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マーベル『シャン・チー』中国での上映決まらずも「侮辱するようには見えなかった」と中国人鑑賞者の声

シャン・チー/テン・リングスの伝説
© 2021 MARVEL

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『シャン・チー/テン・リングスの伝説』は、中国の地とヒーローを題材にした作品にも関わらず、中国で上映される望みが薄くなっているという。米Varietyが報告している。

『シャン・チー』は、MCUにとって初めてアジア系のヒーローを主題とする物語で、ディズニー/マーベル・スタジオには一大市場である中国でのヒットを狙いたい思惑もある。しかし、2021年9月3日に日米公開となった本作は、今になっても中国での上映予定がない。

政府の検閲と承認がなければ外国映画が上映されない中国では、一大フランチャイズであるマーベル・スタジオ作品とて厳しい目に晒される。『シャン・チー』の上映が見送られ続けている理由は明言されていないが、同作の中国描写がステレオタイプに基づいているとみなされ、批判を受けていたことは事実。さらに、中国系カナダ人の主演俳優シム・リウが2017年にインタビューで、両親から共産党支配下の状況を聞かされていたことに触れ、当時の中国を「人々が餓死していた」「第三世界」と発言したことが中国のSNSで再浮上し、これが上映見送りの決定打になったとの見方もある。

中国において国辱発言がいかにタブーとされているかは、アカデミー賞作品賞受賞という歴史的快挙を成し遂げた『ノマドランド』(2020)クロエ・ジャオ監督でさえ、過去に「中国は嘘があふれていた」と発言したことが明るみになり、受賞が黙殺され、同作の上映も見送りになった事例を見れば明らかだ。

また、米GQにて2021年9月11日付で公開された、リウお気に入りのお菓子を紹介するという一見無害な動画企画も、国粋主義者の反感を買うことになってしまっていた。ポッキーやかっぱえびせんと共に、リウは香港ビタソイ社のレモン・ティーを紹介しているのだが、実は7月、中国本土の消費者が同社を「反中国」とみなし、不買運動が展開されていたのである。「リウがお気に入りのアジアのお菓子を紹介するというGQの明るいビデオも、彼の攻撃的政治姿勢の証拠とみなされてしまう」と、米Varietyは記している。「彼は知らなかったのだろう」。

主に作品外の事情によって中国では日の目を見ない『シャン・チー』だが、Varietyが紹介しているのは、国外で本作を鑑賞した中国人観客の率直な声だ。「ここ数年で観た西洋作品の中でも、最も中国文化を尊重した作品」と評価する人もいるという。

ほか、「中国を侮辱するようには見えなかった。むしろ中国に口付けしているようだ」とする声や、「『ムーラン』よりも中国の要素の描き方がよっぽど優れていた。確かにアメリカ生まれの中国人や香港人俳優の中国語のアクセントはすこし聞き取りづらかったけれど、それでも敬意が払われていると感じられた」と、中国語での会話シーンが取り入れられていた点を評する声も伝えられている。

むろん中国にもマーベル映画を純粋に楽しみにしているファンは多く、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)では中国だけで全世界興行収入の26%を稼いだほど。このままでは『シャン・チー』は中国に届けられないばかりか、批判を受けたクロエ・ジャオ監督による『エターナルズ』の上映も見送られる可能性がある。いくら製作陣が中国に敬意を払おうとも、それを中国人の観客が讃えようとも、すべては中国政府の一存にかかっているのだ。

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Source:Variety,GQ

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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