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【レビュー】『シャザム!〜神々の怒り〜』は前作からの正当進化 ─ ファミリー要素強化、ヒーローもののワクワク感全開

シャザム!~神々の怒り~
(c) 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

見た目は大人のスーパーヒーローだが中身は子どもというギャップを、DC映画としては異色とも言えるコメディタッチで描いた『シャザム!』(2019)の続編『シャザム!~神々の怒り~』は、前作からの正当進化版といった快作だ。1作目で多くのファンを楽しませた要素を、きちんと強化して展開している。

とりわけ嬉しいのは、ファミリー描写の拡大だ。前作の終盤では、主人公のビリー・バットソンと共に暮らす“ファミリー”の子どもたちも揃ってヒーローに変身。その続きを描く続編では、序盤からファミリー全員でヒーローチームとして活動する様子が描かれる。色とりどりのコスチュームで人々の危機に訪れる姿は、さながらスーパー戦隊モノのよう。大人姿での登場時間は格段に増えつつも、「中身は子ども」という面白さは落としていない。子役たちの成長ぶりも目覚ましいし、鉄板要素である学園ドラマパートも健在だ。

シャザム!~神々の怒り~
(c) 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

本作で主人公のビリーは18歳になろうとして、規程によって養子制度が切れ、間もなく愛するファミリーの元を去らなくてはならないという立場にある。何もかもが永遠に続くかに思えた、しかし実際には全てが儚いものであると気付かない年頃の繊細な心を、スーパーヒーローの雄大なマントで包んでみせたような作品だ。

このシリーズには、「シャザム!」と叫ぶとヒーローに変身するという、童心くすぐるシステムがある。思えば、日本の特撮ヒーローのような掛け声を伴う変身スタイルは、アメコミのヒーローには意外と少ない。6人のファミリーが「シャザム!」と叫ぶや、ズバンと雷が落ち、一瞬でヒーローに変身して揃って飛び立つシーンなどは、観客に少年少女時代のワクワク感を取り戻させる。

シャザム!~神々の怒り~
(c) 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

シナリオは、前作でシャザムが“魔術師の杖”をうっかりヘシ折ってしまったことで神々の領域に異変が起きてしまい、ブチギレた神の三姉妹が地球に襲来するというものだ。本作には物事を深く考えさせない娯楽性があるが、この三姉妹ヴィランは本作の数少ない弱点となっている。ヘレン・ミレン、ルーシー・リューという大ベテランを用意したものの、これらのキャラクターは魅力に乏しく、実質的な見せ場はCGIのドラゴンに奪われた。その背に乗って飛ぶルーシー・リューは、ほとんど威を借る狐のよう。「ヴィラン描写が弱い」というスーパーヒーロー映画の典型に陥っている。

シャザム!~神々の怒り~
(c) 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

続投した監督のデヴィッド・F・サンドバーグは『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)などのホラー映画出身として知られ、前作では得意の恐怖演出をスパイスに加えた。本作ではやや控えめになった印象だが、登場するクリーチャーのデザインに個性を忍ばせている。

DCユニバースは間もなくリブートされる予定だが、本作はいわばリニューアル閉店前大セールのような、吹っ切れた楽しさがある。『シャザム!』の続編として期待される要素は大方取り揃えており、かつファンが驚くお楽しみもある。デヴィッド・F・サンドバーグ監督は今後のDCユニバースでもシャザムが再登場できる可能性はあると話していたが、果たしてどこまでがリップサービスか。ともかく、旧シリーズを名残惜しく思わせるほどの爽快作品に仕上がっていることは間違いない。

シャザム!~神々の怒り~
(c) 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

なお筆者は、本作で監督を努めたデヴィッド・F・サンドバーグ監督に単独インタビューも行っている。必見の特大ネタも聞き出しているので、掲載をお楽しみに。

『シャザム!〜神々の怒り〜』は2023年3月17日公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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