退いてしまったので(テレビドラマには出ていました)、異国の地に暮らす我々にその仕事は見えづらいものでしたが、舞台人として確かな歩みを重ねていたわけです。しかし、2014年、クリストファー・マルコムは、ガンにより病死してしまいます。享年67歳、キャリアにとっても、家庭人としてもいささか早い死でした。

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若干19歳で、カナダから単身海を渡り、身一つでエンターテインメントの世界へ飛び込んだ青年は、代表作を残すことが難しい業界において、幸運にも『ロッキー・ホラー・ショー』と「スター・ウォーズ」という、ポップカルチャーを代表する2つのコンテンツに確かな足跡を残しました。自らが19歳のときのことを鑑みると、彼の決断と足跡は“大冒険”といっていい輝きを放っていると思います。ローグ・ワン』をご覧になる前に、「スター・ウォーズ」シリーズで名もなく散っていったローグ中隊のこと、そして彼らを演じた若者たちに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

【あなたの知らないスターウォーズ】ストーム・トルーパー生みの母、悲運の造形師リズ・ムーア物語

About the author

1977年生まれ。週刊少年ジャンプ脳のクリーチャー愛好家。玩具コレクター。エンドレスダイエッター。「意識低い系」の文章を信条としています。

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