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『七人の侍』4Kデジタル修復により底上げされるエンタメ性を、今こそ体験すべし

今回で7回目の開催となる「午前十時の映画祭」。
厳選された歴史に残る傑作娯楽映画、全29作品を、約1年間、全国55ヶ所の劇場、シネマコンプレックスでDCP上映している。

現在この「午前十時の映画祭 7」にて、
不朽の名作にして怪作、『七人の侍』が4Kデジタルリマスター版として蘇っている。

いまさらながら『七人の侍』とは

http://asa10.eiga.com/2016/cinema/611.html
http://asa10.eiga.com/2016/cinema/611.html

戦国時代のとある農村が舞台。
麦の収穫後に野武士の集団の襲来があることを知った農民たちは、村を守るため、侍を雇うことを決意する。
そこで集まった個性溢れる面々が、初老の浪人島田勘兵衛を中心とした、岡本勝四郎、片山五郎兵衛、七郎次、林田平八、久蔵、そして菊千代の七人である。
農民たちは彼らに食物と寝床を与え、共に戦うため立ち上がる…。
1954年4月26日初公開。

「マンダロリアン シーズン3」「アソーカ」解説

巨匠・黒澤明監督が、約2億円の製作費と約1年の歳月をかけて撮影した、言わずもがな、傑作である。
徹底した時代考証。緻密な脚本とキャラクター造形。複数カメラの同時撮影と豪快なモンタージュから生まれるダイナミズム。パンフォーカスによる画面の深さ。
そして何より、志村喬、三船敏郎を筆頭に、豪華俳優陣の共演にして狂演。
ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞し、世界中のシネアストに影響を与えた。
また作曲家・早坂文雄氏の手がけたサントラも名盤となっている。

デジタル修復作業によりどう変わったか

http://eiga.com/news/20160219/5/
http://eiga.com/news/20160219/5/

これは三船敏郎扮する菊千代を捉えた一コマであるが、お分かりだろうか。
下の方が修復後のものである。
劣化したプリントというものは傷等はもちろんのこと、全体的に白味を帯びていくのだが、修復後のものは白と黒のコントラストが際立ち、非常にシャープである。

http://eiga.com/news/20160219/5/2/
http://eiga.com/news/20160219/5/2/

この際立つコントラストが、床の上に散らばる米の尊さ、男女の出会う花畑、踊るように揺れる麦の穂、木村功演じる勝四郎のキラリとした瞳と白い歯、それらに輝きを与え、
跳ねる泥、舞い上がる砂埃、叩きつける雨、ディテールに鮮明さを与えダイナミズムを増強させるのだ。

音響面に関してもまた然りである。
オープニングクレジットとともに響く重低音、人物たちの声、怒号、火の燃え上がる音、水面がはじける音、すべてが繊細で鮮明でダイナミックなのである。
「ひづめの音が良民の恐怖の的だった」と言っているように、私たち観客がたとえ目を閉じていようとも、その躍動が、恐怖が、迫り来ると感じてしまうほど印象的で、三船敏郎演じる菊千代の「野郎、来やがった来やがった!」の叫びには思わず後に続きそうになる。

デジタル修復が本作のクオリティを向上、再発見させたのは言うまでもないが、同時に失ったものもあるように思ってしまう。
コントラストの曖昧さ、不鮮明さが、本作の持つおどろおどろしさや、合戦という血生臭い光景に、ある種のリアリティを与えていたように思えてならない。時代考証からくるリアリズムには、やはり血生臭さを感じずにはおれないのだ。

これは好みによるかもしれないが、プリントや素材の状態が、その時代を体験させてくれる錯覚もあるように思う。

とはいえ、今だから体験できる2016年版『七人の侍』。ぜひ劇場でこの興奮を味わい、確かめて欲しい。

『七人の侍』上映館、スケジュールは下記をチェック。

午前十時の映画祭 公式サイト

Writer

Yushun Orita

『映画と。』『リアルサウンド映画部』などに寄稿。好きな監督はキェシロフスキと、増村保造。

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