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スコセッシ、故ロブ・ライナー監督を追悼 ─ 私生活で盟友、「深い悲しみでいっぱい、どうしようもないのです」

マーティン・スコセッシ ロブ・ライナー
Harald Krichel https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Martin_Scorsese-68747.jpg | Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/54694583132/ | Remixed by THE RIVER

映画監督マーティン・スコセッシが、盟友で故人のロブ・ライナーを追悼するエッセイを米New York Timesにて公開した。

『スタンド・バイ・ミー』(1986)や『ミザリー』(1990)『スパイナル・タップ』(1984)『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2017)などの監督として知られるライナーは、2025年12月14日、妻のミシェルとともに自宅で遺体で発見された。息子のニックが2人を殺害した容疑で逮捕、起訴されている。

「ロブ・ライナーは私の友人でした。ミシェルもそうでした。これからは過去形で表現せざるをえず、深い悲しみでいっぱいになります。けれども、どうしようもないのです」。エッセイの冒頭にこう綴ったスコセッシは、1970年代にライナーと出会い、すぐさま友人関係になったという。

「ロブと過ごすのがすぐに好きになりました。お互いに自然な親近感をおぼえたのです。彼はとても愉快で、時に辛辣なユーモアを交えることもありましたが、決して場を支配するタイプの人ではありません。奔放かつ自由で、その瞬間をとことん楽しむ、素晴らしい笑い声の持ち主でした。リンカーン・センターで彼を称える式典があった時、マイケル・マッキーンが厳粛なスピーチの素晴らしいパロディを披露したとき、ロブはオチの前に、会場に響き渡るほどの大笑いをしたのです。」

スコセッシは、ライナーの監督作品で最も好きな映画として『ミザリー』を挙げつつ、『スパイナル・タップ』を「別格、完璧」と絶賛している。「あの映画の素晴らしさは、監督・俳優としてのロブ自身によるところが大きい」と。

ライナーは、スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)にて、レオナルド・ディカプリオ演じる主人公ジョーダン・ベルフォートの父マックス役を演じた。「最高の即興演技ができるコメディの達人であり、レオや共演者たちと見事な仕事をしてくれました。役柄の人間的な苦しみを理解していた」と絶賛している。

「彼(マックス)は息子を愛し、息子の成功に満足しながら、いずれ破滅する運命を知っていたのです。ジョン・ファヴロー(マニー・リスキン役)が、レオ(ジョーダン役)に、SEC(証券取引委員会)に起訴される前に会社を辞めれば傷は少ないと説明するのを見守る場面はすばらしかった。レオがためらいながらも辞めないことに気づいた表情は、実に雄弁だ。

愛情深い父親が、息子に戸惑っている。繊細で率直な演技に感動し、編集でも心を打たれ、完成した映画を観て再び感動しました。このシーンや、ほかのシーンにおけるロブの演技の優しさを思うだけで、胸が張り裂ける思いです。」

スコセッシは「ロブとミシェルに起きたことは忌まわしい、現実の深淵です。時の流れ以外に、その事実を受け入れる方法はありません」と書いた。「ふたりの愛する人や友人たちと同じように──本当にたくさんの友人がいました──ふたりが元気に暮らしている姿を想像することを許されなければなりません」。

エッセイはこう締めくくられている。「そしていつの日か、ディナーやパーティーでロブの隣に座り、彼の笑い声を聞き、至福の表情を見て、彼の話に笑い、自然なユーモアのタイミングを楽しみ、そして、彼が友人であることの喜びを再び感じようと思うのです」

Source: The New York Times

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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