【映画に登場するマニアックな格闘技3】シラット ー 今だからコレも考えたい『カンジクラブ問題』

今回はインドネシアの国民的格闘術『シラット』のお話ですが、その前に、どうしても議題にしたいテーマがございます。それは、『スターウォーズ:エピソード7 フォースの覚醒』における『カンジクラブ問題』です。改めて言っておきますが、筆者はJJエイブラムス監督のエピソード7の熱烈支持派です。
以前に述べた『キャプテンファズマ問題』といい、支持派のくせに細かいことをアレやコレやと煩いことを言うと不快に思われる方もおられるかと思いますが、あくまでファンから見た小ネタに過ぎないし、問題とか言いながら大して問題だと思ってないと、以上の二点の筆者の認識を踏まえて生暖かい目で読んでいただけたらな、と思っております。

カンジクラブ問題

さて、『カンジクラブ問題』ですが、エピソード7未見の方、またはライトな観客の皆様に解説すると、物語序盤、主役のレイとフィンが搭乗する宇宙船ミレニアム・ファルコンが何者かに拿捕されます。すわ追手かと思いきや、ミレニアム・ファルコン号の以前の持ち主、ハン・ソロと相棒のチューバッカの仕業でした。
ファルコンに乗り込んできたハン・ソロとチューバッカ。なんやかんやあって四人がすったもんだしてると、ファルコン号を拿捕した輸送船に、さらに別の何者かの船がドッキングしてきます。その船はハン・ソロと一悶着ある勢力ガヴィアン・デス・ギャングの船のようでしたので、ハン・ソロはレイとフィンに身を隠すよう促し、ハン・ソロとチューバッカは前述のデス・ギャングの皆さんと対峙します。
話を聞くとどうやらハン・ソロは、デス・ギャングの皆さんから借りたお金を返していないようです。デス・ギャングのチームリーダー、バラ・ティクさんの話によるとハン・ソロは、カンジクラブというまた別のギャングからもお金を借りていてそれも返していない様子。「そんな話知らねえよ!」となんとかその場を言い逃れようとするハン・ソロですが、そこに後ろから『やっちまったな、ハン・ソロ』と登場するのがカンジクラブ御一行様。どうやらバラ・ティクさんは前述のカンジクラブに話を通していて、呉越同舟、仲良くハン・ソロにケジメつけさせにきたのでした。まさに前門の虎、後門の狼、ハン・ソロ万事休す。

そのとき隠れているレイがうっかりミスで、ハン・ソロが輸送している途中だった超危険生物ラスターの檻を開けてしまいます。襲い来る三頭のラスター、デス・ギャング&カンジクラブは恐慌状態、数名はラスターの胃袋の中へ、そしてハン・ソロとチューバッカ、レイとフィンの四人は、この混乱に乗じてファルコン号で逃走に成功します。

さて、大変に長くなりましたが、『カンジクラブ問題』とは、この出てきたと思ったらあっという間に猛獣に蹴散らされて、その後どうなったか全く言及されなかったカンジクラブ。ちょい役もちょい役、見せ場という見せ場まるでなしの集団の構成員がですね、格闘映画ファン知る人ぞ知る、インドネシア発の傑作アクション『ザ・レイド』『ザ・レイドGOKUDO』の主演俳優たち、イコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアン、チェチェップ・アリフ・ラフマンの三人だった、という点でございます。

確かにエピソード7には、多くの有名俳優たちがカメオ出演しています。しかし、一人ならともかく三人、しかも『シラット』という格闘技の達人三人を、わざわざインドネシアから呼んできて、ねえ?
わかりやすく例えると、若き日のジャッキー・チェン、ユンピョウ、サモハン・キンポーが三人並んで出てきたのに、特に何もせず、功夫の一つも見せず出番が終わっちゃった感じとでも言いましょうか。

確かに彼らが使う格闘術と、スターウォーズの世界観の整合性は、何かしらの調整を必要とするでしょうが、わがままなファンとしては「なんのために出したの?」の疑問符が、鑑賞を終わってもぬぐえなかったのも事実でございます。この三人が出演した経緯などを調べても、JJエイブラムス監督が、『ザ・レイド』を鑑賞して、いたく感銘を受けてという流れらしいので、だったら猶更、こう、チューバッカと野生VS軍隊格闘みたいな戦いを見せたり、イコ・ウワイスがレイと対戦して、レイ大ピンチ、そこでレイがフォースの片鱗を見せたりみたいな場面があったりしても良かったのかなあ、なんて思います。何より、この三人目当てで見に行ったというインドネシア・ジャカルタの観客はどう感じたのでしょうか。以上が『カンジクラブ問題』の全容です。

シラットとは

どうでもよい問題を、長々と書き連ねてしまいましたが、シラットはインドネシアをはじめとするマレーシア、ブルネイ、シンガポールなど東南アジアに広く伝わる格闘技です。シラットという言葉はそれこそ『中国拳法』のようなもので、国や地域によって多岐に渡る流派があり、その数は500以上ともいわれています。
中には中国拳法の太極拳のようなゆったりした動作の流派もあるそうですが、前述した『ザ・レイド』『ザ・レイドGOKUDO』にて主人公や敵が使っていた格闘技は、軍隊式シラットに分類されます。
元は、民間に広く伝わる護身術であったシラットを、インドネシア独立戦争の際に、民兵の戦闘力を短時間で上げるため、体系化されたのが軍隊式シラットです。後にこの軍隊式シラットは様々な国の軍隊のCQC(近接戦闘術)に取り入れられたことからも分かる通り、非常に実践的で、習得しやすく、特に武器を持った相手との近接戦闘に秀でた格闘術です。
フォーム(型)を持って旨とする、いわゆる拳法や護身術とは趣きが異なり、とにかく最小限の動きで、相手を戦闘不能もしくは武装解除することを目的としてるところが特徴です。

何はともあれ、『ザ・レイド』をご覧頂ければ、何しろ上映時間の殆どをシラットを使って戦っているような映画なので、お腹いっぱいにシラットを知ったつもりになることができます。エピソード7ではついぞ見れなかった、カンジクラブの勇姿を是非ご照覧ください。

About the author

1977年生まれ。週刊少年ジャンプ脳のクリーチャー愛好家。玩具コレクター。エンドレスダイエッター。「意識低い系」の文章を信条としています。

THE RIVER 公式iPhoneアプリ


こちらの記事もオススメ

JOIN THE DISCUSSION

※承認されたコメントのみ掲載されます。